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わた☆あめ 脳内読書会 https://wataamebook.hatenablog.com/

会話形式で本の感想を綴っています。あまり長くならず、楽しく本を紹介できるよう試行錯誤中です。 あるある、こういう読書傾向ね~とひっそり共感してもらえると嬉しいです。

わたあめ
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2019/12/24

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  • 路上にはみだす植物愛。みんな、見て行ってー。:『たのしい路上園芸観察』

    散歩をしていると思い思いに工夫を凝らした園芸成果を見かける。ご本人はけっして奇をてらっているのではないと思うのだけど、何とも言えない「いい感じ」でほれぼれして写真をパチリ。 こんな楽しいことは散歩をしないと忘れてしまう。世話をする人が増えて、自分が住む場所のまわりばかり歩くようになって、それも散歩とも言えない、用事と用事をつなぐだけ。 けれど、この本の存在を知って、あったなぁ、こんな路上、と思い出した。ほれぼれとする、この細々とした工夫と、愛。広い庭を高度な知識と技術で整えるのではなく、小さな植木鉢、自分の土地と公けの土地の小さな境目でおそらくふっと思いついたその場限りの工夫。植木鉢にプラスチ…

  • お前たちは道具がなければこの山を登れないのか? と平安時代のファーストクライマーは言った:『剱岳 線の記』

    明治時代、日本国土の測量を推進するために、当時未踏峰だった北アルプスの剱岳に挑んだ日本陸軍の測量部・柴崎隊。彼らが山頂に辿り着くと、そこには古代の仏具が置かれていた。新田次郎の『劒岳〈点の記〉』にも出てくる有名なエピソードだ。著者はこの仏具を置いたのは誰なのか、現代の装備でも登頂するのが難しい剱岳をどのルートを使ってどのように登ったのか、という謎を探っていく。 『ロビンソン・クルーソーを探して』もそうだったけれど、著者はひたすら文献に当たり、関係者をひとりひとり尋ねて疑問をぶつける。場所にも可能であれば何度も足を運ぶ。愚直なまでに自分と歴史の対話を続ける。 とにかく人に会い続け、関係が感じられ…

  • 本を断捨離すると「自分」が見えてくる

    自分の部屋が欲しいという長男に急き立てられ、親二人は本の断捨離中。 何度か本の整理はしているけれど、今回は思い切って「読んでいない積読本」も処分した。 トルストイ『戦争と平和』(一度読んだ)、『復活』(積読)、ドストエフスキー『白痴』(挫折)、スタンダール『赤と黒』(挫折)、フローベール『感情教育』(積読)、バルザック『従妹ベット』(積読)・・・等々。三島由紀夫も『花ざかりの森・憂国』、『宴のあと』以外は処分。 いつかは読みたいと思っていた教養本の数々。さようなら・・・。 そして手元に置いておきたい本たち。飯田譲治『NIGHT HEAD』、銀色夏生『つれづれノート』(途中まで)。いわゆる名作で…

  • 元禄時代の人々は綱吉と浅野内匠頭という二人の荒人神を一方は仇討ちで慰め、もう一方は歌舞伎で呪詛していた:『忠臣蔵とは何か』

    すっかり歌舞伎という芸能が縁遠くなってしまったので、昔の人々が歌舞伎をどのように観ていたのか実感するのは難しい。しかし今でいうテレビのような影響力があったと想像します。 この「忠臣蔵」という名称も歌舞伎・浄瑠璃の演目『仮名手本忠臣蔵』から来ているとのこと。歴史上は「赤穂事件」というそうです。 そもそもなぜ「蔵」とつくのか? 歌舞伎は言葉遊びや故事のパロディなどが盛り込まれていて知識がないとピンとくるのは難しい。浪士たちの討ち入り衣装である火消し装束も歌舞伎の舞台からきていて、実際は思い思いの服装で討ち入りしたそうです。 というのも、切腹した浅野内匠頭の祖父・これもまた浅野内匠頭ですが、彼は火消…

