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  • 『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 成瀬あかり史を島崎と一緒に見届けたい!

    本屋大賞受賞おめでとうございます!ってことで、再度上げておきますね。読むと元気の出る良作なので、これで更にたくさんの方に読んでもらえるのは嬉しい。 宮島未奈のデビュー作&本屋大賞受賞作! 2023年刊行作品。作者の宮島未奈(みやじまみな)は1983年生まれの小説家。2018年「二位の君」が、集英社の第196回コバルト短編小説新人賞に入選(宮島ムー名義)。そして本作に収録されている「ありがとう西武大津店」が、新潮社主宰の第20回女による女のためのR-18文学賞で、大賞・読者賞・友近賞の三冠を達成。その後、「ありがとう西武大津店」は、新潮社の小説誌『小説新潮』に掲載され、作家デビューを果たしている…

  • 『揺籠のアディポクル』市川憂人 無菌室病棟での特殊設定ミステリ

    市川憂人の第五作 2020年刊行作品。作者の市川憂人(いちかわゆうと)は1976年生まれ。2016年のデビュー作『ジェリーフィッシュは凍らない』が第26回鮎川哲也賞を受賞している。 揺籠のアディポクル 作者:市川 憂人 講談社 Amazon 『ジェリーフィッシュは凍らない』以降、『ブルーローズは眠らない』『グラスバードは還らない』『神とさざなみの密室』とほぼ年に一作のペースで新作を上梓しており、本作『揺籠のアディポクル』は第五作となる。 講談社文庫版は2024年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 少年少女を主人公としたミステリを読んでみたい方…

  • 『冬にそむく』石川博品 あたりまえの日常を奪われた世界で

    2023年4月刊行作品。発売されて早々にゲットしたのだが、タイトル的にこれは冬に読むべき!と思って10ヵ月寝かせてようやく読んだ。ホントは冬の間に感想をあげたかったのだけど、ボヤボヤしているうちに春になってしまったよ。。。 石川博品の新作が三年振りに登場! 作者の石川博品(いしかわひろし)は1978年生まれのライトノベル作家。第10回エンターブレインえんため大賞小説部門優秀賞を受賞した、2009年刊行の『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』がデビュー作。 わたし的には初読みの作家さんになる。有名なのはデビュー作のシリーズと『ヴァンパイア・サマータイム』、『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』あた…

  • 『三体』劉慈欣 全世界2900万部の超ベストセラーSF

    「三体」シリーズ三部作の一作目 2019年刊行作品。オリジナルの中国版は2006年に中国のSF雑誌『科幻世界』に連載されていたもので、2008年に書籍化されている。作者の劉慈欣(りゅうじきん/リウツーシン)は1963年生まれの中国人SF作家。本作で、2015年のヒューゴー賞をアジア人として初めて受賞している。 三体 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は2024年2月に刊行されている。 本作は劉慈欣による「三体(地球往事)」シリーズ三部作の一作目。三部作累計での発行部数は2900万部を超えており、全世界的なベストセラー作品となっている。SF作品がここまで売れるなんてスゴイ! …

  • 滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』 平凡な男子高校生と美少女戦士、そしてチェーンソー男

    滝本竜彦のデビュー作 2001年作品。作者の滝本竜彦(たきもとたつひこ)は1978年生まれの小説家。本作で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たした。表紙絵はイラストレータの安倍吉俊(あべよしとし)によるもの。 2004年に角川文庫版が出ている。 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫) 作者:滝本 竜彦 KADOKAWA Amazon 滝本竜彦の既刊は以下の通り。作家としてのキャリアは20年を超えるが、寡作のため著作は七作しかない。 ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2001年/角川書店) NHKにようこそ!(2002年/角川書店) 超人計画(2003年/角…

  • 『九月と七月の姉妹』デイジー・ジョンソン 対照的な二人、歪な関係の行きつく先は……

    デイジー・ジョンソンの第二長編 2023年刊行作品。オリジナルのイギリス版は2020年刊行で英題は『Sisters』。作者のデイジー・ジョンソン(Daisy Johnson)は1990年生まれのイギリス人作家。2016年の短編集『Fen』がデビュー作。2018年には第一長編となる『Everything Under』を上梓。本作はそれに続く第二長編となる。訳者は市田泉(いちだいずみ)。表紙イラストは、昨今大人気のイラストレータ榎本マリコによるもの。ちなみにブロンド(稲妻の髪)の方がセプテンバーで、黒髪がジュライ。 短編集『Fen』掲載の「アホウドリの迷信」については、以前に紹介した岸本佐和子、柴…

  • 『真実の10メートル手前』米澤穂信 太刀洗真智の活躍を描くベルーフシリーズ

    ベルーフシリーズの第二作 2015年刊行作品。青土社の芸術総合誌「ユリイカ」、東京創元社のミステリ誌「ミステリーズ!」等に収録されていたいた短編をまとめたもの。 2016年「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第2位、2017年「ミステリが読みたい!」で国内編第1位、「このミステリーがすごい!」国内編では第3位と、ミステリ系各章で高い評価を受けた作品である。また、2016年、第155回直木賞の候補作でもあった。 真実の10メートル手前 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2018年に登場している。文庫版では単行本になかった解説が収録されており、宇田川拓也が執筆を担当…

  • 『まひるの月を追いかけて』恩田陸の描く旅の情景が素晴らしい

    恩田陸の紀行モノ 2003年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」に2001年7月号から2002年8月号にかけて6回に渡り掲載された作品を単行本化したもの。恩田陸22作目の作品。 まひるの月を追いかけて 作者:恩田 陸 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2007年に刊行されている。解説は佐野史郎が担当。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 旅行、旅、非日常の世界で繰り広げられる物語を堪能したい方。奈良が好き!古都、奈良に行ってみたいと思っている方。複雑な人間関係を描いた作品を読んでみたい方。テンション低めのヒロインが好きな方におススメ。 あらすじ 異母兄、研…

  • 『電氣人閒の虞(おそれ)』詠坂雄二 都市伝説と怪異の発生システム

    詠坂雄二の第三作 2009年刊行作品。『リロ・グラ・シスタ』『遠海事件』に続く、詠坂雄二(よみさかゆうじ)の第三作である。 電氣人閒の虞 作者:詠坂 雄二 光文社 Amazon 光文社文庫版は2014年の登場。こちらはミステリ評論家、佳多山大地(かたやまだいち)の解説が収録されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 怪異や妖怪、不思議で超自然的な存在が登場する作品を読んでみたい方。民俗学ネタ、都市伝説的な要素が入ったミステリ作品を読んでみたい方。詠坂雄二ファンの方。詠坂雄二作品だから何が起こっても大丈夫!と思える方におススメ。 あらすじ 人びとが語るところ…

  • 『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』氷室冴子 没後に刊行された未文庫化作品集

    氷室冴子没後に発売された文庫未収録作品集 2012年刊行作品。作者の氷室冴子(ひむろさえこ)は1957年生まれ。シリーズ累計800万部を誇る『なんて素敵にジャパネスク』他、多数のヒット作で知られ、1980年代のライトノベル界(当時はライトノベルとは言わなかったけど)に君臨した人気作家だ。 残念ながら氷室冴子は肺がんのため51歳の若さで早逝している。2008年没。本書『月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ』は氷室冴子が生前に発表した作品のうち、文庫化されていなかった作品をまとめた作品集だ。 表紙及び本文中のイラストはマンガ家の今市子(いまいちこ)によるもの。ただし、本文中のイラストがあるのは「月の輝く夜に…

  • 『一線の湖』砥上裕將 魅力的な水墨画の世界と、瑞々しいタッチの成長小説

    『線は、僕を描く』の続篇が登場 2023年刊行作品。作者の砥上裕將(とがみひろまさ)は1984年生まれの小説家。デビュー作は第59回のメフィスト賞受賞作『線は、僕を描く』(応募時タイトルは『黒白の花蕾』)。この作品は横浜流星(よこはまりゅうせい)の主演で映画化され話題になった。 砥上裕將は、その後2021年に短編集『7.5グラムの奇跡』を上梓。そして三作目として書かれたのが本作『一線の湖』だ。本作は『線は、僕を描く』のその後を描いた続編作品となる。表紙イラストは前回に続きイラストレータの丹地陽子が担当している。 担当編集者によるコラム記事はこちら。この記事によると前作の部数は20万部を越えたら…

  • 『歌われなかった海賊へ』逢坂冬馬 第二次大戦下のドイツ、反体制活動に身を投じた少年少女たちの物語

    逢坂冬馬待望の第二作 2023年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれの小説家。デビュー作は2021年のアガサ・クリスティー賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』。同作は翌年の本屋大賞を受賞。直木賞の候補作にもなるなど、各方面で話題になった。 『歌われなかった海賊へ』はそんな逢坂冬馬、待望の第二作ということになる。デビュー作がこれだけ評価され、話題になってしまうと第二作に対しての読む側のハードルは上がってしまう。書く側のプレッシャーは相当のものがあったのではないだろうか。 ちなみに、前作同様に表紙イラストは雪下まゆが担当している。一枚絵が早川書房のサイトで公開されていたので引用…

  • 『葬式同窓会』乾ルカ あの頃にはもう戻りたくない青春の後始末

    白麗高校三部作の三作目 2023年刊行作品。書下ろし。作者の乾ルカは1970年生まれの作家。18年のキャリアで、30作近い作品を上梓している。代表作は直木賞候補作にもなった『あの日にかえりたい』、大藪春彦賞の候補作『メグル』、そしてドラマ化された『てふてふ荘へようこそ』あたりかな。 以前に紹介した2021年の『おまえなんかに会いたくない』、そして2022年の『水底のスピカ』と共に、白麗(はくれい)高校三部作とされている作品の三作目。 っていうか、そうなんだ(巻末の広告を見て初めて知った)!深く考えずに読んでしまったけど、二作目の『水底のスピカ』を先に読むべきだったかも。。 表紙イラストはすっか…

  • 『文学少女対数学少女』陸秋槎 二人の関係のその後が気になる!!

