【家族の話】散歩中の会話①
父との海岸堤防散歩は、私が中学生から25歳で独り暮らしを始めるまで続いた。続いたといっても、そう都合が合うものでもなく、回数でいったら20回程度だろう。 私は普段はおしゃべり好きだけれど、父とはほとんど会話をしない。何もしゃべらないのが心地いいのだ。 父に起こされて、車に乗って、海を見ながら散歩して、また車に乗って家に帰るまで、基本的には必要最低限の会話のみだ。 だからこそ、父との数少ない貴重な会話は、よく覚えている。 春、海を見ながら歩いていると、テトラポッドのすぐ先を魚の大群がグイグイ泳いでいるのが見えた。父に聞くと、それがボラになる一歩手前の魚だと教えてくれた。 「ボラは、稚魚をオボコっ…
2020/10/31 16:07