  • 人事制度を変える前に読んで欲しい:『日本社会のしくみ』

    私が勤めていた会社は大手と言われる電気機器メーカーで、職場は現場寄りの部署だった。もう実際の製造は行っていなかったけれど、部門の人たちは製造の現場で物を作ってきた人ばかり。 だからこの本に出てくる日本の労働者の姿がとてもリアルに想像できる。物を製造していた会社が時代に合わせて変容していくさま、そうした中で現場労働者だった彼らの立場がどのようなものになっていったか。大学出の若い技術者に軽くあしらわれたり、パソコンの操作に四苦八苦したり。扶養給は廃止され、自らの生産性と賃金を常に厳しく天秤にかけられる。戦争時代の厚生年金の加入状況を問い合わせてきた人もいた。大企業に入れば定年まで安泰なんて言われた…

  • 最後の秘境は個人の物語の中に:『ロビンソン・クルーソーを探して』

    著者は「物語を旅する」探検家。ほかに浦島太郎や、平安時代に剱岳に登った人物についての本を書かれている。どれも面白そうだ。 無人島サバイバルの元祖・ロビンソン・クルーソーには実在のモデルがいたらしい。その人、アレクサンダー・セルカークは18世紀のスコットランド人。ロビンソン・クルーソーは有名だが、セルカーク自身は忘れられた存在で多くの資料は散逸している。著者は故郷のスコットランドの片田舎からチリのロビンソン・クルーソー島までセルカークの軌跡を辿る旅をするのだが、すでに忘れらた人物なので、あると思った資料がなかったり聞きたいことが聞けずに無駄骨を折ったり。著者が満足した答えを得てるまで10年の年月…

  • チマチョゴリを着た虎は片膝を立てて美しく座る:『百年佳約』

    主人公の百婆は渡来人。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に朝鮮から連れてこられた陶工たちの一人で、大きな窯元の女主人だ。 前作の『龍秘御天歌』では龍窯の主人・十兵衛の葬式を巡って、朝鮮式の葬式で送り出したい妻の百婆と日本社会での足場をさらに固めるため日本式の葬式を出したい息子の十蔵の駆け引きが描かれた。朝鮮の家庭では子供にとって親は絶対の存在なので母親の意向に背くことなど本来は許されないのだが、窯を継いだ十蔵はこれからの将来のことを考えなければならず、虎のように恐ろしい母親に一歩も引くことはない。なんせ朝鮮の父と母は「憤死」「卒倒」という「脅しの手」があり、ここぞという時に額に青筋を立て息子を震え上がらせ…

  • 『誰が袖屏風』って知ってますか:ART in LIFE, LIFE and BEAUTY展(サントリー美術館)

    サントリー美術館『ART in LIFE, LIFE and BEAUTY展』に行ってきました。 ここで初めて『誰が袖屏風』というものを知りました。 (画像はサントリー美術館よりお借りしました) www.suntory.co.jp 「誰が袖」とは古今集の「色よりも香こそあはれとおもほゆれ誰が袖ふれし宿の梅そも」という歌からきているそうですが、誰もいない空間に誰かが脱いでかけたであろう衣や装飾品がかけられているという図案です。 この図案はこの屏風のみではなくてひとつの絵の形式(ジャンル)になっているそうです。 この「不在を愛でる」という感覚、昔の人も持っていたんですね。 現代の人が廃墟を愛でたり…

  • 「資格」ではなく「場」の共有によるタテ社会--そうした社会であれば日本でなくても同調圧力や自粛警察は生まれる:『タテ社会の人間関係』

    社会を成り立たせる構造として「資格」による社会と「場」による社会があるそうです。 資格による社会は横(同業者)のつながりが強く資格によって集団を移動することができます。一方、場による社会は目に見える枠がないため、実質は烏合の衆です。組織を保つためにはその内部で結束を強化する必要があります。そのため構成員の相互接触が高まり、エモーショナルな関係が重視されます。 いう間でもないことですが、日本は後者の場による社会です。資格と言った明確な基準がないため、絶えず「ウチ」「ヨソ」を意識。そうしないとずるずると枠がほどけ、社会構造は溶解してしまいます。場による社会というのは日本に限ったものではないようです…

