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  • 『室町少年草子 獅子と暗躍の皇子』阿部暁子 室町ファン感涙、コバルト文庫で南北朝時代!

    『カフネ』での本屋大賞受賞おめでとうございます(って、読んだけど、まだ感想書いてない。。。)。とうとう、阿部暁子が世の中にバレてしまったかと思うと、ファン的には嬉しいですね。ということで、過去記事ですが、阿部暁子のコバルト時代の作品を再プッシュしておきます。 (さいきん、更新スランプになってますが、いずれ復活すると思うので気長にお待ちください)。 阿部暁子の第二作 2009年刊行。作者の阿部暁子(あべあきこ)は1985年生まれ。 かつて集英社のコバルト文庫で主催していた、今は亡きロマン大賞の出身者だ。 2008年に刊行されたデビュー作の『屋上ボーイズ』は公募賞であるロマン大賞の応募作なので、受…

  • 『秋期限定栗きんとん事件』米澤穂信 「小市民」シリーズ三作目。欠落と補完、需要と供給、唯一無二の理解者

    祝『秋期限定栗きんとん事件』アニメ化!と言うことで、こちらの記事をあげておきます(最近更新滞り気味でスミマセン)。 本ブログは基本ネタバレありで書いている、今回は『秋期限定栗きんとん事件』だけでなく、『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』についても内容について触れているので、その点ご注意いただきたい。 米澤穂信の「小市民」シリーズ第三弾 2009年刊行作品。『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』に続く「小市民」シリーズの三作目にあたる作品である。今回は、文庫書下ろし。 過去の二作は連作短編形式であったが、今回はシリーズ初の長編作品。しかも上下巻の大ボ…

  • 『ワインズバーグ、オハイオ』シャーウッド・アンダーソン いびつな者たちの群像劇

    シャーウッド・アンダーソンの代表作 『ワインズバーグ、オハイオ』は、1919年にアメリカ人作家シャーウッド・アンダーソン(Sherwood Anderson)によって書かれた連作短編集である。原題は『Winesburg, Ohio』。 日本国内では戦前より邦訳が出ており、まずは1933年に山屋三郎訳 の『ワインズバーグ物語』が登場。これはのちに角川文庫版となる。 ワインズバーグ・オハイオ (1963年) (角川文庫) 作者:S.アンダソン Amazon 1959年には橋本福夫訳による新潮文庫版が刊行。 ワインズバーグ・オハイオ (新潮文庫) 作者:アンダスン 新潮社 Amazon 1979年に…

  • 『死にたがりの君に贈る物語』綾崎隼 小説家と物語を愛するもののお話

    綾崎隼の40冊目! 2021年刊行作品。綾崎隼(あやさきしゅん)は2010年のデビュー以来、数々の作品を上梓してきたが、40冊目の著作となるのが本書『死にたがりの君に贈る物語』である。表紙イラストはorieが担当している。 綾崎隼の作品を読むのは二作目。先日読んだ『盤上に君はもういない』が良作だったので、本作も読んでみることにした。 本作は小説紹介クリエイターけんごによる「ベストオブけんご大賞」の第1回受賞作品となっている。 死にたがりの君に贈る物語 作者:綾崎 隼 ポプラ社 Amazon ポプラ文庫版は2024年に刊行されている。 ウェブ上に「もう一つのあとがき」が掲載されていたのでリンクを…

  • 『クラインの壺』岡嶋二人 30年以上前に描かれたバーチャルリアリティモノの傑作

    岡嶋二人、最後の作品 1989年刊行作品。最初の単行本は懐かしの新潮ミステリー倶楽部からの登場だった。 クラインの壷 (新潮ミステリー倶楽部) 作者:岡嶋 二人 新潮社 Amazon 新潮文庫版は1993年に登場。個人的にはこのカバーデザインがいちばんしっくり来る。 クラインの壺 (新潮文庫) 作者:二人, 岡嶋 新潮社 Amazon その後、2005年に講談社文庫版が刊行されている。現在読めるのはこちらの版かな。 岡嶋二人(おかじまふたり)は井上夢人(いのうえ ゆめひと)と田奈純一(徳山諄一)、二人の合作ペンネームである。本作は岡嶋二人名義で書かれた最後の作品だ。当時のこのミスで5位、文春の…

  • 『感応グラン=ギニョル』空木春宵 たぐいまれな奇想、傷みと呪縛からの解放をえがく

    空木春宵、初の作品集 2021年刊行作品。東京創元社のミステリ誌『ミステリーズ!』や、アンソロジーシリーズ「GENESiS」、Webメディアの「Webミステリーズ!」などに掲載されていた作品を単行本化したもの。早川書房の『SFが読みたい! 2022年版』の「ベストSF2021」では、国内部門、第三位にランクインしている。 筆者の空木春宵(うつぎしゅんしょう)は1984年生まれのエスエフ作家。「繭の見る夢」が第2回創元SF短編賞にて佳作入選となり作家デビューを果たしている。 感応グラン=ギニョル (創元日本SF叢書 18) 作者:空木 春宵 東京創元社 Amazon 創元SF文庫版は2024年に…

  • 『蒲生邸事件』宮部みゆき 普通の人間がまっとうに生きていくことで生まれる感動

    SFにしてミステリ、宮部みゆきの20年過ぎても色褪せない名作 1996年作品。『蒲生邸事件』は「がもうていじけん」と読む。「サンデー毎日」に連載されていたもの。第18回(1997年)の日本SF大賞受賞作品。単行本版は毎日新聞社から。 蒲生邸事件 作者:宮部 みゆき 出版社/メーカー: 毎日新聞社 発売日: 1996/09/01 メディア: 単行本 続いて1999年に光文社ノベルズ版が刊行。 蒲生邸事件 (カッパ・ノベルス) 作者:宮部 みゆき 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 1999/01 メディア: 新書 2000年に文春文庫版が出ている(わたしが読んだのはこちら)。 蒲生邸事件 (文…

  • 『満願』米澤穂信 人の世のままならなさ、願い、心の闇を描く短編集

    史上初!ミステリ系ランキング三冠達成作品 2014年刊行作品。新潮社の小説誌「小説新潮」「すばる」等に掲載されていた作品をまとめたミステリ短編集。タイトルの『満願』は「まんがん」と読む。 本作は第27回の山本周五郎賞を受賞している。また、早川書房の「ミステリが読みたい!」、文藝春秋の「週刊文春ミステリーベスト10」、宝島社の「このミステリーがすごい!」のすべてで国内部門1位を獲得。史上初の三冠を達成した。米澤穂信(よねざわほのぶ)の一般層への知名度を飛躍的に高めた一冊と言える。 満願 作者:米澤 穂信 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2017年に登場している。 音声朗読のオーディブル版は20…

  • 『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ 戦時の図書館で働いた女性たちの物語

    ジャネット・スケスリン・チャールズの大ヒット作 本日ご紹介する『あの図書館の彼女たち』は、2022年刊行作品。訳者は髙山祥子。オリジナルの米国版は2020年刊行で、原題は『The Paris Library』。 作者のジャネット・スケスリン・チャールズ(Janet Skeslien Charles)は1971年生まれのアメリカ人作家。デビュー作は2009年の『Moonlight in Odessa』(邦訳版なし)。アメリカ出身だが、パリのアメリカ図書館での勤務歴があり、本作にはその経験が活かされている。全米で大ヒットとなり、35か国での翻訳が決定している。 あの図書館の彼女たち 作者:ジャネッ…

  • 『探偵大戦』似鳥鶏 特殊能力を持つ探偵たちの競演

    似鳥鶏の最新作は異能探偵バトル 2021年刊行作品。2007年『理由あって冬に出る』でのデビュー以来、市立高校シリーズ、戦力外捜査官シリーズ他、多数の作品をリリースし続けている似鳥鶏(にたどりけい)の最新作である。 推理大戦 作者:似鳥鶏 講談社 Amazon 似鳥鶏の通算作品数は、現時点で30作を超えており、デビュー以来、年に二冊は新刊を上梓している計算になる。この刊行ペースはすごいな。 講談社文庫版は2023年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 能力バトル、異能系の作品が好きな方。特殊設定系のミステリが好き!という方。個性豊かな探偵たち…

  • 『なんて素敵にジャパネスク8<逆襲編>』氷室冴子 「帥の宮」編完結、明らかになる哀しい真実

    なんて素敵にジャパネスクシリーズの最終巻 1991年刊行作品。ナンバリング的には「8」となっているが、シリーズ的には十冊目。毎回書いてきたので最後まで書いちゃうけど、読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3→4→5→6→7→8の順がベスト。時系列的には、2巻を読んだら「アンコール」と「続アンコール」を読むのが正しい。 7巻の<逆襲編>とはセットで読むべき作品。7巻から連続性の高い内容となっていて、同時刊行だったためか、この8巻には冒頭に登場人物紹介やあらすじの類がない。ただし、カラー口絵は入っている。表示同様に、今回も峯村良子が担当している。 新装版は1999年に登場。イラストレータ…

  • 『ほねがらみ』芦花公園 カクヨム発で書籍化されたホラー小説

    芦花公園の第一作 2021年刊行作品。作者の芦花公園(ろかこうえん)は生年不明の覆面作家。『ほねがらみ』がデビュー作となる。 ほねがらみ 作者:芦花公園 幻冬舎 Amazon 幻冬舎文庫版は2022年に刊行されている。一年で文庫化って早くない? もともとは小説投稿サイト、カクヨムで本作は書かれていた(現在は第一章部分のみが試し読みとして公開されている)。 芦花公園の第二作としては『異端の祝祭』が角川ホラー文庫より上梓されている。2025年1月時点で著作は10作を数え、ホラーの書き手として順当に地歩を固めている様子。 異端の祝祭 (角川ホラー文庫) 作者:芦花公園 KADOKAWA Amazon…