    陸秋槎の第三作 2020年刊行作品。陸秋槎(りくしゅうさ/ ル・チュウチャ)としては、『元年春之祭』『雪が白いとき、かつそのときに限り』に続く三作目となる。過去二作はハヤカワ・ポケット・ミステリからの登場であったが、本作はハヤカワ文庫からの刊行となっている。また、表紙イラストは爽々(そうそう)が担当している。 オリジナルの中国版は2019年に刊行されており、タイトルは『文学少女对数学少女』と、邦題と同様である。 文学少女对数学少女 陆秋槎 著新星出版社】青春推理旗手探求逻辑思维严密与自由之辩的珠玉短篇侦探悬疑推理小说集 作者:陆秋槎 著; 新星出版社 Amazon おススメ度、こんな方におスス…

  • 『エレファントヘッド』白井智之 複雑に入り組んだ本格ミステリの迷宮

    2023年のミステリ界を席巻した一作 2023年刊行。書下ろし作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。ここ数年は意欲作を連発し、年末のミステリ系各賞の常連となった感がある。長編作品としては2022年の『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』に続く、六作目の作品となる。 『エレファントヘッド』は2023年のミステリ系各賞では、すべてで一桁順位にランクイン。 週刊文春ミステリーベスト10:4位 このミステリーがすごい!:4位 本格ミステリ・ベスト10:1位 ミステリが読みたい!:7位 特に「本格ミステリ・ベスト10」では第一位(昨年の『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事…

  • 『失恋の準備をお願いします』浅倉秋成 ラウンドアバウト形式の連作ユーモアミステリ

    浅倉秋成の第三作を改題して文庫化 電子雑誌BOX-AIR(ボックス・エアー)の2015年3月号~7月号に連載されていた作品。 まず、2016年に『失恋覚悟のラウンドアバウト』のタイトルで、講談社BOXレーベルで書籍化されている。この時のイラストは中村ゆうひが担当。 失恋覚悟のラウンドアバウト 作者:浅倉 秋成,中村 ゆうひ 講談社 Amazon 本作は長らく、入手困難な状態が続いていたが、折からの浅倉秋成人気を受け、2020年講談社タイガレーベルにて復刊を果たした。この際タイトルが『失恋の準備をおねがいいします』に変更されている。イラストはusi(うし)が担当。 おススメ度、こんな方におススメ…

  • 『暗がりで本を読む』徳永圭子 きっとあなたに届く書評集

    現役書店員による書評集 2020年刊行。筆者の徳永圭子(とくながけいこ)は1974年生まれの現役書店員。こちらの記事を読む限りでは丸善の方である様子。「本屋大賞、地域イベントのブックオカなどの本のイベントに実行委員として携わる」とあるので、いわゆるカリスマ店員さんということになるのかな。 徳永圭子は本業の傍ら、新聞、雑誌などで書評、コラムを執筆している。 『暗がりで本を読む』は「本の雑誌」に掲載された原稿を中心に、書下ろしを加えて上梓したもの。本書が初書籍となる。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 新しいジャンルを開拓したい、魅力的な本に出会いたい、普段読ま…

  • 『たべもの芳名録』神吉拓郎 直木賞作家による昭和のグルメエッセイで食を満喫

    美味しいものを食べたくなるエッセイ 新潮社の小説誌「小説新潮」に1979年1月号から1980年12月号にかけて連載された、エッセイ「食物ノート」を書籍化したもの。単行本版は新潮社から出ている。1984年の刊行。 筆者の神吉拓郎(かんきたくろう)は1928年生まれの作家、エッセイスト。1984年に『私生活』で直木賞受賞している。 たべもの芳名録 作者:神吉 拓郎 新潮社 Amazon 続いて文庫版が文春文庫から1992年に登場。 たべもの芳名録 (文春文庫 か 5-8) 作者:神吉 拓郎 文藝春秋 Amazon この文春版が、2017年にちくま文庫で再文庫化されている。わたしが読んだのはこちらの…

  • 『この銀盤を君と跳ぶ』綾崎隼 二人の天才とそれぞれの伴走者の物語

    綾崎隼のスポ根フィギュアスケート小説が登場 2023年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。第16回の電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)で作家デビューを果たしている。メディアワークス文庫での活躍が長く、著作の半数以上が同レーベルから発売されている。 ここ数年は一般文芸の世界にも進出しており、当ブログでも2020年の『盤上に君はもういない』や2021年の『死にたがりの君に贈る物語』をご紹介している(どちらも良作!)。 とても目を引く表紙イラストはつん子によるもの。この絵、本当に良い!本作の登場人物の一人、京本瑠璃(きょうもとるり…

  • 『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン 人は人生を変えられる

    小粋な現代のおとぎ話 2020年刊行作品。オリジナルのフランス版は2014年刊行。原題は「La femme au carnet rouge」である。 作者のアントワーヌ・ローラン(Antoine Laurain)は1972年生まれ。 2007年にドゥルオー賞を受賞した『行けるなら別の場所で(Ailleurssi je y suis)』がデビュー作。その後2012年の『ミッテランの帽子(Le Chapeau de Mitterrand)』がランデルノー賞、ルレ・デ・ヴォワイヤジュール賞を受賞。一躍知名度を上げた。日本では『赤いモレスキンの女』同様に、新潮クレスト・ブックスから邦訳が刊行されている…

  • 『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

    本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常野物語(2005年) エンド・ゲーム 常野物語(2006年) 各エピソードは独立した構成になってはいるものの、前作の内容を踏まえたかたちで書かれているので、刊行順で読むことをお薦めしたい。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(★)(最大★5つ) ※一作目の『光の帝国』が★×4、二作目『蒲公英草紙』三作目『エンド・ゲーム』が★×3 恩…

  • 『王とサーカス』米澤穂信を『さよなら妖精』へのアンサーとして読む

    ミステリランキング三冠に輝いた話題作 2015年刊行作品。この年の「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」すべての国内部門で第一位を獲得する三冠を達成。米澤穂信(よねざわほのぶ)の代表作のひとつとなっている。 王とサーカス 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2018年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) ミステリーランキングでトップに輝いた人気作品を読んでみたい方。ネパール王国の首都、カトマンズで繰り広げられる異国情緒に満ちたミステリ作品を読みたい方。米澤穂信の『さよなら妖…

  • 『ゴールデンタイムの消費期限』斜線堂有紀 才能を失っても生きていていいですか?

    枯れた才能は再生できる? 2021年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は、2020年、『楽園とは探偵の不在なり』のヒットで注目を集めたが、その後の第一作が本作ということになる。通算では十三作目。斜線堂有紀は2017年デビューだから、これだけの数の作品を世に出せているのは凄い。 ゴールデンタイムの消費期限 (文芸単行本) 作者:斜線堂有紀 祥伝社 Amazon 祥伝社文庫版は2024年に登場。解説は作家の桜庭一樹が書いている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 才能と人生について考えてみたい方。AIに興味のある方。若い頃は神童と呼ばれていたのに、大…

  • 2023年に読んで面白かった小説12選

    旬のタイミングを逃した感がスゴイけど、毎年書いているので今年も書く。おススメ小説の12選!「2023年に読んだ本」が対象であって、2023年に刊行された本ではないのでその点はご注意を。読了直後のTwitterコメントと併せてどうぞ! ちなみに、非小説部門のベスト記事はこちら。 そして、これまでの「面白かった小説約10選」系の記事はこちらから。 2022年に読んで面白かった小説13選 2021年に読んで面白かった小説11選 2020年に読んで面白かった小説10選 2019年に読んで面白かった小説10選 [少女庭国]/矢部嵩 魔女の子供はやってこない/矢部嵩 成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈 光の…

  • 『死体埋め部の回想と再興』斜線堂有紀 死体埋め部シリーズの追加エピソード&後日譚

    死体埋め部シリーズの完結編? 2000年刊行作品。前年に刊行された『死体埋め部の悔恨と青春』に続く、死体埋め部シリーズの第二弾。2019年~2021年にかけての斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の量産っぷりはすさまじく、毎年4作以上の作品を上梓している。本作は2000年では四作目の作品になる。 web配信サービスのnoteに掲載されていた一編に、書下ろし三編を加えて文庫化したもの。前作に引き続き表紙イラストはとろっちによる。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 死体埋め部シリーズの一作目『死体埋め部の回想と再興』を読んでいる方(本作から先に読むのは絶対におススメし…

  • 『九度目の十八歳を迎えた君と』浅倉秋成 青春時代からの呪いを解く

    浅倉秋成の第五作 2019年刊行作品。『ノワール・レヴナント』『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』(文庫化時に『失恋の準備をお願いします』に改題)『教室が、ひとりになるまで』に続く、浅倉秋成(あさくらあきなり)の第五作である。東京創元社のミステリ・フロンティアレーベルからの刊行であった。表紙イラストは瀬戸羽方。 九度目の十八歳を迎えた君と (ミステリ・フロンティア) 作者:浅倉 秋成 東京創元社 Amazon 創元推理文庫版は2020年11月に登場。文庫版には若林踏(わかばやしふみ)の解説が収録されている。表紙のイラストは前田ミックが担当。 ミステリ・フロンティア版が出てから二…