  • 日本も橋本さんも揺れに揺れた:『橋本治という立ち止まり方』

    2010年、橋本治さんは顕微鏡的多発血管炎という難病で入院します。当初は一ヶ月ほどで済むと思われていた入院は、結局四カ月にも及びました。自分もじーさんだけど病院はじーさん・ばーさんばかり、と好奇心をもって病院生活を送った橋本さんですが、やはり四カ月もの入院生活で体力が落ちたようで、退院後の文章はどこか元気がない。自分でもがっくりきて自信喪失というか、ぐらぐらしている感じが伝わってきます。 そんな中で東日本大震災が起こり、体力がないと驚いたり不安になったりすることもできない、と橋本さんは書いています。この本の最終章は2011年に書かれたエッセイですが、橋本さんにしては珍しく、政治に対しての怒りを…

  • やっぱり福沢諭吉は偉かった:『国家を考えてみよう』

    よく理解できないことがあって迷っている時、つい橋本治さんの本を手に取ってしまいます。(もう新作が読めないとは本当に残念です)読むと「すっきり」することはなく、橋本さん特有の語り口であっちへやられこっちへやられ、読み終わった時には「どういうこと?」と思うのですが、「すっきりすることは危険だよ」ということなのかもしれません。 橋本さんの『双調平家物語』は中断をはさみながら何年も読んでいますが、平家物語なのに中国の王朝から物語が始まるのには驚きました。でも読んでいくと日本の王朝がどういった性質のものなのか中国との対比で浮き彫りになり理解が深まるように感じます。 この本も「『考える』ってあるけど、きっ…

  • 「おろんくち」、「がらんど」、「まだ息がある」---。 認知症の老婆が夕方になると口にする言葉。その言葉を辿っていくと、一本の恐ろしい木に辿り着いた:『フォークロアの鍵』

    旅は紙の上に書いた計画通りには行かない。いくら綿密に計画しても当日の体調や気候によって計画は結構変わってしまう。人の記憶も紙に書かれたような「順序立って分かりやすいもの」にはならない。話し手が「あれ、おかしいなぁ」と口にしながら話す記憶の方が、その「おかしいなぁ」という感覚を含めて「記憶していることだ」と感じる。 この物語は認知症を患っている老人たちが暮らすホームが舞台。口頭伝承を研究する民俗学者の卵・千夏は自身の研究のためにホームでの聞き取りを始めた。ある夕暮れ、「くノ一」とあだ名される美しい老女・ルリ子が口にした「むかし、むかし、あるところに」という呟きを偶然、耳にする。彼女は意思の疎通が…

  • 日本人は「得か、損か」で動く:『(日本人)』

    どこか日本人離れをしている著者が日本人について考察した本。きっかけは、やはり東日本大震災。あの出来事の後、様々な日本人像が論じられた。それを一文で言うと「日本の被災者は世界を感動させ、日本の政府は国民を絶望させた」と著者は言う。ここに全く異なる二種類の日本人がいると。 日本がなぜこのような社会になっているのか、なぜこのような意思決定をするのか、とても気になって色々な本を読んでいるが、その中で気付いたことは「日本的といわれていることは東アジア、東南アジアでは共通的な振る舞いである」ということ。農耕社会は退出不可の社会で、共同体内での不満を抑え社会の安定を図るに意思決定は員一致の妥協の結果。例えば…