  • 『廃遊園地の殺人』斜線堂有紀 廃園に追い込まれたテーマパークで再び起きる惨劇

    廃墟を舞台とした殺人事件 2021年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は2017年のメディアワークス文庫『キネマ探偵カレイドミステリー』がデビュー作。以後、コンスタントに作品を上梓してきたが、2020年の『楽園とは探偵の不在なり』が、この年のミステリ系ランキングで軒並み上位にランクイン。一躍、注目のミステリ作家となった。 廃遊園地の殺人 作者:斜線堂 有紀 実業之日本社 Amazon そのためなのか、2021年の斜線堂有紀は、本作に加えて、『ゴールデンタイムの消費期限』『神神化身 壱 春惜月の回想』『愛じゃないならこれは何』の計四作を発表。ご本人的には充実の一年だったのではないだ…

  • 『なんて素敵にジャパネスク7<逆襲編>』氷室冴子 瑠璃姫最大のピンチからの逆転劇

    新年あけましておめでとうございます(←遅い)。今年もよろしくお願いいたします。 恒例の年間ベストは、2024年に読んだ本の紹介がひととおり終わってからページを作成する予定なので、もうしばらくお待ちを。 瑠璃姫VS帥の宮、ついに佳境に 1991年刊行作品。ナンバリング的には「7」だけれども、シリーズ的には九冊目。もはや枕詞のようになっているが、読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3→4→5→6→7の順で読んでいただきたい。 この巻では、カラー口絵に加えてイラスト付きの登場人物紹介が4ページ入る。紹介されているのは瑠璃姫、高彬、帥の宮、煌姫、由良姫、守弥、融の7名。 表紙、口絵、登場人…

  • 『アイアムハウス』由野寿和 高級住宅地で起きた殺人事件と家族の絆

    今回も著者の由野寿和(ゆうやとしお)さまより、ご著書をご恵投いただきました。感想を書くのが遅くなってしまい申し訳ないです。 由野寿和の第二作が登場 2024年刊行作品。幻冬舎メディアコンサルティングから発売されている。作者の由野寿和は2022年の『再愛なる聖槍(さいあいなるせいそう)』がデビュー作。本作『アイアムハウス』は二年振りに上梓された第二作となる。 版元の幻冬舎メディアコンサルティングが配信しているWebメディア、ゴールドライフオンラインでは、全24回にもなるイラスト付きのダイジェスト版が公開されている。気になる方は、まずはこちらからチェックするのもアリだろう。各キャラクターのビジュア…

  • 『法廷占拠 爆弾2』呉勝浩 スズキタゴサクを裁く法廷が何者かに占拠されたら!?

    『爆弾』の続篇が登場 2024年刊行作品。呉勝浩(ごかつひろ)の14作目。 2023年版の「このミステリーがすごい」、「ミステリが読みたい」でいずれも1位を獲得した『爆弾』の続篇である。 ミステリ系ランキングの結果はこんな感じ。『爆弾』に比べるとランキング的にはやや後退したがそれでも堂々たる結果である。 週刊文春ミステリーベスト10:第5位 このミステリーがすごい!:第7位 ミステリが読みたい!:第14位 本格ミステリ・ベスト10:第23位 シリーズ一作目『爆弾』の感想はこちらから。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 前作でスズキタゴサクの魅力にハマってしま…

  • 『裏世界ピクニック8 共犯者の終り』宮澤伊織 空魚と鳥子の関係性に決定的な変化が

    「裏世界ピクニック」シリーズの八作目! 宮澤伊織(みやざわいおり)による「裏世界ピクニック」シリーズの第八弾である。2021年の12月に発売された第七巻からは少し刊行間隔が空いて、こちらは2023年の1月発売。 また、表紙及び本文中のイラストはshirakabaによるもの。 既刊の感想はこちらから。 『裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル』 『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』 『裏世界ピクニック3 ヤマノケハイ』 『裏世界ピクニック4 裏世界夜行』 『裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル』 『裏世界ピクニック6 Tは寺生まれのT』 『裏世界ピクニック7 月の葬送』 『裏世…

  • 『同志少女よ、敵を撃て!』逢坂冬馬 セラフィマの銃口はわたしたちをも狙っている

    本屋大賞!アガサ・クリスティー賞大賞&直木賞候補作、衝撃のデビュー作 2021年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれ。本作『同士少女よ、敵を撃て!』で、第11回のアガサ・クリスティー賞の大賞を受賞して作家デビューを果たしている。 同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 逢坂冬馬はデビュー作である『同士少女よ、敵を撃て!』がいきなり、直木賞の候補作品に選ばれており、各界に衝撃を与えた。 上記のハヤカワの記事では、12/17時点での発行部数が72,000部と、新人のデビュー作とは思えない凄まじい数値をたたき出している。しかしこの72,000部も間違い…

  • 『なんて素敵にジャパネスク6<後宮編>』氷室冴子 逆襲の瑠璃姫、後宮に潜入!

    瑠璃姫が後宮へ乗り込んだ! 1990年刊行作品。ナンバリング的には「6」だけれとも、シリーズ的には八冊目。何度も書いているけど、読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3→4→5→6の順で読んでいただきたい。 この巻では、カラー口絵に加えて「後宮編人物相関図」が冒頭に入った。人間関係が相当に込み入ってきているのでこれはありがたい。系図を使った人物紹介図になっていて、とてもわかりやすい。先代の帝(光徳帝)と帥の宮、藤宮は先々代(朱雀帝)の子ども。なので光徳帝の子である今上帝(鷹男)から見ると、帥の宮、藤宮は叔父、叔母ということになる。 表紙、口絵、そして本文中のイラストは今回も峯村良子が…

  • 『残月記』小田雅久仁 月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくる

    日本SF大賞受賞作 2021年刊行作品。双葉社の小説誌「小説推理」に2016年~2019年にかけて、散発的に掲載されていた三編の作品をまとめたもの。 作者の小田雅久仁(おだまさくに)は1974年生まれの小説家。2003年に『影舞(未刊)』が、第15回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、その後2009年に『増大派に告ぐ』で、第21回の日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞。作家としてのデビューを果たしている。 残月記 作者:小田雅久仁 双葉社 Amazon 十五年近い作家としてのキャリアがあるが、作品数は少ない。小田雅久仁の既刊は以下の通り。 増大派に告ぐ(2009年) 本にだって雄と…

  • 『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』南海遊 道連れの魔女と密室殺人の謎

    今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」に参戦! 館×密室×タイムループ 2024年刊行作品。作者の南海遊(みなみあそゔ)は1986年生まれの小説家。小説投稿サイトである「小説家になろう」出身。「小説家になろう」に投稿されていた、『傭兵と小説家』で星海社FICTIONS新人賞を受賞。2019年に書籍化され、こちらがデビュー作となっている。 表紙イラストは清原紘(きよはらひろ)によるもの。ヒロイン、リリィジュディス・エアの眼力が、なんとも印象的なイラストで、本作の成功要因のひとつにはこの表紙絵のインパクトもあったのではないかと思う。 本作は2024年のミステリランキングで高い評価を受…

  • 『異常(アノマリー)』エルヴェ・ル・テリエ 本当の意味で自分と向き合うということ

    フランスで110万部売れたベストセラー作品 2022年刊行作品。加藤かおり訳。オリジナルのフランス版は2020年に発売されていて原題は『L’Anomalie』。作者のエルヴェ・ル・テリエ(Hervé Le Tellier)は、1957年生まれのフランス人作家。ジャーナリスト、数学者、言語学者としての顔も持つ。 異常【アノマリー】 作者:エルヴェ ル テリエ 早川書房 Amazon 『異常(アノマリー)』はフランスの高名な文学賞ゴンクール賞の受賞作で、本国では110万部を売った大ベストセラー作品だ。 国内版の版元である早川書房の紹介記事はこちら。 WEB本の雑誌にレビューがあったのでこちらもリン…

  • 『負けヒロインが多すぎる!2』雨森たきび マケイン第二巻は焼塩檸檬編!