  • 『極楽征夷大将軍』垣根涼介 史上もっともやる気のなかった天下人と有能すぎた弟

    第169回直木賞受賞作品 2023年刊行作品。第169回の直木賞を受賞している。文芸春秋の小説誌「オール讀物」の2020年5月号~2022年11月号にかけて連載されていた作品を加筆修正のうえで単行本化したもの。表紙絵はイラストレータの岡田航也(おかだこうや)によるもの。 作者の垣根涼介(かきねりょうすけ)は1966年生まれ。デビュー作は、2000年刊行、サントリーミステリー大賞(大賞・読者賞)を受賞した『午前三時のルースター』。ストリートギャングの少年たちを描いた「ヒートアイランド」シリーズや、サラリーマン小説である「君たちに明日はない」で知られるが。2013年の『光秀の定理』の定理以降は、歴…

  • 『午後のチャイムが鳴るまでは』阿津川辰海 解決まで65分!昼休み限定の学園ミステリ

    阿津川辰海の学園ミステリ 2023年刊行作品。阿津川辰海(あつかわたつみ)の第八作。実業之日本社のムック「THE FORWARD」及び、Webメディア「Webジェイ・ノベル」に掲載されていた作品に、書下ろし一編を加えて単行本化したもの。 表紙及び扉絵はイラストレータ、マンガ家のオオタガキフミによるもの。 実業之日本社による公式ページはこちら。本作について、作者インタビューも収録されているので必読(ただし読後に)。 また、第一話の「RUN! ラーメン RUN!」が無料で読めるお試し版も公開されている。 午後のチャイムが鳴るまでは【試し読み増量版】 作者:阿津川 辰海 実業之日本社 Amazon …

  • 『追想五断章』米澤穂信 リドルストーリーと最後の一行

    「青春去りし後の人間」を描いた一作 2009年刊行作品。集英社の文芸誌『小説すばる』の2008年6月号~12月号にかけて連載されていた作品を、加筆修正の上で単行本化したもの。 追想五断章 作者:米澤 穂信 集英社 Amazon 集英社文庫版は2012年に登場している。解説は葉山響(はやまひびき)。 単行本版とはカバーデザインが全く変わってしまっており、単行本派としては少々残念である。 単行本版の帯には「米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編」とある。少年少女が主人公ではない点で「青春去りし後の人間」を描いたことには異論がない。しかし2005年作品の『犬はどこだ』では25歳の人物が…

  • 『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台とした心霊小説

    ヘンリー・ジェイムズの代表作のひとつ 1898年作品。原題は「The Turn of the Screw」。古い翻訳だと『ねじのひねり』とされていることもあるかな。作者のヘンリー・ジェイムズ(Henry James)は1843年生まれ。アメリカで生まれ、イギリスで活躍した小説家。1916年に没している。 邦訳版は古くからいくつも出ているのだけど、わたしが読んだのは2012年刊行。光文社、土屋政雄(つちやまさお)訳の古典新訳文庫版。 光文社版は960円(税別)とややお高め。お買い得さで考えると2017年に出た、新潮文庫名作新訳コレクションの『ねじの回転』が490円(税別)とリーズナブル。こちらは…

  • 『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー 難民となったパレスチナ人の苦難を綴った作品集

    爆殺されたパレスチナ人作家 作者のガッサーン・カナファーニー(Ghassan Fayiz Kanafani/غسان كنفاني)は、1936年生まれのパレスチナ人。12歳の時に、ユダヤ人系武装組織に故郷を襲撃され難民となる。その後、作家、ジャーナリストとして活躍したが、1972年、自身の車に仕掛けられた爆弾によって殺害されている。 1972年と1973年にベイルートで刊行されたカナファーニーの遺稿集が本書のオリジナルとなっている。日本国内では、1978年に刊行された「現代アラブ小説全集」の、ラインナップの一冊として世に出ていた。翻訳者は黒田寿郎(くろだとしお)と奴田原睦明(ぬたはらのぶあき…

  • 『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ 2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位作品

    ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』のあらすじ、ネタバレ感想、犯人、タイトルの意味等、作品の魅力についてご紹介します。

  • 『教室が、ひとりになるまで』浅倉秋成 同調圧力の檻の中で

    本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞候補作 2019年刊行作品。筆者の浅倉秋成(あさくらあきなり)は1989年生まれ。デビュー作は2012年に講談社BOX新人賞“Powers”にてPowersを受賞した『ノワール・レヴナント』。浅倉冬至の筆名で『進撃の巨人』のノベライズを手掛けたこともある。 本作『教室が、ひとりになるまで』は、2020年の本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞の候補作となっている。 角川文庫版は2021年に登場。解説は千街晶之(せんがいあきゆき)が担当している。表紙デザインが変わってしまってちょっと残念。単行本版は裏表紙に「あの人」がいる分、より雰囲気出ていたのになあ。 千街晶…

  • 『蕨ヶ丘(わらびがおか)物語』氷室冴子 田舎への愛に満ちたコメディ作品

    『Cobalt』発表の四編を文庫化 1984年刊行作品。集英社の小説誌『Cobalt』に掲載されていた四つの短編作品をまとめたもの。あとがきを読む限り、当初から全四話での完結を企図して書かれていた作品である。 イラストは『少女小説家は死なない!』『ざ・ちぇんじ』に引き続き峯村良子が担当している。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 1980年代の少女小説、特にコメディ系の作品を読んでみたい方。ド田舎の狭いムラ社会をコミカルに描いたお話を堪能したい方。「笑い」に特化した氷室冴子作品を楽しみたい方。ドタバタ系の軽いタッチの恋愛小説を探している方におススメ。 あらすじ…

  • 『アリアドネの声』井上真偽 無理だと思ったらそこが限界なんだ!

    ミステリ系各賞上位ランクインの話題作 2023年刊行作品。書下ろし。表紙イラストは尾崎伊万里(おざきいまり)によるもの。 作者の井上真偽(いのうえまぎ)は、第51回メフィスト賞受賞作、2015年刊行の『恋と禁忌の述語論理』がデビュー作。年齢、性別不明、もちろん顔出しなしの覆面作家だ。 作品リストは以下の通り。 恋と禁忌の述語論理(2015年) その可能性はすでに考えた(2015年) 聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた(2016年) 探偵が早すぎる(2017年) ベーシックインカムの祈り(2019年) ※単行本タイトル『ベーシックインカム』) ムシカ 鎮虫譜(2020年) アリアドネの声(20…

  • 『インシテミル』米澤穂信 12人の男女12の凶器、そして鍵のかからない部屋

    米澤穂信が描く生き残りゲーム 2007年刊行。書き下ろし作品。学生モノが多いこの作家にしては(当時)珍しい一般?ミステリ作品だった。こういうタイプの本格作品も書けるのねと、刊行当時は少し意外に思った記憶がある。 単行本版のカバーイラストは西島大介が担当。 インシテミル 作者:米澤 穂信 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2010年に刊行されている。カバーイラストは単行本版とはすっかりテイストが変わってしまった。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ちょっと(かなり)捻った本格ミステリ系作品を読んでみたい方。クローズドサークルでの頭脳戦に興味のある方。米澤穂信作…

  • 『死体埋め部の悔恨と青春』斜線堂有紀 承認しようそれが全ての正答だ

    死体埋め部シリーズの一作目 2019年刊行作品。『キネマ探偵カレイドミステリー(全三作)』『私が大好きな小説家を殺すまで』『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』に続く、斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の第四作。 web配信サービスのnoteに掲載されていた作品を、加筆修正のうえで文庫化したもの。表紙イラストはとろっちによる。 続篇に2020年刊行の『死体埋め部の回想と再興』がある。こちらも続いて読むので、感想はちょっと待ってね。 死体埋め部の回想と再興 (ポルタ文庫) 作者:斜線堂有紀 新紀元社 Amazon 新紀元社のポルタ文庫って? ポルタ文庫は2019年に8月に誕生した新紀元社によるラ…

  • 『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』青柳碧人 昔ばなしシリーズの最終巻が登場!

    シリーズ累計50万部突破の人気シリーズ第三段 2023年刊行作品。双葉社から発売されている小説誌「小説推理」に2022年~2023年にかけて掲載された作品をまとめたものである。青柳碧人(あおやぎあいと)による、日本の昔話をベースにしたミステリ作品「昔ばなし」シリーズの第三弾にして、最終巻にあたる。『むかしむかしあるところに、死体がありました。』『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』にの続巻である。 表紙イラストは今回も五月女ケイ子が担当。帯の記載によるとシリーズ累計の発行部数は50万部を突破したとのこと。すごい! 双葉社による公式サイトはこちら。 おススメ度、こんな方におスス…

  • 『ルピナス探偵団の当惑』津原泰水 ティーンズハートレーベルから復活した本格ミステリ

    津原やすみ時代に書かれた作品をリライト 津原泰水(つはらやすみ)のデビュー作は1989年の講談社X文庫ティーンズハートの『星からきたボーイフレンド』である。当時は津原やすみ名義で作品を刊行していた。 もともと少女小説の書き手であったこの作家が、同様に講談社X文庫ティーンズハートレーベルから上梓した『うふふ(ハート)ルピナス探偵団』『ようこそ雪の館へ ルピナス探偵団』が本書のオリジナルとなっている。 『ルピナス探偵団の当惑』は2004年刊行作品。先ほどの二作品を改稿した上で、書下ろし作品「大女優の右手」が追加されている。 ルピナス探偵団の当惑 (ミステリー・リーグ) 作者:津原 泰水 原書房 A…

  • 『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』青柳碧人 昔ばなし×ミステリの第二弾!!