  • オーストラリアで生きることを選んだ少年はMasatoからMattになった:『Matt』

    『Masato』の続編が『Matt』であると知って「真人、オーストラリアでうまくやっているんだな」と嬉しかった。前作『Masato』ではオーストラリアで脱サラして新たに商売をするという父親と共にオーストラリアに残ることを選んだ真人。オーストラリアを、英語を選んだ真人に母親は「この国にあなたをとられた」と泣き日本へ帰る。その母親から「まあくん」と呼ばれていた真人は今では自らMattと名乗るようになっている。真人がオーストラリアに残ることを選んだのは父親の肩を持ったわけではもちろんなくて、オーストラリアの文化、そこで出会った人々、特に友人達と離れがたく日本ではなくオーストラリアで中学へ進むことを選…

  • 漱石への愛が、すごい:『日本語が亡びるとき:英語の世紀の中で』

    英語圏に一年半ほど暮らしたので英語は世界共通言語である前に暮らす場所の言葉で、しかし英語がこれほどにも世界共通言語でなければ、いずれ母国に帰る短期滞在者にすぎない自分が日々これほどまでに「英語を習得しなければ」という焦燥を感じることはなかっただろう。例えば思いもかけず期間限定でフランスに暮らすことになったとして、フランス語ができずにその滞在が終わっても、そんなに気にしないんではないか。もちろんちょっとでも話せるようになれば素敵だけれども、それはいわば「お土産」のようなもので、だけど英語はそんな「お土産」のようには思えない。もうアングロ・サクソンだけの言語を超えてる。 英語が母国語の人はこの英語…

  • 中学校に通い続けることが致命的に危険と判断し子供たちは学校を捨てた:『希望の国のエクソダス』

    ナマムギ。パキスタンで地雷処理に従事していた日本人少年は同じ日本の少年たちからそう呼ばれていた。CNNの取材記者に日本語を話してみてくれと言われ「ナマムギ・ナマゴメ・ナマタマゴ」と答えたからだ。 コロナによる休校では学校を恋しく思った生徒がいる反面、のびのびと自宅で自分なりの学習時間を持った生徒も多かったのではないかと思う。勉強は本当は自分が好きな場所で、好きなように、好きなだけすればいいことなのだから。 世界中でステイ・ホームでの生活が広まる中、自宅からのリモート・ワークの場にはいくつもの可愛らしいハプニングが起こっている。子供が画面に映りこんだり、先日は猫のしっぽのみが映り込み、飼い主が白…

  • 「不離怨願、あたご様、五郎子」:『よろずのことに気をつけよ』

    川瀬七緒さんのデビュー作。第57回江戸川乱歩賞受賞作品。 巻末におさめられている選評では「呪いに対する理解が甘い」「会話文が多く冗長」と辛口だったけれど、私は純粋に楽しめた。 床下から見つかった呪い札は専門家が見れば「うなじの毛がチリチリと逆立つような」もの。これをつくったものは本気だ、まったく迷いがない、と文化人類学者で呪術を専門にしている中澤は思う。 しかしこの札の材質を調べると、札は何十年も前に床下に埋められたようなのだ。なぜそんな前から呪いの札が埋められていたのか、そしてなぜ、今になって老人は殺されたのか。老人の写真が剥がされたアルバムは何を意味するのか---。 「あたご様」や「五郎子…

  • 変人が帰ってきた:『シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官』

    法医昆虫学捜査官シリーズは第1作目の『147ヘルツの警鐘』も読んだけど、この一作目での赤堀先生はどこか普通の女性。岩楯刑事と色っぽい関係になりかけたり・・・第一作目だから安定路線で行ったのかなぁ? でもこの作品ではしっかり変人に戻っている。腐乱死体を発見した刑事に「で、何回吐いた? もちろん、寮に帰ってからも思い出し吐きしたよね?」と嬉しそうに尋ねたり。そうでなくちゃ。 レンタル倉庫で見つかった腐乱死体。遺体は腐乱が進んでいて身元の特定ができない。赤堀先生はレンタル倉庫コンテナの床下で見つかった蟻の死体をヒントに、アリの巣を調査、その巣の中の「蟻のゴミ捨て場」から欠けた脱皮痕を発見する。その脱…