    『負けヒロインが多すぎる!』シリーズの二冊目 2021年11月刊行作品。雨森(あまもり)たきびによる『負けヒロインが多すぎる!』シリーズの第二作。第一巻の刊行が2021年の7月なので僅か四カ月での新作だ。わたし的にライトノベルを常時読まなくなって久しいが、そういえばこの業界はこれくらい刊行ペースが速いのであった。いやはや大変な業界だよね。 表紙絵、口絵、及び本文中のイラストは、マンガ家、イラストレータ、いみぎむるによるもの。 あらすじ 綾野光希は、同級生の朝雲千早とつき合い始めた。陸上部のエース焼塩檸檬は幼馴染の綾野光希への想いを断ち切れずにいる。そんなある日、温水和彦と八奈見杏菜は、焼塩と綾…

  • 『彼女は死んでも治らない』大澤めぐみ 個性的な文体が冴える「コージーミステリー」

    大澤めぐみ作品が光文社から登場 2019年刊行作品。2016年に『おにぎりスタッバー』で商業デビューして以降、『ひとくいマンイーター』『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』『君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主』と、角川スニーカー文庫から作品を上梓していた大澤めぐみの、初一般レーベル作品である。 光文社文庫での書下ろし作品。イラストは焦茶が担当している。 初一般レーベル作品!とは言いながらも、イラストが入ったキャラクター紹介ページがあり、章の扉にもイラストが入りと、見せ方としては多分にライトノベルを意識したものとなっている。本ブログのカテゴリ的には、悩んだけどライト文芸…

  • 『死んだ山田と教室』金子玲介 第65回メフィスト賞受賞作品

    金子玲介のデビュー作 2024年刊行。第65回のメフィスト賞を受賞した作品。作者の金子玲介(かねこれいすけ)は1993年生まれの作家。本作にて作家としてのデビューを果たしている。 初出は講談社のWeb小説誌『メフィスト』2023年WINTER特別号。単行本の表紙を飾っているのは俳優の菅生新樹(すごうあらき)。なんか似てると思ったら、菅田将暉(すだまさき)の実弟なんだね。 本の雑誌が選ぶ2024年度上半期ベスト10では、見事第一位に輝いている。 純文学からメフィスト賞へ 朝日新聞「好書好日」の紹介記事はこちら。 こちらの記事によれば、金子玲介はもともと純文学指向の作家であったが、各種文学賞での落…

  • 『星虫』岩本隆雄 第1回ファンタジーノベル大賞最終候補作 1990年代に書かれたジュブナイルエスエフの良作

    岩本隆雄のデビュー作 1990年刊行作品。かれこれ35年近く前の作品になってしまった。岩本隆雄(いわもとたかお)のデビュー作だ。元々は新潮社主催の第1回ファンタジーノベル大賞の最終候補作だった。残念ながら選には漏れたものの、新設された(二年で消えたが)新潮文庫のファンタジーノベルシリーズから刊行された作品である。表紙及び本文イラストは道原かつみによるもの。 ちなみに、この年のファンタジーノベル大賞は酒見賢一の『後宮小説』。これはさすがに相手が悪すぎ(強すぎ)たのだと思う。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 1990年代に書かれた作品を読んでみたい方。正統派の…

  • 『カント・アンジェリコ 』高野史緒 カストラートの歌声と、絶対王政時代のハッキングバトル

    高野史緒の第二作 1996年刊行作品。第6回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『ムジカ・マキーナ』に続く、高野史緒(たかのふみお)の第二作。 カント・アンジェリコ 作者:高野 史緒 講談社 Amazon 単行本版の刊行から二十年近く、長期にわたって入手困難な状態が続いていたが、講談社文庫版が2013年に登場している。 推測にすぎないが、2012年に高野史緒は『カラマーゾフの妹』で第58回の江戸川乱歩賞を受賞している。 カラマーゾフの妹 (講談社文庫) 作者:高野史緒 講談社 Amazon 多少なりともこの受賞が旧作の復刊に寄与したのでないかと思われる。もっと知られて良い高野史緒の代…

  • 『なんて素敵にジャパネスク5<陰謀編>』氷室冴子 瑠璃姫VS帥の宮、第一ラウンドの結果は?

    遂に帥の宮と直接対決 1990年刊行作品。ナンバリング的には「5」だけれとも、シリーズ的には七冊目。お約束の注意事項。読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3→4→5と進んでいただきたい。 この巻からカラー口絵付きに!これは当時のコバルト文庫としてもかなりの特別扱いだろう。「ジャパネスク」シリーズの絶大な人気をうかがわせる。続いて本編の前に「これまでのお話」が置かれている。 なお、表紙、口絵、そして本文中のイラストは峯村良子が描いている。今回の瑠璃さんは対決を前にしてか、キリっとした表情だ。 新装版は1999年に登場。イラストレータは後藤星(ごとうせい)に替わっている。 なんて素敵に…

  • 『コンビニなしでは生きられない』秋保水菓 第56回メフィスト賞受賞作品

    秋保水菓のデビュー作 2018年刊行作品。筆者の秋保水菓(あきうすいか)は1994年生まれのミステリ作家。本作『コンビニなしでは生きられない』で、第56回のメフィスト賞を受賞し、作家としてデビューしている。 講談社ノベルス版の表紙イラストはukiが担当。 講談社文庫版は2021年に刊行されている。表紙のビジュアルが変わってしまって残念。作品のタイプ的に、講談社タイガで出した方が良かったのではとも思ってしまう。 コンビニなしでは生きられない (講談社文庫) 作者:秋保 水菓 講談社 Amazon ちなみに、秋保水菓の第二作『謎を買うならコンビニで』は2021年刊行。『コンビニなしでは生きられない…

  • 『禁忌の子』山口未桜 現役の医師が書いた医療ミステリ×本格ミステリ

    山口未桜のデビュー作 2024年刊行作品。作者の山口未桜(やまぐちみお)は1987年生まれの現役医師。本作『禁忌の子(きんきのこ)』で第34回の鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューを果たしている。 医師で作家といえば、最近で有名なのは知念実希人(ちねんみきと)。夏川草介(なつかわそうすけ)あたり。もう少し遡ると海堂尊(かいどうたける)、久坂部羊(くさかべよう)、帚木蓬生(ははきぎほうせい)。先日芥川賞を取った朝比奈秋(あさひなあき)も医師だった。けっこう、それなりに居るな。 医師というだけでも凄いのに、小説まで書けてしまうのだから、その才能のマルチさに驚かされる。だいたいにして、お医者さんってメッ…

  • 『まだ終わらないで、文化祭』藤つかさ 自分らしさって本当に必要なの?

    藤つかさの第二作 2023年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは1992年生まれのミステリ作家。デビュー作である『その意図は見えなくて』に続く、第二作が本作『まだ終わらないで、文化祭』である。表紙絵は前作に引き続き、イラストレータの中野カヲルが担当している。 一作目『その意図は見えなくて』の感想はこちらから。 『まだ終わらないで、文化祭』は単独で読んでも楽しめる。だが、時系列的には、『その意図は見えなくて』の後に起こる出来事を描いたものとなっている。内容的にも前作の展開を踏まえたものとなっているので、刊行順に『まだ終わらないで、文化祭』から先に読むことを強く推奨する。 おススメ度、こんな方におス…

  • 『ハムレット狂詩曲(ラプソディー)』服部まゆみ 演劇の世界を舞台としたミステリ

    服部まゆみの六作目 服部まゆみは1948年生まれ。第7回の横溝正史賞を『時のアラベスク』で1987年に受賞。以来、著作数は少ないながらも常に水準以上の良作を送り出してきた作家。『この闇と光』が1998年の第120回直木賞の候補にもなり、各方面でも高評価を受け、一気に認知度が上がった。 残念ながら2007年に58歳の若さで亡くなられている。二十年間の作家生活で書かれた作品は十一作(最後の『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』は、死後の2019年に刊行)を数える。 『ハムレット狂詩曲(ラプソディー)』は1997年刊行作品。『時のアラベスク』『罪深き緑の夏』『時のかたち』『黒猫遁走曲』『一八八八 切り裂…

  • 『負けヒロインが多すぎる!』雨森たきび すべての恋愛の敗者たちに捧げる

    雨森たきびのデビュー作 2021年刊行作品。作者の雨森(あまもり)たきびは、2020年の第15回小学館ライトノベル大賞にて、『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』でガガガ賞を受賞。同作を『負けヒロインが多すぎる!』と改題して文庫されたのが本作である。むろん、この作品がデビュー作となる。 小学館ライトノベル大賞応募時で、既に作者は40代前半だったとのことなので、現在は40代半ばか。ライトノベル作家としてはかなり遅咲きの方か。それだけに、これ程までにブレイクしてしまうと嬉しいだろうね。 表紙絵、口絵、本文イラストは、マンガ家、イラストレータのいみぎむる…

  • 『ユージニア』恩田陸 複数の視点から組み上げられていく事件のかたち

    日本推理作家協会賞、受賞作品 2005年刊行作品。「KADOKAWAミステリ」2002年8月号~2003年5月号、及び「本の旅人」2003年7月号~2004年9月号にかけて連載されていた作品を加筆修正の上で単行本化したもの。掲載誌が途中で変わってしまったのは「KADOKAWAミステリ」が休刊してしまったことによるもの。書籍化に際して新章の追加と、一部の章の並び替えが行われている。 恩田作品の傾向として、凝った装幀が挙げられるが本作の単行本はその究極と言える。両面印刷の表紙、微妙に角度がずれた本文、複数フォントの使い分けと、デザイナーや担当者、そして印刷屋は死ぬ思いをしたのではなかろうか。怖ろし…

  • 『なんて素敵にジャパネスク4<不倫編>』氷室冴子 煌姫がついに本領を発揮してきた!