    累計部数50万部突破の人気シリーズに 2021年刊行作品。青柳碧人(あおやぎあいと)による『むかしむかしあるところに、死体がありました。』に続く、日本の昔ばなしの世界を下敷きとした本格ミステリ短編集の第二弾である。ストーリー的な関係性はないので、シリーズのどの作品から読んでもオッケー。 双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2020年~2021年にかけて掲載された作品をまとめたものである。 むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。 むかしむかしあるところに、死体がありました。 作者:青柳碧人 双葉社 Amazon 文庫版の帯によるとシリーズの累計部数が50万部を突破したとのこと。いつの間…

  • 『ゴリラ裁判の日』須藤古都離 第64回メフィスト賞受賞作品

    須藤古都離のデビュー作 2023年刊行作品。第64回のメフィスト賞受賞作品である。作者の須藤古都離(すどうことり)は1987年生まれのミステリ作家。ペンネームから女性作家を想像させられたが、講談社の公式サイトを見る限り、男性作家である様子。本作『ゴリラ裁判の日』がデビュー作で、第二作の『無限の月』が既に上梓されている。 表紙絵はイラストレータの田渕正敏(たぶちまさとし)によるもの。 講談社による『ゴリラ裁判の日』公式サイトはこちら。 本作のモデルとなったアメリカでのゴリラ「ハランベ」射殺事件の概要はこちら。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 動物と人間の違い、…

  • 『法廷遊戯』五十嵐律人 第62回メフィスト賞受賞作

    五十嵐律人のデビュー作 2020年刊行作品。第62回のメフィスト賞受賞作である。 法廷遊戯 作者:五十嵐 律人 講談社 Amazon 作者の五十嵐律人(いがらしりつと)は1990年生まれ。巻末のプロフィールによると、東北大卒で司法試験合格とある。講談社の文芸サイトtree掲載の「森 博嗣 × 五十嵐律人 往復書簡」によると、2020年時点で司法修習生とのこと。 講談社文庫版は2023年に登場。解説は河村拓哉(かわむらたくや)。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 最後まで展開が読めない法廷モノのミステリを読みたい方。社会派のミステリ作品を読んでみたい方。刑事裁…

  • 『むかしむかしあるところに、死体がありました。』青柳碧人 昔話×ミステリの楽しさ

    2020年本屋大賞の第10位! 2019年刊行作品。筆者の青柳碧人(あおやぎあいと)は1980年生まれ。2009年に数学を題材としたミステリ『浜村渚の計算ノート』で、講談社Birth小説部門を受賞し小説家デビューを果たしている。デビューしてからの十年で、作品数は30作を超えており、相当に筆の早い作家と言える。 『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は双葉社の月刊小説誌「小説推理」に2017年~2018年にかけて掲載された作品をまとめたものである。 2020年(第17回)の本屋大賞では第10位にランクインしている。 むかしむかしあるところに、死体がありました。 作者:青柳碧人 双葉社 …

  • 『[少女庭国]』矢部嵩 壮大な変奏曲、少女たちに課せられた「卒業試験」

    矢部嵩の第四作 2014年刊行作品。早川書房のハヤカワSFシリーズJコレクションからのリリースだった。2013年の『魔女の子供はやってこない』に続く、矢部嵩(やべたかし)の第四作となる。ちなみにタイトルの『[少女庭国]』は「[しょうじょていこく]」と読む。 〔少女庭国〕 (ハヤカワSFシリーズJコレクション) 作者:矢部 嵩 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は2019年に登場。表紙イラストは焦茶によるもの。 あらすじ 中学三年生の仁科羊歯子は、卒業式当日、講堂に向かう最中に意識を失う。目覚めるとそこは誰もいない暗い部屋。ドアが二つ。そして「卒業試験の実施について」と記された貼り紙が一枚。…

  • 『invert 城塚翡翠倒叙集』相沢沙呼 「invert」に込められた意味を考えてみよう

    文庫化されたのでちょこっと修正しました。 翡翠ちゃんにまた会える! 2021年刊行作品。「雲上の晴れ間」「泡沫の審判」「信用ならない目撃者」の三篇を収録した短編(中編?)作品集。「泡沫の審判」のみ、講談社の小説誌「小説現代」の2021年1月号に掲載。残る二編は、単行本用の書下ろしとなっている。 表紙イラストは今回も遠田志帆(えんたしほ)が担当している。 invert 城塚翡翠倒叙集 作者:相沢 沙呼 講談社 Amazon 講談社文庫版は2023年に刊行されている。解説はミステリ作家の大倉崇裕が書いている。 2019年に登場し、ミステリ系各賞で五冠を達成した、相沢沙呼(あいざわさこ)の大ヒット作…

  • 『存在のすべてを』塩田武士 未曾有の二児同時誘拐事件と、それからの三十年

    塩田武士の新たな代表作になりそう 2023年刊行作品。朝日新聞社の週刊誌「週刊朝日」の2022年4月1日号~2023年6月9日号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。初出時のタイトルは「未到の静けさ」だった。 作者の塩田武士(しおたたけし)は1979年生まれのミステリ作家。骨太の社会派系ミステリの書き手として知られ、2011年のデビュー以来、毎年ほぼ一作、コンスタントに新作を上梓している。 ここ数年は『盤上のアルファ〜約束の将棋〜』『歪んだ波紋』『罪の声』『騙し絵の牙』と、手掛けた作品が続々とドラマ化、映画化され、注目度の高まっている作家といえるだろう。 表紙に使われているのは、画家、…

  • 『ボトルネック』米澤穂信の「20代の「葬送」」として書かれた作品

    米澤穂信『ボトルネック』あらすじとネタバレ感想です。「夢の剣」の意味、川守の正体、主人公の最後の選択について考察、検証しています。 古典部、小市民シリーズなどの感想も書いてます。

  • 『スモールワールズ』一穂ミチ 歪な家族の在りかたを描いた短編集

    本屋大賞で第3位&直木賞候補作 2021年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」に2020年~2021年にかけて掲載されていた作品を単行本化したもの。BL作品の書き手として知られていた、一穂(いちほ)ミチが、2016年の『きょうの日はさようなら』に続いて、一般層向けに上梓したのが本作『スモールワールズ』だ。 スモールワールズ 作者:一穂ミチ 講談社 Amazon 『スモールワールズ』は、2022年の本屋大賞で第3位にランクイン。また、第165回直木賞の候補作(選外に終わり、受賞したのは佐藤究の『テスカトリポカ』と澤田瞳子の『星落ちて、なお』)となり、更に第43回吉川英治文学新人賞を獲得。一穂ミチ…

  • 『イクサガミ 地』今村翔吾 明治のバトルロワイアル「蟲毒」、侍たちの最後の戦い

    「イクサガミ」の第二巻が登場! 2023年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」の2022年4月号に掲載された「壱ノ章 仏性寺弥助」に、残りの八章分を書き下ろしで追加して上梓された作品。 2022年の『イクサガミ 天』に続く、「イクサガミ」シリーズの第二巻となる。天→地と続いてきたので、次は「人」であり、これが最終巻になるのではないかと思われる。毎年一冊ペースみたいだから、『イクサガミ 人』は2024年中の発売だろうか。 表紙イラストは前巻に続いて石田スイが担当。今回は双葉? おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) バトルロワイアル系のお話が気になる方。幕末~明治前半…

  • 『近畿地方のある場所について』背筋 見つけてくださってありがとうございます。

    情報をお持ちの方はご連絡ください 2023年刊行作品。作者の背筋(せすじ)は、KADOKAWAの小説投稿サイトカクヨムを中心に活躍している作家。年齢、性別、属性などは一切公開されていない覆面作家だ。本作『近畿地方のある場所について』がデビュー作ってことでいいのかな? KADOKAWAのトピックス記事はこちら。 カクヨムではホラー小説ジャンルとしては驚異的なPV数をたたき出し、1600万PVを突破。読書好日の記事によれば10月末時点で4刷8万部を突破しているとのこと。書店でも平積みされまくっているので、ご覧になったかも多いのでは?真っ赤な表紙もインパクトがあるよね。 Webメディア発の小説は書籍…

  • 『天盆(てんぼん)』王城夕紀 盤戯の優劣で立身が決まる世界の物語

    王城夕紀のデビュー作 2014年刊行作品。王城夕紀(おうじょうゆうき)は1978年生まれ。本作の元となった「天の眷属」にてC★NOVELS大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たしている。第二作に『マレ・サカチのたったひとつの贈物』、第三作に『青の数学』シリーズがある。ここ数年は新作が出ていないので心配。 C★NOVELS大賞系の作品であるわりには、単行本版のデザインが個人的にかなーりイマイチ。ゲームとしての「天盆」に寄せた図柄なのだと思うけど、ちょっとこれは……。 天盆 作者:王城 夕紀 発売日: 2014/07/24 メディア: 単行本 中公文庫版は2017年に登場。現在手に入るのはこちら。電…

  • 『白い病』カレル・チャペック コロナ禍の今だから読みたい疫病下の世界

    疫病が蔓延する世界を描いた戯曲 『白い病(Bílá nemoc)』は、チェコスロバキア(当時)の作家カレル・チャペック(Karel Čapek)が1937年に発表した戯曲である。 岩波文庫版には2020年9月とごく最近の登場である。内容的にコロナ禍の昨今、世に送り出すには適切であると判断されたのかもしれない。 作者のカレル・チャペックは、現在のチェコ出身の作家で、この国を代表する国民的な人物である。1920年発表の戯曲『ロボット』は、現在広く使われている「ロボット」という言葉の元になったとされる。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) パンデミック(感染症)関連…

  • 『レーエンデ国物語』多崎礼 呪われた地、運命との出会い、人生を選ぶということ

    国産の骨太ハイファンタジーが登場 2023年6月刊行作品。作者の多崎礼(たさきれい)は生年非公開の小説家。デビュー作は2006年、中央公論新社主催のC★NOVELS大賞を受賞した『煌夜祭(こうやさい)』。現代ビジネスのインタビュー記事によると23歳で広告代理店を辞めて、小説家に転身とのこと。 作家として20年近いキャリアがあり、デビュー以来、ファンタジー分野での著作を数多くリリースしている。『レーエンデ国物語』が売れているので、今後は本作が代表作になってしまいそうだが、これまでの代表作を挙げるとしたら『煌夜祭』と『“本の姫”は謳う』シリーズになるだろうか。 『レーエンデ国物語』は2023年の6…

  • 『レモンと殺人鬼』くわがきあゆ 全キャラ怪しい!手に汗握る終盤の展開に注目!

