「幽霊の自筆(田中貢太郎)」他二篇/恐ろしくも人間味のある怪
先日、葉山嘉樹の『死屍を食う男』を紹介した際、田中貢太郎の同様の作品について触れたのですが、以来田中貢太郎に興味を持ち始め、青空文庫に収録されている多数の作品を雑読していました。その中から見つけた好きな短編を三つほど紹介したいと思います。 「幽霊の自筆」 「庭の怪」 「猫の踊」 「幽霊の自筆」 www.aozora.gr.jp ある初夏の晩、船上で船頭が冗談話を若い漕ぎ手に聞かせていると、突然、雲霧のような影が、船のそばへ下りてきました。影の中には蒼白な男の顔が。聞くと男は大しけで乗組員と共に死んでしまったのだそう。国許に知らせるため証拠として手紙を書くと消えてしまった男。男の頼み通り手紙を持…
2020/09/05 18:00