    瑠璃姫VS煌姫 1989年刊行作品。この年の1月に昭和が終わっており、本作からは平成時代の刊行作品となる。ナンバリング的には「4」となっているものの、シリーズ的には六冊目。毎回書いているような気がするけど、読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3→4と読んでいくのが正しいお作法。 前巻の3巻では「ジャパネスク・ファミリーご紹介」と称した、イラスト付きのキャラクター紹介が冒頭入ったのだが、あっさりそのコーナーはなくなり、今度は「これまでのお話」が入るようになった。なかなかフォーマットが整わない。 なお、表紙及び、本文中のイラストは峯村良子が描いている。<不倫編>のサブタイトルのせいか、…

  • 『ひとりぼっちのソユーズ』七瀬夏扉 今日から、あなたは私のスプートニクになるの

    SFジュブナイルの佳品が完全版で帰って来た 2017年刊行作品。もともとは小説投稿サイト「カクヨム」に掲載されていた作品を、改稿のうえで文庫化したもの。KADOKAWA系列のライトノベルレーベル、富士見L文庫からの発売だった。表紙および扉絵のイラストはアニメーターの吉田健一(よしだけんいち)によるもの。 作者の七瀬夏扉(ななせなつひ)は本作がデビュー作。東京都出身。 ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 (富士見L文庫) 作者:七瀬 夏扉 KADOKAWA Amazon 富士見L文庫版では編集者側とあまりうまくいっていなかったようで。アニメ化の話もあったけど実現はしなかった模様…

  • 『少女小説家は死なない!』氷室冴子 少女小説冬の時代と少女小説の再定義

    少女小説作家って怖ろしい? 1983年の11月に刊行された作品。氷室冴子の作品としては13冊目。ちなみに『シンデレラ迷宮』と『シンデレラミステリー』の間に刊行された作品である。 表紙及び、本文中のイラストは『ざ・ちぇんじ! 』に引き続き、峯村良子が担当している。 なお、これまで刊行順に氷室冴子作品を紹介してきた。順番から言うと本当は『シンデレラ迷宮』の感想を書く予定であったのだが、この作品は読んで感想を書くのにそれなりに覚悟を必要とする作品である。もう少し気力が溜まったら挑戦する予定なので、少々お待ちを。 ちなみに本作は、「わたし、定時で帰ります。」で知られる、作家朱野帰子(あけのかえるこ)の…

  • 『どうせ、この夏は終わる』野宮有 人類最後の夏をあなたならどう過ごす?

    野宮有の10作目! 2023年刊行作品。作者の野宮有(のみやゆう)は、第25回の電撃小説大賞で『シルバー・ブレット -SILVER BULLET-』が選考委員奨励賞を受賞。改題されて電撃文庫から2019年に発売された『マッド・バレット・アンダーグラウンド』がデビュー作となる。年齢は非公開。 表紙及び、口絵、本文中のイラストは、イラストレータのびねつによるもの。 作品ラインナップは以下の通り。 『マッド・バレット・アンダーグラウンド』(2019年)電撃文庫 『マッド・バレット・アンダーグラウンド2』(2019年)電撃文庫 『マッド・バレット・アンダーグラウンド3』(2020年)電撃文庫 『マッド…

  • 『すみれ屋敷の罪人』降田天 「回想の殺人」を描いた良作ミステリ

    降田天の三作目 2018年刊行作品。降田天(ふるたてん)は、萩野 瑛(はぎのえい)と鮎川颯(あゆかわそう)の両名で構成される合作作家のペンネームである。 このコンビ作家の活動歴は長い。鮎川はぎ名義で刊行された「横柄巫女と宰相陛下」シリーズで2007年にデビュー。ノベライズ系のペンネームとしては高瀬ゆのか名義でも活動しており、三つの筆名での著作は40冊を超える。 降田天としての活動は、2015年の『女王はかえらない』から。この作品が『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作となり、一般文芸の世界への進出を果たしている。最近の著作では2024年の『少女マクベス』が有名かな(わたしは未読)。 すみ…

  • 『ここはすべての夜明けまえ』間宮改衣 わたしのかぞくのはなし

    間宮改衣のデビュー作 2024年刊行作品。作者の間宮改衣(まみやかい)は大分県出身で、1992年生まれ。第11回ハヤカワSFコンテストに、本作『ここはすべての夜明けまえ』にてエントリし、特別賞を受賞。作家としてのデビューを果たしている。 表紙イラストはイラストレータの北澤平祐(きたざわへいすけ)によるもの。 大森望の本作レビューはこちら。 山内マリコによる本作のレビューはこちら。 ちなみに、第11回ハヤカワSFコンテストの大賞は矢野アロウの『ホライズン・ゲート 事象の狩人』(応募時タイトルは「ホライズン・ガール~地平の少女~」)。 ホライズン・ゲート 事象の狩人 作者:矢野 アロウ 早川書房 …

  • 『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』青柳碧人 昔話世界ならではの特殊設定ミステリが面白い!

    昔話×ミステリの第四作 2022年刊行作品。双葉社のミステリ小説誌「小説推理」で、2021年~2022年にかけて掲載されていた四作に、書下ろし一作を加えて単行本化したもの。 表紙イラストは今回も、五月女(そおとめ)ケイ子が担当している。五月女ケイ子の「濃い」絵柄は、このシリーズの世界観にマッチしていて、もはや欠かせないものとなっているように思える。 青柳碧人(あおやぎあいと)による、昔話の世界観にミステリの概念を持ち込んだ一連のシリーズの四作目である。 赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。 作者:青柳碧人 双葉社 Amazon 双葉文庫版は2024年に刊行されている。巻末収録の解説は中江有里…

  • 『なんて素敵にジャパネスク3<人妻編>』氷室冴子 瑠璃さんが都に帰って来たよ!

    シリーズ後半戦が開幕!瑠璃さんが都に帰って来た 1988年刊行作品。集英社が刊行していた少女向けライトノベル誌「Cobalt」の春の号、夏の号、秋の号、冬の号に掲載されていた作品を文庫化したもの。集英社文庫のコバルトシリーズからの登場(当時はまだコバルト文庫とは呼ばれていなかった)。 ナンバリング的には「3」となっているが、シリーズ的には五冊目。あとがきで作者も書いているが、読む順番的には1→2→アンコール→続アンコール→3とするのが正解。 表紙及び、本文中のイラストは峯村良子によるもの。この巻には「ジャパネスク・ファミリーご紹介」として、冒頭にイラスト付きのキャラクター紹介が書かれている。登…

  • 『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人 昔話×ミステリの第二弾!

    西洋の昔話がミステリに! 2020年刊行作品。日本の昔話を下敷きにしたミステリ短編集『むかしむかしあるところに、死体がありました。』で好評を博した青柳碧人(あおやぎあいと)が、今度は西洋のおとぎ話をベースにミステリ短編集を出してきた!『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は2020年(第17回)の本屋大賞で第10位にランクインするほどの人気作になったので、続篇を出してくるのは正しい選択。 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 作者:青柳 碧人 双葉社 Amazon 『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2019年~2020年にかけて掲載された四つの短編…

  • 『チョコレートコスモス』恩田陸 続篇の『ダンデライオン』はいつ出るの!!

    続きが気になる未完シリーズの第一作 2006年刊行作品。サンデー毎日の2006年6月27日号から2005年8月7日号にかけて連載された作品を単行本化したもの。さまざまな媒体で連載を持ったことのある恩田陸だけど、週刊誌連載はこれが初めてかな? チョコレートコスモス 作者:恩田 陸 毎日新聞社 Amazon 角川文庫版は2011年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 演劇好きの方、『ガラスの仮面』が好きな方、終盤でうやむやにならない恩田陸作品を読みたい方、ハラハラドキドキする徹夜本を読みたい方におススメ! あらすじ 恵まれた容姿と天賦の才能。芸能…

  • 『誰が勇者を殺したか』駄犬 魔王は斃れた、そして勇者だけが還らなかった

    10万部突破の大人気作品 2023年刊行作品。作者の駄犬(だけん)は、小説投稿サイト「小説家になろう」出身のライトノベル作家。インタビュー記事によると40代の会社員。かつては書籍編集の仕事に就いていたこともあるみたい。 駄犬は『誰が勇者を殺したか』に先行し、2022年~2023年にかけて、「小説家になろう」にて『モンスターの肉を食っていたら王位に就いた件』を発表。続いて2023年に同様に「小説家になろう」にて、本作『誰が勇者を殺したか』を発表。こちらが話題となり、角川スニーカー文庫にて2023年9月に書籍化された。2024年のこの記事によると、発行部数は10万部を突破している。 2024年8月…

  • 『初夏ものがたり』山尾悠子 死者と生者のつかの間の再会を描く四編の物語

    山尾悠子の初期作品が復刊 作者の山尾悠子(やまおゆうこ)は1955年生まれの作家。主として幻想文学の書き手として知られる。 「初夏ものがたり」のオリジナルは、1980年刊行の『オットーと魔術師』(集英社文庫コバルトシリーズ)に収録されていた作品。 オットーと魔術師―SFファンタジー (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ) Amazon その後2024年に、『オットーと魔術師』の中から「初夏ものがたり」だけが、単独で再文庫化された。ちくま文庫版である。 表紙及び、本文イラストは酒井駒子によるもの。カラー絵が8枚も収録されており、かなり力の入った文庫化と言える。解説は東雅夫が書いている。…

  • 『紗央里ちゃんの家』矢部嵩 僕の夏休み、すべてが歪み、狂っていく世界

    矢部嵩のデビュー作 2006年刊行作品。同年の、第13回日本ホラー小説大賞で長編賞を受賞している。矢部嵩(やべたかし)のデビュー作である。ちなみにこの年の大賞は「該当なし」。短編賞は吉岡暁(よしおかさとし)の『サンマイ崩れ』が受賞している。 矢部嵩は1986年生まれなので、およそ20歳の若さで作家デビューということになる。 紗央里ちゃんの家 作者:矢部 嵩 KADOKAWA Amazon 角川ホラー文庫版は2008年に登場。最初はこんな感じの書影だった。 その後、どこかの段階で改版されたのか、わたしが持っている2021(令和3)年の第4刷ではこんな表紙になっていた。カバーイラストは丹地陽子(た…

  • 『方舟』夕木春央 死んでもいいのは?救われるのは誰なのか?