  • 子どもの頃の夜をありがとう:『フジモトマサルの仕事』

    フジモトマサルさんの訃報を耳にした時、あの『ダンスがすんだ』の人だなと思いだし、家の棚を探して見たけれど処分してしまったようでもうなかった。この本は久しぶりに出かけた大きな本屋で見かけて、その時は買わずに帰ったのだけど、その後も表紙の印象が頭から離れずに購入。 なぜ彼の絵がこんなにも心をとらえたのかは、この本におさめられている糸井重里さんの文章にそのまま表現されている。子どもにとっての「行っちゃいけない夜」を思い出させる感じ。それをもう子供ではない自分に思い出させる。既視感というか、入れ子になった記憶の感覚というか。 フジモトマサルさんは二本足で立ちあがって生活している(擬人化された)生き物を…

  • 勉強するということはノリが悪くなること:『勉強の哲学』

    なんとも不思議な本でした。「勉強すること」について、著者の専門である哲学の考え方や用語を使って、著者自身の体験も盛り込んで語っている本です。タイトルにある「哲学」とはそういうことだったんだと読み終わって気づきました。勉強することの姿勢、セオリーのようなものについての本かと思って手に取りました。 哲学の難解な用語を使いながらも、ノリやツッコミ、ボケといった大衆的な言葉も用いて「勉強すること」について語っています。 勉強することは今いる環境(ノリ)から別の環境へと移動すること。皆がいる環境(ノリ)から移動するのだからキモい人になる。 僭越ながら、なんだか分かります。興味に没頭していると自分もノリの…

  • ほうずき市の由来に驚愕:『イネという不思議な植物』

    『イギリスはおいしい』という本の中で著者の林望さんが日本のパンにふわふわした食感のものが多いのは「主食というものは白くて温かくふわふわと柔らかいもの」という刷り込みがあるからだ、というようなことを書いていらして、とても納得した。日本のパン、あれは炊いたお米の一種なのか。確かに外国では日本のようにフワフワしたパンをあまり見かけない。そうはいっても、私自身はお米は週に半分くらい食べれば十分で、海外にいた時もお米が恋しくて恋しくてということも特になく、冷凍のクロワッサンなどを喜々として食べていた。 ただ食事では「主食」というものを食べるべしという刷り込みは強くて、おかずだけで食事を済ました時は何とな…

  • お気に入りの変人をまた一人見つけた:『メビウスの守護者 法医昆虫学捜査官』

    ミステリー小説は私にとって純粋に読書だけを楽しめるジャンルです。他の本は読み終わった時に少しでも賢くなろうと言う下心が・・・。 法医昆虫学とは遺体に発生・寄生する虫、その成育段階や種類で死亡時期や場所の特定を試みるものらしい。Wikipediaによるとアメリカでは裁判の証拠として採用されることもあるとか。 遺体に群がる昆虫たちだから、登場する昆虫はどれもぞっとするものばかり。法医昆虫学者である赤堀先生は屍肉食の凶暴なハエが顔一面にたかっていてもびくともしない。すごい、惚れた! 死体から発生するウジが脱皮する回数で経過した時間がかなり正確に測れるなんて知りませんでした。赤堀先生曰く「虫は本能でし…

  • 恋、家族、友情、祖国、幽霊、そして殺人。娯楽小説の王道:『流』

    台湾を舞台にした外省人一家の物語。波乱万丈な人生を送る祖父(そもそも中国から台湾に渡った人で波乱万丈でない人がいるだろうか)、彼は台湾のある地で現地の人々を大量に殺戮したという過去があるのだが、まったくそれを気にすることなく暮らしている。周りの人々もそれは同様で、「あれは戦争だったんだ! わしがおまえの家族を殺して、おまえがわしの家族を殺す。そんな時代だったんだ」とお互いを乱暴な口調で気遣いながら、いつか大陸に帰るという夢を抱いて台湾での日々を過ごしている。 その祖父が殺される。 これから歴史に絡んだミステリーが始まるわけねと思っていると、そうは進まず。高校生の主人公は替え玉入試で進学校を退学…