    「このミステリーがすごい!」大賞文庫グランプリ受賞作 2023年刊行作品。英題は「Lemon and murderer」とわりとそのまんま。作者のくわがきあゆは1987年生まれの小説家。2021年に『焼けた釘』で、産業編集センターが公募した第8回の「暮らしの小説大賞」を受賞し作家としてのデビューを果たしている。第二作は2022年の『初めて会う人』。 本作『レモンと殺人鬼』はくわがきあゆの第三作であり、2022年の第21回「このミステリーがすごい!」大賞で文庫グランプリを受賞している。応募時タイトルは「レモンと手」。表紙イラストは人気イラストレータの雪下まゆを起用する力の入れよう。巻末の解説は書…

  • 『おまえなんかに会いたくない』乾ルカ 10年後の同窓会、スクールカーストの闇を描く

    乾ルカが描くスクールカーストモノ 2021年刊行。書下ろし作品。作者の乾ルカ(いぬいるか)は1970年生まれ。短編「夏光」(なつひかり)が、2006年の文藝春秋のオール讀物新人賞を受賞。作家デビューを果たしている。著作数は二十作を優に超えるが、恥ずかしながら初の乾ルカ作品挑戦である。 おまえなんかに会いたくない (単行本) 作者:乾 ルカ 中央公論新社 Amazon 表紙イラストは、どこかで見たことがある絵柄だなと思ったら、やはり雪下まゆが担当していた。『同志少女よ、敵を撃て!』や『六人の嘘つきな大学生』の表紙絵も担当していたし、最近書店でやたらに目にするようになった。 Wikipedia先生…

  • 『ちぎれた鎖と光の切れ端』荒木あかね 孤島に取り残された八人の男女、そして……。

    荒木あかね、乱歩賞受賞後一作目 2023年刊行作品。2022年に『此の世の果ての殺人』で最年少の江戸川乱歩賞受賞を果たした、荒木あかね待望の第二作となる。『此の世の果ての殺人』は週刊文春のミステリベストテンで第5位にランクインされるなど高い評価を受けただけに、荒木あかねの新作ともなれば、読む側としても期待が高まる。世の中的には「Z世代のアガサ・クリスティー」とまで評されてしまっているので、書き手としてはかなりプレッシャーがかかったのではないだろうか。 表紙イラストは前作同様に風海(かざみ)によるもの。井上真偽の『ぎんなみ商店街の事件簿』の表紙絵もこの方だったはず。 講談社 文芸第二出版部のX(…

  • 『夜光貝のひかり』遠藤由実子 少年と少女の出会い、南の島の光と闇

    遠藤由実子の第二作が登場 2023年刊行。書下ろし作品。作者の遠藤由実子(えんどうゆみこ)は1991年生まれの小説家。巻末のプロフィールを拝見する限り、本業は学校教員をされている模様。デビュー作は2019年の『うつせみ屋奇譚』。よって四年振りの新作であり、待望の第二作の登場ということになる。表紙絵は人気イラストレータのげみによるもの。 ちなみに版元の文研出版は、教科書で有名な啓林館(正しくは新興出版社啓林館)の持っている児童書レーベル。 また、本作は全国学校図書館協議会選定図書に選ばれている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) ボーイミーツガール系の作品がお…

  • 『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!

    綾崎隼が将棋小説に挑戦 2020年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。作家デビューは2010年。電撃小説大賞で選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)。メディアワークス文庫を中心に、二十冊以上の著作があり、キャリアも10年を超えた。着々と実績を積み上げている作家という印象である。『死にたがりの君に贈る物語』のヒットも記憶に新しい。 盤上に君はもういない 作者:綾崎 隼 KADOKAWA Amazon 『盤上に君はもういない』はKADOKAWAの文芸WEBマガジン「カドブンノベル」の2020年2月号~6月号にかけて連載されたものを加筆修正した上…

  • 『可燃物』米澤穂信 本格ミステリ×警察小説×群馬県の魅力

    2023年刊行作品。文芸春秋の刊行するエンタテイメント系小説誌「オール讀物(よみもの)」に2020年~2023年にかけて、散発的に掲載されていた作品を単行本化したもの。本作には、米澤穂信(よねざわほのぶ)作品のお約束として英題が存在する。こちらは「Combustible Substances(可燃性物質)」と、わりとそのまんま。 あらすじ 群馬県警本部、刑事部捜査第一課に所属する葛警部は、今日も県内で発生する数々の事件の捜査に明け暮れている。消えてしまった凶器(崖の下)。目撃者の証言が不思議と「一致」してしまう交通事故(ねむけ)。意図のわからないバラバラ遺体(命の恩)。容疑者が特定できない放火…

  • 『ロボット』カレル・チャペック 人によって作られた存在が反乱を起こしたら?

    作者のカレル・チャペック(Karel Čapek)は1890年生まれのチェコスロバキア人(当時)作家、劇作家。1938年没。 本作は1920年に発表され、初演は1920年。『ロボット』のタイトルで知られているが、もともとのタイトルは『R.U.R.(Rossumovi univerzální roboti)』で、岩波文庫版では「R.U.R.(エル・ウー・エル)ロッスムのユニバーサル・ロボット」と副題になっている。 岩波文庫版は1989年に登場していて、訳者は千野栄一(ちのえいいち)。 最初の日本語版は宇賀伊津緒(うがいつお)の訳で『人造人間』のタイトルで1923年に刊行されている。最近では200…

  • 『海がきこえるⅡ〜アイがあるから〜』氷室冴子 1990年代の恋愛シーンがよみがえる青春小説の佳品

    拓と里伽子にもう一度会える 1995年刊行作品。1993年に刊行された『海がきこえる』の続編である。前作の『海がきこえる』は徳間書店のアニメ情報誌「アニメージュ」の連載作品であったが、本作は書下ろし作品として上梓されている。 前作に引き続き、表紙、および、本文中のイラストは、アニメータ、イラストレータの近藤勝也(こんどうかつや)によるもの。雑誌連載ではなかったのにこれだけの数のカラーイラストが入るって凄くない? また、巻末には氷室冴子自身によるあとがきが収録されている。 海がきこえるII アイがあるから 作者:氷室 冴子 徳間書店 Amazon 徳間文庫版は1999年に登場。解説はドラマ版(後…

  • 『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』斜線堂有紀 愛する人の死が三億の価値を持つとしたら?

    斜線堂有紀の第五作品 2019年刊行作品。『私が大好きな小説家を殺すまで』に続く、斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の第五作。 個人的に『私が大好きな小説家を殺すまで』から始まる、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』、『恋に至る病』の三作を、斜線堂有紀のメディアワークス文庫三部作と呼んでいる(『キネマ探偵カレイドミステリー』のことはちょっと置いておくとして)。この三作はいずれも共依存気味の、あまり健全とは言えない男女の関係を描いた作品だ。斜線堂有紀作品の「らしさ」が出始めた作品群で、なおかつ全てクオリティも高い。斜線堂有紀の、その後の躍進に繋がる三作だったと考えている。 表紙イラストはくっか…

  • 『スイッチ 悪意の実験』潮谷験 第63回メフィスト賞受賞作品

    潮谷験のデビュー作 2021年刊行作品。作者の潮谷験(しおたにけん)は1978年生まれ。本作『スイッチ 悪意の実験』で第63回のメフィスト賞を受賞し、作家デビューを果たしている。 スイッチ 悪意の実験 作者:潮谷 験 講談社 Amazon 講談社文庫版は2023年に刊行されている。カバーデザインは全く異なるテイストに変わってしまった。 デビューから現在に至るまでの作品リストはこんな感じ。二年少々で四作だから、かなりのハイペースで書いている印象だ。 スイッチ 悪意の実験(2021年) 時空犯(2021年) エンドロール(2022年) あらゆる薔薇のために(2022年) おススメ度、こんな方におス…

  • 『数の女王』川添愛 「不思議な数の世界」のファンタジー

    言語学者が書いたファンタジー小説 2019年刊行作品。作者の川添愛(かわぞえあい)は1973年生まれの言語学者、小説家。 津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授を経て、小説家として独立。小説家としてのデビュー作は2013年の『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』である。 白と黒のとびら 作者:川添愛 東京大学出版会 Amazon おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ちょっと変わったファンタジー作品を読んでみたい方、独特の「不思議な数の世界」に触れてみたい方、王道の成長物語を読んでみたい方、数…