    夕木春央の第三作品 2022年刊行作品。作者の夕木春央(ゆうきはるお)は、2019年の第60回メフィスト賞受賞作『絞首商會(こうしゅしょうかい)』がデビュー作。2021年には第二作である『サーカスから来た執達吏(しったつり)』を上梓している。 方舟 作者:夕木春央 講談社 Amazon 『絞首商會』『サーカスから来た執達吏』はいずれも大正時代を舞台とした本格ミステリ作品であったが、第三作である『方舟』は現代を舞台とした本格ミステリ作品となっている。 なお、最新作である『十戒(じっかい)』が2023年にリリースされており、こちらも現代が舞台の本格ミステリ作品。 講談社文庫版は2024年に登場。解…

  • 『黒牢城』米澤穂信 直木賞受賞!荒木村重✖黒田官兵衛の歴史ミステリ

    米澤穂信の歴史ミステリが登場 2021年刊行作品。タイトルの『黒牢城』は「こくろうじょう」と読む。英題は『Arioka Citadel case』。 KADOKAWAのWEBマガジン「文芸カドカワ」及び「カドブンノベル」に2019年~2020年にかけて掲載されていた作品に、加筆修正をした上で、書下ろし一篇を加えて上梓されたのが本作である。 黒牢城 (角川書店単行本) 作者:米澤 穂信 KADOKAWA Amazon 角川文庫版は2024年に刊行されている。巻末にはドイツ人ライターのマライ・メントラインによる解説文が収録されている。 直木賞受賞、六冠に輝いた作品! 第166回の直木賞受賞作が発表…

  • 「グイン・サーガ」40年目の到達点!あの人はどうなった?

    栗本薫「グインサーガ」のキャラクターがその後どうなったか、シリーズ40年分のネタバレまとめ。 五代ゆう、宵野ゆめによる続篇については全話感想を掲載。 リタイア組も、継続組の方も是非ご覧ください。

  • グインサーガ続篇149巻『ドライドンの曙』(最新刊) ヴァレリウス、クリスタルパレスに戻る

    続篇グイン・サーガ1年7カ月ぶりの新刊 2024年6月刊行作品。前巻の148巻『トーラスの炎』が2022年11月刊行だったので、およそ1年7カ月ぶりの新刊。147巻と148巻の刊行間隔が2年4カ月だったので、それに比べれば早かったとはいえ、相変わらず刊行ペースはゆったり。 タイトルの『ドライドンの曙』は「ドライドンのあけぼの」と読む。表紙絵はレムス。って、メッチャ久しぶりじゃない?? あらすじ かつて中原の華と称えられたパロの首都クリスタル。しかしヤンダル・ゾックと、彼に動かされたイシュトヴァーンの侵攻により、この街は壊滅的な打撃を受けていた。沿海州から派遣されたドライドン騎士団は、パロ宰相ヴ…

  • 『続ジャパネスク・アンコール!』氷室冴子 守弥、小萩をメインとした短編集、瑠璃さんも登場!

    「アンコール!」の第二弾が登場 1985年刊行作品。『なんて素敵にジャパネスク』『なんて素敵にジャパネスク2』『ジャパネスク・アンコール!』に続くシリーズ四作目。表紙及び本文イラストは峯村良子。 『ジャパネスク・アンコール!』同様に、外伝的な作品を集めた短編集となっている。 「ジャパネスク」シリーズは、基本的に刊行順に読むべき!従って、2巻を読んだあとは、3巻の「人妻編」よりも先に『ジャパネスク・アンコール!』と本作『続ジャパネスク・アンコール!』と読んでいくことを強くお勧めする。 なお、新装版は1999年に登場。イラストレータは後藤星に変更されている。現在手に入る版はこちらになる。大きな書店…

  • 『くらのかみ』小野不由美 ホラーと思わせておいて、しっかり本格ミステリ

    講談社ミステリーランドの第一期作品 2003年刊行作品。かつて子どもだったあなたと少年少女のための"講談社ミステリーランド"と銘打たれた特別企画の豪華本である。2016年で全30巻をもって完結している。 第一回の配本は本書『くらのかみ』に加えて、『透明人間の納屋』島田荘司と『子どもの王様』殊能将之で計三冊であった。 くらのかみ (ミステリーランド) 作者:小野 不由美 講談社 Amazon 箱装に箔押しのタイトル文字、総ルビにカラーイラストとお値段が高い分だけ気合い入りまくった装丁に衝撃を受けることは必至。カバーが無いのは学校の図書室に置かれることを想定しているのだろう。対象としては小学校高学…

  • 『老虎残夢』桃野雑派 武俠小説×本格ミステリ×歴史小説×〇〇

    第67回江戸川乱歩賞受賞作品 2021年刊行作品。タイトルの『老虎残夢』は「ろうこざんむ」と読む。作者の桃野雑派(もものざっぱ)は1980年生まれ。本作にて第67回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューを果たしている。同時受賞作は伏尾美紀(ふせおみき)の『センパーファイ -常に忠誠を-』。 ちなみに、桃野雑派は前年の第66回江戸川乱歩賞では『インディゴ・ラッシュ』で最終選考まで残っていた(本書選評より)とのこと。 老虎残夢 作者:桃野雑派 講談社 Amazon 講談社文庫版は2024年に登場。巻末にはミステリ評論家千街晶之(せんがいあきゆき)による解説文も収録されている。 おススメ度、こんな方にお…

  • 『月と日の后』冲方丁 国母、ゴッドマザー藤原彰子の生涯を描く

    冲方丁が描く、平安歴史絵巻 2021年刊行作品。作者の冲方丁(うぶかたとう)は1977年生まれの小説家。デビュー作の『黒い季節』以来、エスエフ系統の作品を多く書いているが、2009年の『天地明察』では歴史小説にも挑戦している。『天地明察』はいきなり本屋大賞を受賞してしまい、以後、歴史小説の書き手としても冲方丁は大活躍している。 月と日の后 作者:冲方 丁 PHP研究所 Amazon PHP文庫版は2023年に刊行されている。文庫化に際して、上下巻に分冊された。文庫版の表紙イラストはアオジマイコ。 冲方丁の平安モノとしては、2013年刊行で、清少納言と一条天皇の中宮定子の関係性を描いた『はなとゆ…

  • 『火蛾(ひが)』古泉迦十 イスラム世界を舞台とした異色のミステリ

    ※以前に書いたエントリですが、文庫化に際して再読し、若干内容を修正、追記しました! 謎のメフィスト賞作家、古泉迦十 2000年刊行作品。第17回メフィスト賞受賞作である。 タイトルの『火蛾』は「ひが」と読み、作者名の古泉迦十は「こいずみかじゅう」と読む。1975年生まれ。『火蛾』は古泉迦十のデビュー作にして、2024年現在、唯一の作品となっている。 火蛾 (講談社ノベルス コJ- 1) 作者:古泉 迦十 講談社 Amazon 刊行は講談社ノベルス版のみで、長らく文庫化されていなかったが、23年の空白を経て、2023年5月に突如文庫化された。巻末の解説文はミステリ評論家の佳多山大地(かたやまだい…

  • 『#真相をお話します』結城真一郎 想像を超えた「真相」に震撼せよ!

    日本推理作家協会賞、受賞作を収録 2022年刊行作品。作者の結城真一郎(ゆうきしんいちろう)は1991年生まれのミステリ作家。2018年に『スターダスト・ナイト』(刊行時のタイトルは『名もなき星の哀歌』)が第5回新潮ミステリー大賞を受賞し作家としてのデビューを果たしている。 『#真相をお話します』は2019年~2022年にかけて、新潮社の小説誌「小説新潮」に掲載された五編の短編作品をまとめたもの。収束柵のひとつ「#拡散希望」は第74回日本推理作家協会賞の短編部門を受賞している。 #真相をお話しします 作者:結城真一郎 新潮社 Amazon 音声朗読のaudible版はこちら。ナレーションは声優…

  • 『三体3 死神永生』劉慈欣 時空の果て、わたしたちの星、わたしたちの宇宙

    三体シリーズ三部作の完結編 2021年刊行作品。オリジナルである中国版は2008年に刊行。『三体』『三体2 暗黒森林』の続編。劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)による三体(地球往事)シリーズ三部作の最終作にあたる。死神永生は「ししんえいせい」と読む。 三体Ⅲ 死神永生 上 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon 三体Ⅲ 死神永生 下 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は2024年に登場。解説はエスエフ作家の藤井太洋(ふじいたいよう)。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★★(最大★5つ) 『三体』『三体2 暗黒森林』を読んで、続編はまだかと心待ちにしてい…

  • 『冬期限定ボンボンショコラ事件』米澤穂信 「小市民」シリーズ四部作、最後の季節、高校時代の終わり

    「小市民」シリーズついに”冬期”が登場 2024年刊行作品。『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』そして短編集である『巴里マカロンの謎』に続く「小市民」シリーズの五作目にあたる作品である。文庫書下ろし。 もはや超売れっ子作家となった米澤穂信作品を単行本ではなく、最初から文庫で読めるのは、もはや「小市民」シリーズだけなのではなかろうか。その点、文庫で始まったのに最近はハードカバーで出る「古典部」シリーズとは対照的である。フォーマットを変えなかった東京創元社偉い! 表紙イラストはもちろん片山若子(かたやまわかこ)。片山若子にとしては「小市民」シリーズ…

  • 『俺ではない炎上』浅倉秋成 Twitter炎上の怖さと「責任を取る」ということ

    浅倉秋成の2022年最新作が登場 2022年刊行作品。書下ろし。2021年に『六人の嘘つきな大学生』が大ヒット。ブレイクを果たした感のある浅倉秋成の第七作である。 俺ではない炎上 作者:浅倉 秋成 双葉社 Amazon 表紙はスマートフォンの画面を模したデザインとなっている。しかもその表面のガラスがヒビ割れている。画像だけだとわかりにくいが、実際に触ってみるとこのヒビの部分が盛り上がった立体的なデザインで、かなり凝った仕掛けと言える。 ちなみに単行本版の表紙カバーを外してみるとこんな感じ。作中で登場するTwitterの投稿を模したテキストが配置されている。 表紙カバーを取ったところ 双葉社の公…

  • エドワード・ゴーリーの邦訳全作リストをご紹介!

