孤高の桜
4月中頃には全て散ってしまった桜。 朝、生徒たちが昇降口にたくさんたまった薄桃色の花びらを箒で集めていた。でも、遅れて咲く1本の桜の木があることを私は去年の春初めて知ったから、今年もその桜に会えることを楽しみにしていた。去年、働き始めたばかりの私には全く余裕がなく 呼吸も浅くなっていたし、 いつも緊張していた。たくさんの先生の顔と名前を覚えて 日常業務をひとまず出来るようにして 全員同じ顔に見える理事会の方々にひたすら頭を下げていた。 気づけば学校の坂道の両隣に連なって咲く桜も すべて散って葉桜になっていた。桜を心で見ることも出来ていなかった。そんなある日、通勤途中にある大きな桜の巨木が 見事…
2022/04/29 19:50