  • 『Q&A』恩田陸 質問と答えだけで物語が進行する不思議な作品

    謎が謎を呼ぶ奇妙な物語 2004年刊行作品。幻冬舎の文芸雑誌「星星峡」の2002年4月号から2004年3月号にかけて掲載されていた作品を単行本化したものである。 単行本版はベージュの地にタイトルと作者名のみと至ってシンプルな装丁で、一瞬どこかの高校の文芸部の作品集かと見間違えそうな程。ただ、本書には全体の2/3を占める程の4色刷りの派手な帯がついており、こちらを見ることで作品の内容がイメージしやすくなるデザインとなっている。 Q&A 作者:恩田 陸 幻冬舎 Amazon 幻冬舎文庫版は2007年に登場している。解説はつい先日、別ブログの方で紹介した『趣都の誕生』の筆者である森川嘉一郎が担当して…

  • 『山ん中の獅見朋成雄』舞城王太郎が描く異界往還譚

    ミステリの制約から解き放たれた舞城王太郎作品 2003年刊行作品。講談社の文芸誌「群像」の2003年7月号に掲載された作品を単行本化したもの。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、七作目の作品。一つ前に刊行された『阿修羅ガール』は三島由紀夫賞を受賞しており、活動のベースがミステリから、ブンガク寄りに移っていこうかという頃合いの作品である。 ちなみにタイトルの読みは「やまんなかのしみともなるお」である。 山ん中の獅見朋成雄 作者:舞城 王太郎 講談社 Amazon 講談社ノベルス版は2005年に登場。 山ん中の獅見朋成雄 (講談社ノベルス) 作者:舞城 王太郎 講談社 Amazon そして…

  • 『十戒(じっかい)』夕木春央 『方舟』はブラフじゃなかった!今回も抜群の面白さ

    夕木春央の第五作 2023年刊行作品。作者の夕木春央(ゆうきはるお)は1993年生まれのミステリ作家。 デビュー作は2019年のメフィスト賞受賞作『絞首商會(こうしゅしょうかい)』。第二作は2021年の『サーカスから来た執達吏(しったつり)』。そして、2022年には、当時のミステリ界を席巻した話題作『方舟(はこぶね)』を上梓。2023年には初の短編集である『時計泥棒と悪人たち』も刊行されている。 今回ご紹介する『十戒(じっかい)』は、そんな夕木春央の第五作品である。ちなみに「十戒」の読みは「じっかい」であって「じゅっかい」ではないので注意。 カバーデザインを見る限り『方舟』のテイストが踏襲され…

  • 『輝く断片』シオドア・スタージョン 河出の「奇想コレクション」が面白い!

    河出書房新社「奇想コレクション」中の1冊 2005年刊行。河出書房新社が刊行していた「奇想コレクション」の第六集にあたる。 「奇想コレクション」は2003年から2013年にかけて、河出書房新社が刊行していた叢書で、海外のエスエフ、ミステリ作家らによる日本オリジナルの短編集だ。全20冊。 ラインナップの詳細はWikipedia先生を参照のこと。 ちなみに、わたしは全部集めたかったのだけど残念ながら挫折した。 気になっていながらも、なかなか手に入らず(当時、古本で探してたから仕方ないのだが)、ようやく近所の書店でみかけこれも縁だと思って引き取ってきた次第。「このミス2006」海外部門第四位。「ベス…

  • 『夏の王国で目覚めない』彩坂美月 ひと夏のクローズドサークルツアー

    彩坂美月の第三作、本格ミステリ大賞の候補作 2011年刊行作品。作者の彩坂美月(あやさかみつき)は1981年生まれのミステリ作家。デビュー作は2009年の『未成年儀式』(富士見ヤングミステリー大賞に準入選、後に改稿改題の上で『少女は夏に閉ざされる』として幻冬舎文庫版が刊行)。第二作は2011年の『ひぐらしふる』。 そして本日ご紹介する『夏の王国で目覚めない』が、三作目の作品ということになる。ハヤカワ・ミステリワールドレーベルからの登場。カバーイラストはくまおり純。第12回本格ミステリ大賞の候補作にもなっている。 夏の王国で目覚めない (ハヤカワ・ミステリワールド) 作者:彩坂 美月 早川書房 …

  • 『ノワール・レヴナント』浅倉秋成 特殊能力を持つ四人の高校生が事件の謎に迫る

    浅倉秋成のデビュー作 『ノワール・レヴナント』は2012年刊行作品。講談社のライト文芸レーベル、講談社BOXが実施していた公募新人賞「講談社BOX新人賞"Powers"」の第13回受賞作。浅倉秋成(あさくらあきなり)のデビュー作だ。「講談社BOX新人賞"Powers"」は十年を経ずに終了してしまった短命の公募企画だったが、最大の功績は浅倉秋成を世に出したことかもしれない。 講談社BOX版の表紙イラストはN村雄飛が担当。その後、別名義である中村ゆうひの筆名で、『フラッガーの方程式』や『失恋覚悟のラウンドアバウト(文庫版タイトルは『失恋の準備をお願いします』)』の表紙イラストも手掛けている。 ノワ…

  • グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女3』円城寺忍 三か月連続刊行の最終巻。マリウスの秘密が明らかに!

    グインサーガ外伝、三か月連続刊行の三冊目! 2023年5月刊行作品。同年3月に『サリア遊郭の聖女1』、4月に『サリア遊郭の聖女2』と続いてきた連続刊行も遂にラスト!いよいよ完結編の登場だ。栗本薫の死後、グイン・サーガ外伝は何人かの作家が手掛けているが、本作の執筆は円城寺忍(えんじょうじしのぶ)が担当している。2014年のグインサーガ外伝26巻『黄金の盾』以来の二作目ってことになるのかな。 『サリア遊郭の聖女1』の正ヒロインのジャスミン・リー、『サリア遊郭の聖女2』は主人公であるマリウス、そして『サリア遊郭の聖女3』では第二ヒロインであるワン・イェン・リェンが表紙絵に描かれていて、三冊を連結する…

  • 『推し、燃ゆ』宇佐美りん 第164回(2020年度下半期)芥川賞受賞作品

    宇佐美りんの第二作 2020年刊行作品。『文藝』秋季号(2020年7月号)に発表された作品を書籍化したもの。第164回(2020年度下半期)の芥川賞受賞作品である。 筆者の宇佐美りんは1999年生まれ。2019年のデビュー作『かか』でいきなり文藝賞、更に三島由紀夫賞を史上最年少で受賞。そして、二作目の『推し、燃ゆ』で、早くも芥川賞を受賞。これは、綿矢りさ(当時19歳)、金原ひとみ(当時20歳)の受賞に次ぐ若さである。 推し、燃ゆ 作者:宇佐見りん 河出書房新社 Amazon 2021年の2月25日時点で47万部を突破(スゴイ!)。純文学界における、久しぶりの大型新人の登場である。 河出文庫版は…

  • 『イクサガミ 天』今村翔吾 刀の時代の終焉、明治のバトルロワイアル開幕

    今村翔吾の書下ろし伝奇バトルアクションの第一弾 2022年刊行作品。文庫書下ろし。作者の今村翔吾(いまむらしょうご)は1984年生まれの歴史小説、時代小説作家。2020年『八本目の槍』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』で回山田風太郎賞を受賞。そして2022年に『塞王の楯』で直木賞を受賞している。 表紙イラストは『東京喰種トーキョーグール』で知られる、マンガ家の石田スイが手掛けている。 タイトルに「天」とあり、続巻として『イクサガミ 地』が2023年に刊行済み。よって、最終巻は『イクサガミ 人』となるのでは予想される。タイミング的には2024年中には発売される感じかな? しかしながら、…

  • 『サマー/タイム/トラベラー』新城カズマ 夏に読みたい青春エスエフ小説

    夏に読みたい時間モノ 2005年刊行作品。第37回星雲賞日本長編の部の受賞作である。作者の新城(しんじょう)カズマは1991年から富士見ファンタジア文庫で上梓された『蓬莱学園』シリーズがデビュー作(懐かしい)。 本作は、タイトルの通り「夏」に読んでおきたい一作。表紙イラストの鶴田謙二が雰囲気出ていて素晴らしい。 なお、タイトルは「サマータイムトラベラー」ではなくて「サマー/タイム/トラベラー」が正しい表記である。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 表紙絵が気になる。タイトルを見てピンと来た方。時間モノのエスエフ作品が好きな方、夏+地方都市+青春小説、この組み…

  • 『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光 電子書籍では味わえない至福の読書体験がここに!