    ※2024/6/15追記 神奈川県横須賀市の横須賀美術館で「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展!7/6~9/1まで。これは行かないと!! ということで、しばらく更新してなかったので、久しぶりにゴーリー本のリストを更新しました。 邦訳されているゴーリー作品を全て紹介! エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)は1925年生まれ。アメリカ人絵本作家である。2000年に亡くなられている。 彼の作風についてはWikipedia先生から引用させて頂こう。 絵本という体裁でありながら、道徳や倫理観を冷徹に押しやったナンセンスな、あるいは残酷で不条理に満ちた世界観と、徹底して韻を踏んだ言語表現で醸し出…

  • 『夏休みの空欄探し』似鳥鶏 謎解き×ロードノベル×忘れられない夏の思い出

    似鳥鶏が描く、夏のロードノベル 2022年刊行作品。作者の似鳥鶏(にたどりけい)は1981年生まれのミステリ作家。デビュー以来、ほぼ毎年のように複数作品を発表している多作家として知られる。 本作『夏休みの空欄探し』はポプラ社の文芸PR誌「季刊asta」のVol.1~Vol.3にかけて連載されていた「夏休みの3301」を改題のうえ、加筆修正して単行本化したもの。 カバー挿画は爽々(そうそう)が担当している。カバーに描かれているのは向かって右から、立原雨音、成田清春、立原七輝、成田頼伸になるかな。 夏休みの空欄探し 作者:似鳥鶏 ポプラ社 Amazon ポプラ文庫版は2024年に刊行。単行本版の後…

  • 『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子 とある仇討ちをめぐる群像劇

    直木賞&山本周五郎賞のW受賞作 2023年刊行作品。タイトル『木挽町のあだ討ち』の読みは「こびきちょうのあだうち」。作者の永井紗耶子(ながいさやこ)は1977生まれ。産経新聞の記者からフリーライターに転身。その後2010年に『絡繰り心中』(単行本刊行時のタイトルは『恋の手本となりにけり』、文庫版ではさらに改題されて『部屋住み遠山金四郎 絡繰り心中』)で、小学館の小学館文庫小説賞を受賞し、作家としてのデビューを果たす。 2021年には『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で、新田次郎文学賞を受賞。2022年には『女人入眼』が第167回直木賞の候補となった。そして本作『木挽町のあだ討ち』では、第36回の…

  • 『その意図は見えなくて』藤つかさ 安楽椅子探偵には解決できないことがある

    藤つかさのデビュー作 2022年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは、1992年生まれのミステリ作家。2020年の「見えない意図」(単行本収録時に「その意図は見えなくて」に改題されている)が、第42回の小説推理新人賞を受賞し作家デビューを果たす。 本書『その意図は見えなくて』は、上記の小説推理新人賞受賞作他、双葉社のミステリ小説誌「小説推理」に発表された四作に、書下ろし一編を加えて上梓されたもの。藤つかさとしては初の著作となる。表紙イラストは中野カヲルが担当している。 その意図は見えなくて 作者:藤つかさ 双葉社 Amazon 双葉文庫版は2024年に登場。巻末の解説文はミステリ評論家の千街晶之…

  • 『風よ僕らの前髪を』弥生小夜子 第30回鮎川賞優秀賞受賞作品

    弥生小夜子のデビュー作 2021年刊行作品。作者の弥生小夜子(やよいさよこ)は1972年生まれ。過去には創元ファンタジー新人賞で第1回、第5回で最終選考まで残った実績がある。今回の『風よ僕らの前髪を』では、第30回鮎川賞の優秀賞を受賞し作家デビューを果たしている。 ちなみにこの年の鮎川賞の大賞は千田理緒(せんだりお)の『認識五色』。 風よ僕らの前髪を 作者:弥生小夜子 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2024年に登場。解説は書店書評家の宇田川拓也(うだがわたくや)が書いている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ビターで切ない系の青春小説が好みの方。…

  • 『じんかん』今村翔吾 新たな松永久秀像を提示した一作

    「じんかん」とは?2020年の直木賞候補作。今村翔吾『じんかん』のあらすじ、ネタバレ感想です。松永久秀ファンなら必読!

  • 『少女には向かない職業』桜庭一樹 少女の魂は殺人には向かない

    ブレイク目前の桜庭一樹、初の一般向けミステリ作品 2005年刊行。2003年のファミ通文庫『赤×ピンク』、2004年の富士見ミステリー文庫『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と、ライトノベルの世界でただものではない凄みを見せつけた桜庭一樹が、一般向けのミステリ作品として初めて書き下ろしたのが本作である。 少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア) 作者:桜庭 一樹 東京創元社 Amazon ミステリ界への殴り込み一作目は東京創元社のミステリフロンティアシリーズからの登場だった。2006年版このミス国内部門第20位にランクインしている。 なお、創元推理文庫版は2007年に登場。解説は文芸評論家…

  • 『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈 成瀬シリーズ第二弾!高校3年秋~大学1年編

    成瀬あかりにまた会える! 本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』のその後を描いた続編的作品。 2024年刊行。5編の短編を収録。そのうち「やめたいクレーマー」は、新潮社の小説誌「小説新潮」の2023年5月号掲載。他の4編はすべて書下ろしとなっている。表紙及び口絵のイラストはざしきわらしによるもの。 前作『成瀬は天下を取りにいく』の感想はこちらから。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 前作を読んで成瀬あかりに魅了された方。成瀬あかりの生涯を見届けたいと思った方。滋賀県が大好き!滋賀県ローカルの小説作品を読んでみたいと思っている方。ちょっと変わったヒロインが主…

  • 『なんて素敵にジャパネスク2』氷室冴子 人気を決定的にしたシリーズ最高傑作巻

    「なんて素敵にジャパネスク」シリーズ最高傑作 1985年刊行作品。前年に刊行された『なんて素敵にジャパネスク』の続篇。前作同様に表紙及び本文イラストは峯村良子によるもの。 イラストが後藤星に替わった新装版は1999年に登場。表紙を飾っているのは鷹男(今上帝)。 なんて素敵にジャパネスク 2 ―新装版― なんて素敵にジャパネスク シリーズ(2) (なんて素敵にジャパネスク シリーズ) (コバルト文庫) 作者:氷室 冴子 集英社 Amazon 2012年には小中学生向けのレーベル、集英社みらい文庫版が登場。こちらのイラストは佐嶋真実によるもの。 なんて素敵にジャパネスク 2 みらい文庫版 (なんて…

  • 『三体2 黒暗森林』劉慈欣 面壁者VS破壁人、シリーズ二作目は頭脳バトルだ!

    三体シリーズ三部作の第二作 2020年刊行作品。オリジナルの中国版は2008年に刊行。劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)による三体(地球往事)三部作の第二作。『三体』の続編にあたり、最終第三作の『三体3 死神永生』へと繋がっていく作品である。 三体Ⅱ 黒暗森林 上 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon 三体II 黒暗森林 下 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon 解説は『雪が白いとき、かつそのときに限り』の陸秋槎(りくしゅうさ)が担当。大森望による訳者あとがきも収録されている。 ハヤカワ文庫版は2024年に登場している。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★★(最大★5…

  • 『地雷グリコ』青崎有吾 魅力的な「ゲーム」と緻密な論理の物語

    青崎有吾が描く、学園頭脳バトル 2023年刊行作品。「小説屋sari-sari」「カドブンノベル」「小説野生時代」等に掲載されていた作品に書下ろし一編を追加して単行本化したもの。英題は『GLICO WITH LANDMINES』。 第24回本格ミステリ大賞受賞作(おめでとうございます!)。11月刊行だったから、2023年のミステリ各賞にはランクインしなかったけど、2024年の部では上位に入ってきそうだよね。 作者の青崎有吾(あおさきゆうご)は1991年生まれのミステリ作家。デビュー作は第22回の鮎川賞を獲った、2012年刊行の『体育館の殺人』。主なシリーズ作品に「裏染天馬」シリーズ、「アンデッ…

  • 『巴里マカロンの謎』米澤穂信 11年ぶりの「小市民」シリーズ続巻

    祝『冬期限定ボンボンショコラ事件』刊行と言うことで、「小市民」シリーズの旧記事をアップしています。本日は『巴里マカロンの謎』です。 小鳩くんと、小佐内さんに久しぶりに会える! 2020年刊行作品。『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』に続く、米澤穂信の「小市民」シリーズ四作目。前作の『秋期限定栗きんとん事件』が2009年の作品だから、なんと11年ぶりのシリーズ続篇ということになる。 うっかりすると嬉々として謎を解いてしまう小鳩常悟朗(こばとじょうごろう)と、油断するとすぐに復讐の手段を考えてしまう小佐内ゆき(おさないゆき)。自意識高め、互恵関係に…

  • 『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信 小佐内さんの本質が見えてくる「小市民」シリーズ第二作

    祝『冬期限定ボンボンショコラ事件』刊行と言うことで、「小市民」シリーズの旧記事をアップしています。本日は「夏期限定」です。 米澤穂信の「小市民」シリーズ第二弾 2006年刊行作品。東京創元社の文芸誌『ミステリーズ!』に掲載された「シャルロットだけはぼくのもの」「シェイク・ハーフ」に書き下ろしとなる短編四作を加えて上梓されたもの。 『春期限定いちごタルト事件』に続くシリーズ第二弾。その後『秋期限定栗きんとん事件(上下巻)』、2020年刊行の11年ぶりの新作『巴里マカロンの謎』へとシリーズが繋がり、更に2024年に完結編となる『冬期限定ボンボンショコラ事件』が刊行されている。最初から文庫オリジナル…

  • 『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信 地味に静かに暮らしたい!「小市民」シリーズの一作目!

    米澤穂信「小市民」シリーズの一作目。あらすじ、各編ごとのネタバレ感想を収録。小鳩くんと小佐内さんが食べたスイーツのリスト。マンガ版の解説もあります。

  • 『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子 累計発行部数800万部超の大ヒット作

    氷室冴子最大のヒット作「ジャパネスク」シリーズ開幕 1984年刊行作品。集英社のジュニア向け小説誌「小説ジュニア」、及び「Cobalt」に掲載されていた作品を、コバルト文庫にて書籍化したもの。全10巻。氷室冴子最大のヒット作。累計発行部数は800万部を越えており、女性向けのライトノベル作品としては屈指の実績を残した金字塔的な作品である。表紙及び本文イラストは、『少女小説家は死なない!』『蕨ヶ丘物語』でも氷室作品を担当した峯村良子が描いている。 1999年には新装版が登場。こちらのイラストは後藤星(ごとうせい)によるもの。一部改稿が入っている。現在読めるのはこちらの版ではないかと思われる。いまで…

  • 『天地明察』冲方丁 第7回本屋大賞受賞作

    冲方丁の大ブレイク作品 2009年刊行作品。角川書店の文芸誌『野性時代』に2009年1月号から7月号まで連載されていた作品をまとめたもの。本作で冲方丁(うぶかたとう)は、第7回本屋大賞、及び、第31回吉川英治文学新人賞を受賞。また、第143回直木賞の候補作にもなっている。 2003年の『マルドゥック・スクランブル』が初期の出世作だとするならば、『天地明察』はより広い読者層に支持された大ブレイク作品と位置付けることが出来るだろう。本作で冲方丁の一般層への知名度は大きく向上した。 天地明察 作者:冲方 丁 角川書店(角川グループパブリッシング) Amazon 角川文庫版は2012年に刊行されている…

  • 『わたしたちが光の速さで進めないなら』キム・チョヨプ エモーショナルなエスエフ短編集

    韓国の新鋭キム・チョヨプのデビュー作 2020年刊行作品。オリジナルの韓国版は2019年刊行で原題は『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면』。作者のキム・チョヨプ(김초엽/金草葉)は1993年生まれの韓国人エスエフ作家。 本作に収録されている「館内紛失」が第2回韓国科学文学賞中短編部門で大賞を受賞。同じく「わたしたちが光の速さで進めないなら」が佳作を受賞し作家として世に出ることになった。 巻末には韓国の文芸評論家イン・ヨアンによる「美しい存在たちの居場所を探して」と題された解説が収録されている。このテキストは本書の特質を、よく捉えた良解説なのだが、思いっきりネタバレされているので、本文を読んで…

  • 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 成瀬あかり史を島崎と一緒に見届けたい!

    本屋大賞受賞おめでとうございます!ってことで、再度上げておきますね。読むと元気の出る良作なので、これで更にたくさんの方に読んでもらえるのは嬉しい。 宮島未奈のデビュー作&本屋大賞受賞作! 2023年刊行作品。作者の宮島未奈(みやじまみな)は1983年生まれの小説家。2018年「二位の君」が、集英社の第196回コバルト短編小説新人賞に入選(宮島ムー名義)。そして本作に収録されている「ありがとう西武大津店」が、新潮社主宰の第20回女による女のためのR-18文学賞で、大賞・読者賞・友近賞の三冠を達成。その後、「ありがとう西武大津店」は、新潮社の小説誌『小説新潮』に掲載され、作家デビューを果たしている…

  • 『揺籠のアディポクル』市川憂人 無菌室病棟での特殊設定ミステリ

    市川憂人の第五作 2020年刊行作品。作者の市川憂人(いちかわゆうと)は1976年生まれ。2016年のデビュー作『ジェリーフィッシュは凍らない』が第26回鮎川哲也賞を受賞している。 揺籠のアディポクル 作者:市川 憂人 講談社 Amazon 『ジェリーフィッシュは凍らない』以降、『ブルーローズは眠らない』『グラスバードは還らない』『神とさざなみの密室』とほぼ年に一作のペースで新作を上梓しており、本作『揺籠のアディポクル』は第五作となる。 講談社文庫版は2024年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 少年少女を主人公としたミステリを読んでみたい方…

  • 『冬にそむく』石川博品 あたりまえの日常を奪われた世界で

    2023年4月刊行作品。発売されて早々にゲットしたのだが、タイトル的にこれは冬に読むべき!と思って10ヵ月寝かせてようやく読んだ。ホントは冬の間に感想をあげたかったのだけど、ボヤボヤしているうちに春になってしまったよ。。。 石川博品の新作が三年振りに登場! 作者の石川博品(いしかわひろし)は1978年生まれのライトノベル作家。第10回エンターブレインえんため大賞小説部門優秀賞を受賞した、2009年刊行の『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』がデビュー作。 わたし的には初読みの作家さんになる。有名なのはデビュー作のシリーズと『ヴァンパイア・サマータイム』、『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』あた…

  • 『三体』劉慈欣 全世界2900万部の超ベストセラーSF

    「三体」シリーズ三部作の一作目 2019年刊行作品。オリジナルの中国版は2006年に中国のSF雑誌『科幻世界』に連載されていたもので、2008年に書籍化されている。作者の劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)は1963年生まれの中国人SF作家。本作で、2015年のヒューゴー賞をアジア人として初めて受賞している。 三体 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は2024年2月に刊行されている。 本作は劉慈欣による「三体(地球往事)」シリーズ三部作の一作目。三部作累計での発行部数は2900万部を超えており、全世界的なベストセラー作品となっている。SF作品がここまで売れるなんてスゴイ! …

  • 滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』 平凡な男子高校生と美少女戦士、そしてチェーンソー男

    滝本竜彦のデビュー作 2001年作品。作者の滝本竜彦(たきもとたつひこ)は1978年生まれの小説家。本作で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たした。表紙絵はイラストレータの安倍吉俊(あべよしとし)によるもの。 2004年に角川文庫版が出ている。 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫) 作者:滝本 竜彦 KADOKAWA Amazon 滝本竜彦の既刊は以下の通り。作家としてのキャリアは20年を超えるが、寡作のため著作は七作しかない。 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2001年/角川書店) NHKにようこそ!(2002年/角川書店) 超人計画(2003年/角…

  • 『九月と七月の姉妹』デイジー・ジョンソン 対照的な二人、歪な関係の行きつく先は……

    デイジー・ジョンソンの第二長編 2023年刊行作品。オリジナルのイギリス版は2020年刊行で英題は『Sisters』。作者のデイジー・ジョンソン(Daisy Johnson)は1990年生まれのイギリス人作家。2016年の短編集『Fen』がデビュー作。2018年には第一長編となる『Everything Under』を上梓。本作はそれに続く第二長編となる。訳者は市田泉(いちだいずみ)。表紙イラストは、昨今大人気のイラストレータ榎本マリコによるもの。ちなみにブロンド(稲妻の髪)の方がセプテンバーで、黒髪がジュライ。 短編集『Fen』掲載の「アホウドリの迷信」については、以前に紹介した岸本佐和子、柴…

  • 『真実の10メートル手前』米澤穂信 太刀洗真智の活躍を描くベルーフシリーズ

    ベルーフシリーズの第二作 2015年刊行作品。青土社の芸術総合誌「ユリイカ」、東京創元社のミステリ誌「ミステリーズ!」等に収録されていたいた短編をまとめたもの。 2016年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第2位、2017年「ミステリが読みたい!」で国内編第1位、「このミステリーがすごい!」国内編では第3位と、ミステリ系各章で高い評価を受けた作品である。また、2016年、第155回直木賞の候補作でもあった。 真実の10メートル手前 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2018年に登場している。文庫版では単行本になかった解説が収録されており、宇田川拓也が執筆を担当…

  • 『まひるの月を追いかけて』恩田陸の描く旅の情景が素晴らしい

    恩田陸の紀行モノ 2003年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」に2001年7月号から2002年8月号にかけて6回に渡り掲載された作品を単行本化したもの。恩田陸22作目の作品。 まひるの月を追いかけて 作者:恩田 陸 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2007年に刊行されている。解説は佐野史郎が担当。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 旅行、旅、非日常の世界で繰り広げられる物語を堪能したい方。奈良が好き!古都、奈良に行ってみたいと思っている方。複雑な人間関係を描いた作品を読んでみたい方。テンション低めのヒロインが好きな方におススメ。 あらすじ 異母兄、研…

  • 『電氣人閒の虞(おそれ)』詠坂雄二 都市伝説と怪異の発生システム

    詠坂雄二の第三作 2009年刊行作品。『リロ・グラ・シスタ』『遠海事件』に続く、詠坂雄二(よみさかゆうじ)の第三作である。 電氣人閒の虞 作者:詠坂 雄二 光文社 Amazon 光文社文庫版は2014年の登場。こちらはミステリ評論家、佳多山大地(かたやまだいち)の解説が収録されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 怪異や妖怪、不思議で超自然的な存在が登場する作品を読んでみたい方。民俗学ネタ、都市伝説的な要素が入ったミステリ作品を読んでみたい方。詠坂雄二ファンの方。詠坂雄二作品だから何が起こっても大丈夫!と思える方におススメ。 あらすじ 人びとが語るところ…