    20万部突破の大ヒット作に! 作者の杉井光(すぎいひかる)は1978年生まれ。デビュー作は2006年の『火目の巫女(ひめのみこ)』。第二作の『神様のメモ帳』はアニメ化もされて、シリーズ累計100万部を超える大ヒット作に。第三作の『さよならピアノソナタ』もシリーズ累計30万部超のヒット作。 杉井光というと、どうしても初期の二作品を代表作として挙げたくなってしまうのだが、デビューから十数年を経て、新たに「代表作」となっていきそうな作品が登場した。それが本作『世界でいちばん透きとおった物語』だ。 本作は新潮文庫NEXへの書下ろし作品。2023年5月に刊行され、その後わずか二か月半で20万部を超える大…

  • 『ピエタ』大島真寿美 追憶、ありえたかもしれない未来、そして人生は続く

    2012年の本屋大賞第三位 2011年刊行作品。作者の大島真寿美(おおしまますみ)は1962年生まれ。1992年に「春の手品師」で文學界新人賞を受賞。同年、すばる文学賞最終候補となった『宙の家』がデビュー作。キャリアの長い作家だが、俄然注目を浴びたのが、2012年の第9回本屋大賞で三位を取った本作である。 その後、2014年の『あなたの本当の人生は』が直木賞候補作に、そして、記憶に新しいところでは2019年の『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』ではとうとう直木賞を取ってしまった。この十年での躍進が著しい感があるが、その契機となったのが本作『ピエタ』なのではないかと個人的には考えている。 ピエタ 作者…

  • 『アンデッドガール・マーダーファルス3』青崎有吾 人狼の里で起きた連続殺人事件の謎

    「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの三作目 2021年刊行作品。『アンデッドガール・マーダーファルス1』『アンデッドガール・マーダーファルス2』続く、青崎有吾(あおさきゆうご)による「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの第三作になる。前作が2016年刊だったので、なんと五年振りのシリーズ続巻で、初期から追いかけてきた方はビックリしたのでは?普通、五年も新刊が出なかったらシリーズ終わったと思うよね。 表紙イラストを描いているのは今回も大暮維人(おおぐれいと)。一巻の頃とタッチが全然変わってるけど、五年も経過しているのだし仕方がないか……。登場しているのは鳥籠使いの三人?とな…

  • 『バガージマヌパナス』池上永一 わたしたちの島の話

    第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作 1994年刊行作品。池上永一(いけがみえいいち)のデビュー作にして、第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作である。ちなみに同時に大賞を受賞したのが銀林みのるの怪作『鉄塔 武蔵野線』なのだった。この年は当たり年だったんだね。 バガージマヌパナス 作者:池上 永一 新潮社 Amazon 池上永一はこの後『風車祭(カジマヤー)』が直木賞候補作品に。そして『復活、へび女』(後に『あたしのマブイ見ませんでしたか』に改題)、『レキオス』『シャングリ・ラ』『テンペスト』『ヒストリア』と良作を定期的に世に送り出している。もうキャリア二十年を超えているんだね。 本作の文庫…

  • 『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる 少年時代の冒険行、そして鉄塔への情熱

    第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作 1994年刊行作品。作者の銀林(ぎんばやし)みのるは1960年生まれ。本作がデビュー作となる。第6回の日本ファンタジーノベル大賞の受賞作として上梓された。ちなみに、同じくこの年の日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品が池上永一の『バガージマヌパナス』であり、候補作であったのが高野史緒の『ムジカ・マキーナ』だった。 鉄塔武蔵野線 作者:銀林 みのる 新潮社 Amazon 新潮文庫版は1997年5月に刊行されている。同年6月に映画版(後述)が上映された。 鉄塔 武蔵野線 (新潮文庫) 作者:銀林 みのる 新潮社 Amazon その後、十年の空白期間を経て、…

  • 『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』葵遼太 名作だからみんな読んで!

    葵遼太のオリジナル第一作! 2020年刊行作品。作者の葵遼太(あおいりょうた)は1986年生まれ。 デビュー作は、太宰治の『人間失格』をベースにしたSFアニメ映画『HUMAN LOST』のノベライズ版である(原案は冲方丁だ)。 HUMAN LOST 人間失格 ノベライズ(新潮文庫nex) 作者:葵遼太,冲方丁,MAGNET/スロウカーブ 新潮社 Amazon 『処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな』(←タイトル長い!)は、葵遼太としては初のオリジナル作品ということになる。 この作品を出してから新作が出ておらず、個人的にはかなーり哀しい。 タイトル名の英題は「Nobo…

  • 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー 人類の存亡をかけてミッションインポッシブルに挑んだ男

    2021年を代表するエスエフ作品 オリジナルの米国版は2021年5月の刊行で、原題は『Project Hail Mary』とそのまんま。邦訳版は同年12月に刊行されている。一年を経ずにリリースされるとは早川書房も仕事が早い!訳者は小野田和子(おのだかずこ)。カバーイラストは鷲尾直広(わしおなおひろ)が担当している。 作者のアンディ・ウィアー(Andy Weir)は1972年生まれのアメリカ人エスエフ作家。代表作は2015年刊行で、映画化もされた『火星の人』になるだろうか。 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、第53回星雲賞で海外長編部門を受賞。早川書房による『SFが読みたい!』ベストSFラン…

  • 『塩の街』有川浩(ひろ)のデビュー作と終末モノのお作法

    有川浩(ひろ)のデビュー作は 電撃ゲーム小説大賞受賞作品 2004年刊行。第10回電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作品。今をときめく有川浩(ひろ)のデビュー作である。現在は「有川ひろ」名義で活動されているのだが、本稿では刊行当時の名義「有川浩」にて記載させていただく。 実は刊行当時、イラストが微妙に好みに合わず、評判の良さは聞きながらも手を出すのを躊躇っていた作品なのである。しかしながら第二作である『空の中』の世間的評価が、本作よりも更に高かったので、このタイミングで二冊まとめて購入してしまった次第。 ちなみに『塩の街』には三つのバージョンが存在する。 最初は電撃文庫版である。電撃ゲーム小説大賞の…

  • グイン・サーガ外伝28巻『サリア遊郭の聖女2』円城寺忍 三か月連続刊行の二冊目!

    グインサーガ外伝、三か月連続刊行の二冊目! 2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては28冊目。書き手はグインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』でデビューした円城寺忍(えんじょうじしのぶ)である。 前作のグイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女1』の続篇で、全三巻構成となっている。次巻の『サリア遊郭の聖女3』で完結となる。 あらすじ ゴーラ三国のひとつクム。快楽の都タイスを訪れたマリウスは、西の廓、サリア遊郭で見習いの遊女ワン・イェン・リェンに出会う。彼女を助けたことから、最高遊女のジャスミン・リーとの知遇を得たマリウスは、この地で頻発する見習いの遊女の連続失踪事件に巻き込まれていく。事件の背…

  • 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 六つの告発文×密室の心理戦が熱い!

    浅倉秋成はこれで大ブレイク! 2021年刊行作品。『ノワール・レヴナント』『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト(失恋の準備をお願いします)』『教室が、ひとりになるまで』『九度目の十八歳を迎えた君と』に続く浅倉秋成(あさくらあきなり)の第六作である。 表紙イラストは人気イラストレータの雪下まゆが担当している。 六人の嘘つきな大学生 作者:浅倉 秋成 KADOKAWA Amazon 角川文庫版は2023年に登場。巻末収録の解説文は書評家、ライターの瀧井朝世(たきいあさよ)が担当している。 音声朗読のオーディブル版は2022年5月に登場。ナレーションは声優の木村良平が担当している。30…

  • 『白の闇』ジョセ・サラマーゴ ノーベル賞作家が描く視力を奪う感染症の恐怖

    ノーベル文学賞受賞者が描く感染症小説 筆者のジョセ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago)は1922年ポルトガル生まれの作家。1998年にはノーベル文学賞を受賞。2010年に87歳で没している。 『白の闇』のオリジナル版は1995年刊。原題は『Ensaio sobre a cegueira』。日本では2001年に最初の版が日本放送出版協会より登場。 白の闇 作者:ジョゼ サラマーゴ 日本放送出版協会 Amazon 2008年にソフトカバー版の新装版が刊行されている。 白の闇 新装版 作者:ジョゼ・サラマーゴ 日本放送出版協会 Amazon そして上記の新装版を底本として、2…

  • 『王朝奇談集』須永朝彦・編訳 むきだしの「怪異」がただそこにある!

    須永朝彦の没後に刊行された作品集 2022年刊行作品。編者の須永朝彦(すながあさひこ)は1946年生まれの歌人、作家、評論家。2021年に物故されている。表紙絵に使われているのは、酒井抱一の「秋草鶉図」。 巻末に収録されている金沢英之(かなざわひでゆき)の解説によると、まず1995年~96年にかけて国書刊行会から発売された須永朝彦編・訳の『日本古典文学幻想コレクション』全三巻があった。これをベースに、まず江戸時代の作品を集めた『江戸奇談怪談集』が2012年にリリースされた。 江戸奇談怪談集 (ちくま学芸文庫) 筑摩書房 Amazon これと対になる、平安・鎌倉期の作品を対象とした書籍の刊行が模…

  • 『やさしさを忘れぬうちに』川口俊和 累計140万部突破「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの第五弾!