  • 『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』氷室冴子 没後に刊行された未文庫化作品集

    氷室冴子没後に発売された文庫未収録作品集 2012年刊行作品。作者の氷室冴子(ひむろさえこ)は1957年生まれ。シリーズ累計800万部を誇る『なんて素敵にジャパネスク』他、多数のヒット作で知られ、1980年代のライトノベル界(当時はライトノベルとは言わなかったけど)に君臨した人気作家だ。 残念ながら氷室冴子は肺がんのため51歳の若さで早逝している。2008年没。本書『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』は氷室冴子が生前に発表した作品のうち、文庫化されていなかった作品をまとめた作品集だ。 表紙及び本文中のイラストはマンガ家の今市子(いまいちこ)によるもの。ただし、本文中のイラストがあるのは「月の輝く夜に…

  • 『一線の湖』砥上裕將 魅力的な水墨画の世界と、瑞々しいタッチの成長小説

    『線は、僕を描く』の続篇が登場 2023年刊行作品。作者の砥上裕將(とがみひろまさ)は1984年生まれの小説家。デビュー作は第59回のメフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』(応募時タイトルは『黒白の花蕾』)。この作品は横浜流星(よこはまりゅうせい)の主演で映画化され話題になった。 砥上裕將は、その後2021年に短編集『7.5グラムの奇跡』を上梓。そして三作目として書かれたのが本作『一線の湖』だ。本作は『線は、僕を描く』のその後を描いた続編作品となる。表紙イラストは前回に続きイラストレータの丹地陽子が担当している。 担当編集者によるコラム記事はこちら。この記事によると前作の部数は20万部を越えたら…

  • 『歌われなかった海賊へ』逢坂冬馬 第二次大戦下のドイツ、反体制活動に身を投じた少年少女たちの物語

    逢坂冬馬待望の第二作 2023年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれの小説家。デビュー作は2021年のアガサ・クリスティー賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』。同作は翌年の本屋大賞を受賞。直木賞の候補作にもなるなど、各方面で話題になった。 『歌われなかった海賊へ』はそんな逢坂冬馬、待望の第二作ということになる。デビュー作がこれだけ評価され、話題になってしまうと第二作に対しての読む側のハードルは上がってしまう。書く側のプレッシャーは相当のものがあったのではないだろうか。 ちなみに、前作同様に表紙イラストは雪下まゆが担当している。一枚絵が早川書房のサイトで公開されていたので引用…

  • 『葬式同窓会』乾ルカ あの頃にはもう戻りたくない青春の後始末

    白麗高校三部作の三作目 2023年刊行作品。書下ろし。作者の乾ルカは1970年生まれの作家。18年のキャリアで、30作近い作品を上梓している。代表作は直木賞候補作にもなった『あの日にかえりたい』、大藪春彦賞の候補作『メグル』、そしてドラマ化された『てふてふ荘へようこそ』あたりかな。 以前に紹介した2021年の『おまえなんかに会いたくない』、そして2022年の『水底のスピカ』と共に、白麗(はくれい)高校三部作とされている作品の三作目。 っていうか、そうなんだ(巻末の広告を見て初めて知った)!深く考えずに読んでしまったけど、二作目の『水底のスピカ』を先に読むべきだったかも。。 表紙イラストはすっか…

  • 『文学少女対数学少女』陸秋槎 二人の関係のその後が気になる!!

    陸秋槎の第三作 2020年刊行作品。陸秋槎(りくしゅうさ/ ル・チュウチャ)としては、『元年春之祭』『雪が白いとき、かつそのときに限り』に続く三作目となる。過去二作はハヤカワ・ポケット・ミステリからの登場であったが、本作はハヤカワ文庫からの刊行となっている。また、表紙イラストは爽々(そうそう)が担当している。 オリジナルの中国版は2019年に刊行されており、タイトルは『文学少女对数学少女』と、邦題と同様である。 文学少女对数学少女 陆秋槎 著新星出版社】青春推理旗手探求逻辑思维严密与自由之辩的珠玉短篇侦探悬疑推理小说集 作者:陆秋槎 著; 新星出版社 Amazon おススメ度、こんな方におスス…

  • 『エレファントヘッド』白井智之 複雑に入り組んだ本格ミステリの迷宮

    2023年のミステリ界を席巻した一作 2023年刊行。書下ろし作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。ここ数年は意欲作を連発し、年末のミステリ系各賞の常連となった感がある。長編作品としては2022年の『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』に続く、六作目の作品となる。 『エレファントヘッド』は2023年のミステリ系各賞では、すべてで一桁順位にランクイン。 週刊文春ミステリーベスト10:4位 このミステリーがすごい!:4位 本格ミステリ・ベスト10:1位 ミステリが読みたい!:7位 特に「本格ミステリ・ベスト10」では第一位(昨年の『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事…

  • 『失恋の準備をお願いします』浅倉秋成 ラウンドアバウト形式の連作ユーモアミステリ

    浅倉秋成の第三作を改題して文庫化 電子雑誌BOX-AIR(ボックス・エアー)の2015年3月号~7月号に連載されていた作品。 まず、2016年に『失恋覚悟のラウンドアバウト』のタイトルで、講談社BOXレーベルで書籍化されている。この時のイラストは中村ゆうひが担当。 失恋覚悟のラウンドアバウト 作者:浅倉 秋成,中村 ゆうひ 講談社 Amazon 本作は長らく、入手困難な状態が続いていたが、折からの浅倉秋成人気を受け、2020年講談社タイガレーベルにて復刊を果たした。この際タイトルが『失恋の準備をおねがいいします』に変更されている。イラストはusi(うし)が担当。 おススメ度、こんな方におススメ…

  • 『暗がりで本を読む』徳永圭子 きっとあなたに届く書評集

    現役書店員による書評集 2020年刊行。筆者の徳永圭子(とくながけいこ)は1974年生まれの現役書店員。こちらの記事を読む限りでは丸善の方である様子。「本屋大賞、地域イベントのブックオカなどの本のイベントに実行委員として携わる」とあるので、いわゆるカリスマ店員さんということになるのかな。 徳永圭子は本業の傍ら、新聞、雑誌などで書評、コラムを執筆している。 『暗がりで本を読む』は「本の雑誌」に掲載された原稿を中心に、書下ろしを加えて上梓したもの。本書が初書籍となる。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 新しいジャンルを開拓したい、魅力的な本に出会いたい、普段読ま…

  • 『たべもの芳名録』神吉拓郎 直木賞作家による昭和のグルメエッセイで食を満喫

    美味しいものを食べたくなるエッセイ 新潮社の小説誌「小説新潮」に1979年1月号から1980年12月号にかけて連載された、エッセイ「食物ノート」を書籍化したもの。単行本版は新潮社から出ている。1984年の刊行。 筆者の神吉拓郎(かんきたくろう)は1928年生まれの作家、エッセイスト。1984年に『私生活』で直木賞受賞している。 たべもの芳名録 作者:神吉 拓郎 新潮社 Amazon 続いて文庫版が文春文庫から1992年に登場。 たべもの芳名録 (文春文庫 か 5-8) 作者:神吉 拓郎 文藝春秋 Amazon この文春版が、2017年にちくま文庫で再文庫化されている。わたしが読んだのはこちらの…

  • 『この銀盤を君と跳ぶ』綾崎隼 二人の天才とそれぞれの伴走者の物語

    綾崎隼のスポ根フィギュアスケート小説が登場 2023年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。第16回の電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)で作家デビューを果たしている。メディアワークス文庫での活躍が長く、著作の半数以上が同レーベルから発売されている。 ここ数年は一般文芸の世界にも進出しており、当ブログでも2020年の『盤上に君はもういない』や2021年の『死にたがりの君に贈る物語』をご紹介している(どちらも良作!)。 とても目を引く表紙イラストはつん子によるもの。この絵、本当に良い!本作の登場人物の一人、京本瑠璃(きょうもとるり…

  • 『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン 人は人生を変えられる

    小粋な現代のおとぎ話 2020年刊行作品。オリジナルのフランス版は2014年刊行。原題は「La femme au carnet rouge」である。 作者のアントワーヌ・ローラン(Antoine Laurain)は1972年生まれ。 2007年にドゥルオー賞を受賞した『行けるなら別の場所で(Ailleurssi je y suis)』がデビュー作。その後2012年の『ミッテランの帽子(Le Chapeau de Mitterrand)』がランデルノー賞、ルレ・デ・ヴォワイヤジュール賞を受賞。一躍知名度を上げた。日本では『赤いモレスキンの女』同様に、新潮クレスト・ブックスから邦訳が刊行されている…

  • 『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

    本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常野物語(2005年) エンド・ゲーム 常野物語(2006年) 各エピソードは独立した構成になってはいるものの、前作の内容を踏まえたかたちで書かれているので、刊行順で読むことをお薦めしたい。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(★)(最大★5つ) ※一作目の『光の帝国』が★×4、二作目『蒲公英草紙』三作目『エンド・ゲーム』が★×3 恩…

  • 『王とサーカス』米澤穂信を『さよなら妖精』へのアンサーとして読む

    ミステリランキング三冠に輝いた話題作 2015年刊行作品。この年の「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」すべての国内部門で第一位を獲得する三冠を達成。米澤穂信(よねざわほのぶ)の代表作のひとつとなっている。 王とサーカス 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2018年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) ミステリーランキングでトップに輝いた人気作品を読んでみたい方。ネパール王国の首都、カトマンズで繰り広げられる異国情緒に満ちたミステリ作品を読みたい方。米澤穂信の『さよなら妖…

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