    「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目! 2023年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』『さよならも言えないうちに』に続く、「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目に相当する。前作は2021年刊だったので、今回は二年のインターバルで新作が出てきた計算になる。思っていたより早かったね。 「コーヒーが冷めないうちに」シリーズは2021年のサンマーク出版のリリースによると、国内でシリーズ累計140万部を突破しているとのこと。このリリースによると「映像化オプション権をハリウッドスタジオと締結」とあるのだけれど、その後音沙汰ないよね。どうな…

  • 『アース・ガード ローカル惑星防衛記』「小川一水」としてのデビュー作

    「小川一水」名義で書かれた最初の作品 1998年刊行作品。1996年に第6回ジャンプ小説大賞で大賞を受賞した、河出智紀名義の『まずは一報ポプラパレスより』に続く二作目の作品である。 本作から筆名が小川一水(おがわいっすい)に変わっている。つまり小川一水名義で刊行されたのは本作が最初の作品ということになる。 『強救戦艦メデューシン』や『ハイウィング・ストロール』など、小川一水の初期作品は、その多くがソノラマ文庫から世に出ているが、本作はその最初の一冊でもある。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ドタバタアクション系の作品がお好きな方。デビュー当時の小川一水作品を…

  • 『黒と茶の幻想』恩田陸 美しい謎と非日常の島、そして旅路の果て

    恩田陸作品最長クラスの長編 講談社のミステリ雑誌「メフィスト」の、2000年5月号~2001年9月号に連載されていた作品を単行本化したもの。本作は『三月は深き紅の淵を』の系譜に連なる作品の一つで、その第一章「待っている人々」の中で言及されている。本作に対してもっとも的確なコメントは実はこれなのかもしれない。 黒と茶の幻想 (Mephisto club) 作者:恩田 陸 講談社 Amazon 講談社文庫版は、さすがに一冊では長いと判断されたのか、上下巻に分冊された。カバーデザインも単行本版からは一新されている。解説は作家の川端裕人が担当している。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★…

  • 『ノッキンオン・ロックドドア2』青崎有吾 御殿場倒理と片無氷雨、二人の過去が明らかに

    ノッキンオン・ロックドドアシリーズの二作目 2019年刊行作品。徳間書店の小説誌「読楽(どくらく)」に2017年~2019年にかけて掲載されていた作品と、ネット掲載されていた作品、更に書下ろし一編を加えて単行本化したもの。『ノッキンオン・ロックドドア』に続く、シリーズ第二弾である。表紙イラストは前巻同様に、有坂あこが担当している。 ノッキンオン・ロックドドア2 (文芸書) 作者:青崎有吾 徳間書店 Amazon 徳間文庫版は2022年に刊行されている。解説はミステリ作家の東川篤哉(ひがしがわとくや)が書いている。 ちなみに表紙に登場しているクルマは日産の懐かしの名車パオ。 日産・パオ - Wi…

  • 『どうかこの声が、あなたに届きますように』浅葉なつ 声は届く。あなたに届く。 

    第一回「読者による文学賞」受賞作 2019年刊行作品。作者の浅葉(あさば)なつは『空をサカナが泳ぐ頃』が、第17回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞して作家デビューを果たしている。代表作は累計150万部を超えた『神様の御用人』シリーズであろう。 なお、『どうかこの声が、あなたに届きますように』は第一回の「読者による文学賞」を受賞している。 また、著者インタビューが文春のHPに載っていたのでリンクしておく。 既に締め切りを過ぎてしまっているが、発売当初はTwitterの感想ツィートで、オリジナルのマスクケースがもらえるキャンペーンを実施していた模様。えー、欲しかったこれ。いまなら、売って…

  • 『ライオンハート』恩田陸 時空を超えて何度も廻り逢う男女の物語

    20世紀最後に刊行された恩田陸作品 新潮社の小説誌『小説新潮』に1990年~2000年にかけて掲載された、五編の作品をまとめたもの。奇しくも連載中にSMAPの「らいおんハート」発売されているが、関係はない。 単行本版は2000年12月に刊行された。個人的には20世紀の最後の大晦日から、21世紀最初の元旦にかけて読み切ったということで、とりわけ印象深い一冊である。この作品も世に出てから既に20年を経てしまったのかと思うとなんとも感慨深い。 ライオンハート 作者:恩田 陸 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2004年に登場している。解説は梶尾真治。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★…

  • 『リカーシブル』米澤穂信 崩壊していく家族と残された絆

    米澤穂信、二年ぶりの長編作品(当時) 2013年刊行作品。『小説新潮』に2011年12月号から2012年8月号に連載されていた作品を単行本化したもの。 「週刊文春ミステリーベスト10」2013年で第18位、「このミステリーがすごい!」2014年および「本格ミステリ・ベスト10」2014年版で第10位、「ミステリが読みたい!」2014年版で第15位にランクインしている。 リカーシブル 作者:米澤 穂信 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2015年に登場している。カバーの雰囲気がガラッと変わった。 単行本版の帯がひどかった こちらは単行本版の帯だが、これがちょっとひどい。 「リカーシブル」単行本版…

  • 『向日葵を手折る』彩坂美月 少女の四年間の成長物語

    少女たちの四年間を綴った物語 2020年刊行作品。タイトルの読みは「ひまわりをたおる」。彩坂美月(あやかさかみつき)としては九作目の作品となる。 実業之日本社の文芸誌「紡」の2013年autumn号、2013年winter号、2014年spring号、2014年summer号に連載されていた作品を、大幅に加筆修正した上で単行本化したもの。連載から書籍化までずいぶん時間が経過しているようだが、掲載誌である「紡」が休刊になってしまったことと関係があるのかな?ともあれ、書籍化されて、世に出たのは良かった。 向日葵が咲き乱れる印象的な表紙イラストは、しまざきジョゼによるもの。 向日葵を手折る 作者:彩…

  • 『竜の姫ブリュンヒルド』東崎惟子 『竜殺しのブリュンヒルド』の第二部が登場

    ブリュンヒルド の物語「第二部」 2022年刊行作品。デビュー作であった『竜殺しのブリュンヒルド』に続く、東崎惟子(あがりざきゆいこ)の第二作。タイトルから予想がつくけれども「竜殺しのブリュンヒルド 」シリーズの二作目でもある。前作に引き続き、イラストはあおあそが担当している。 ラノベニュースオンラインにインタビュー記事があったのでリンク。『竜殺しのブリュンヒルド』の内容も踏まえた内容なのでその点はご注意を。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 東崎惟子の『竜殺しのブリュンヒルド』を読んで、世界観にハマった方。関連作品を読んでみたいと思っている方。国産のファンタ…

  • 『アンデッドガール・マーダーファルス2』青崎有吾 ルパンにホームズ、著名キャラ勢揃いのバトルロワイアルが楽しい!

    「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの二作目 2016年刊行作品。前年に刊行された『アンデッドガール・マーダーファルス1』の続篇となる。青崎有吾(あおさきゆうご)による「アンデッドガール・マーダーファルス」シリーズの第二作だ。 表紙イラストは今回も大暮維人(おおぐれいと)が担当。描かれているのは馳井静句(はせいしずく)。スペンサー銃と日本刀が合体した、彼女のオリジナル武器「絶景(たちかげ)」のビジュアルが判るのもありがたい。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) シャーロック・ホームズやアルセーヌ・ルパンが好き!その後のモリアーティ教授が気になる方。切り…

  • 『廃帝綺譚』宇月原晴明 順帝、建文帝、崇禎帝、そして後鳥羽院の物語

    『安徳天皇漂海記』とあわせて読みたい 2007年刊行作品。宇月原晴明(うつきばらはるあき)としては六作目の作品にあたる。ミルキィ・イソベの表紙デザインが美しい。 廃帝綺譚 作者:宇月原 晴明 中央公論新社 Amazon タイトルや表紙デザインから想像がつく方もおられるかもしれないが、本作は2006年に上梓された『安徳天皇漂海記』の姉妹編とも言える作品である。本作は単独でも十分堪能できるが、出来うることなら『安徳天皇漂海記』を読んでから臨まれることをお勧めしたい。 中公文庫版は2010年に刊行されている。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★★(最大★5つ) 王朝の最期に興味があ…

  • 『少女七竃と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹 大人になってから読むと身につまされる作品

    一般文芸の世界で輝き始めた頃の桜庭一樹作品 桜庭一樹(さくらばかずき)は1971年生まれの女性作家。1990年代に山田桜丸(やまださくらまる)名義で、ライター、ノベライズ作家、ゲームシナリオ作家として活躍。1999年に『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーティアン』(応募時タイトルは「夜空に、満天の星」)が、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門で佳作入選し、現在の筆名での作家活動を開始している。 『少女七竃(ななかまど)と七人の可愛そうな大人』は2006年刊行作品。角川の小説誌『野性時代』に2005年10月~2007年2月にかけて、掲載された作品をまとめたもの。 桜庭一樹はデビューしてから…

  • 『ノッキンオン・ロックドドア』青崎有吾 不可能専門&不可解専門、個性の異なる二人の探偵が謎を解く

    ノッキンオン・ロックドドアシリーズの一作目 2016年刊行作品。徳間書店の小説誌「読楽(どくらく)」に2014年~2015年にかけて掲載されていた作品に、書下ろし一編を加えて単行本化したもの。青崎有吾(あおさきゆうご)のシリーズものとしては、裏染天馬シリーズ、アンデッドガール・マーダーファルスシリーズに続く、第三のシリーズになる。ちなみに英語タイトルは『 KNOCKIN'ON LOCKED DOOR』(そのまんまだ)。 表紙イラストは有坂(ありさか)あこによるもの。 ノッキンオン・ロックドドア (文芸書) 作者:有吾, 青崎 徳間書店 Amazon 徳間文庫版は2019年に刊行されている。解説…

  • 『忘れないと誓ったぼくがいた』平山瑞穂の第二作は切なさあふれる恋愛小説

    平山瑞穂の第二作品 2006年刊行作品。『ラス・マンチャス通信』の平山瑞穂(ひらやまみずほ)が、ファンタジーノベル大賞受賞後一年半の期間を経て上梓した二作目が本書である。 忘れないと誓ったぼくがいた 作者:平山 瑞穂 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2008年に登場している。 不条理な運命に引き裂かれていく恋人たち。抗いがたい何ものかに対して、懸命に立ち向かおうとする主人公。その心の葛藤を描いた恋愛小説。前作が前作だっただけに、あまりに正統派かつ清らかな交際に終始する感動系メロドラマでたじろぐ。平山瑞穂よ、どうしてしまったんだ。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5…

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