  • イタリア人が日本の道徳の教科書を読んだら:『みんなの道徳解体新書』

    道徳が教科化されたのが2018年度、つい最近のことなのだとこの本を読んで初めて認識しました。確かに長男が低学年の時は道徳は副読本しかなくて、いつのまにか配られる教科書の中に道徳が入っていて、それもベネッセの知育雑誌のような小奇麗な表紙。サブタイトル付き。最近の教科書は可愛らしいねえ。 日本人の大半は道徳の授業、真剣には捉えていませんよね。少なくとも私はそうです。また国がおかしなこと始めたなー。気まずい物からは目をそらす。 著者はなぜ今、道徳を教科化しなければならないのか疑問を抱きます。日本人の道徳心は薄れてきた? いや、むしろ向上しすぎてるんじゃない?私も外国人が日本の道徳の話を読んだらどんな…

  • エボラ、出アフリカしてる!:『ホット・ゾーン エボラ・ウィスル制圧に命をかけた人々』

    作家の橘玲さんのTwitterでのFinancial Timesのコロナデータ掲載・解説がとても分かりやすく、ずっとチェックさせてもらっている。Financial Times作成の国別のグラフの画像を貼ってくれているのだけど、それが淡いベージュを背景に各国の数値がきれいなパステルカラーで示されていて、ロックダウン開始時点には星印、ジグザクしながら多くの線が右肩上がりを示し、色合いが美しいのでなんだか花火のようなのだけど、示すものは死者数であるそのグラフを空恐ろしい思いで毎日眺めていた。ある程度ウィスルが蔓延してしまうと、この花火の線は下降することはなく、空に向かって放たれた花火のように上昇して…

  • 早く読みたい!大山顕さん『マンションポエム東京論』(本の雑誌 連載中)

    わた:つぶやきです。 あめ:すっごく面白そうな連載。 わた:マンション・ポエム。私も前から気になってました。 あめ:ほんとポエム。それもかなりできの悪い。 わた:帰国したら読みたいなー。 あめ:大山顕さんの写真、恩田陸さんの『歩道橋シネマ』の表紙にもなっています。 わた:2020年4月号は坪内祐三さんの追悼号です。 www.webdoku.jp 参加しています。 にほんブログ村

  • 春のハヤカワ電子書籍祭!これはすごいよ~【~4/13まで】

    わた:ハヤカワがAmazon kindle本でセール開催中! あめ:ポイント還元じゃなくて、書籍代そのものが下がるセールです! わた:さっそく、以前のセールで買おうか迷って終わってしまった『あなたの人生の物語』(テッド・チャン)を購入。 あめ:409円だよ~。 わた:あと、『雪』(オルハン・パムク)も買いたい。 あめ:『三体』もなんと1045円です。 わた:対象数1000点以上の大型セールなので、みなさん、御見逃しなく! www.amazon.co.jp 参加しています。 にほんブログ村

  • 大人も楽しめる本もたくさん!文藝春秋が小中学生向けに電子書籍を無料配信【3/6~3/19】

    わた:コロナウィルスのため自宅待機となっている子供たちのために、今、色々な無料サービスが展開されています。 あめ:コミックが無料で読めたりしてますね。 わた:こちらは文藝春秋が30タイトル、期間限定で無料公開しています。 あめ:Amazonの無料本の中からダウンロードできます。 わた:『合本 八咫烏シリーズ 第一部』(阿部智里)、『ミカ!』(伊藤たかみ)、『小学五年生』(重松清)、『花まんま』(朱川湊人)、『プリンセス・トヨトミ』(万城目学)・・・。大人が読んでも楽しい作品が揃ってます! あめ:私たちもたくさんダウンロードしました! わた:子供向けに『素数ゼミの謎』(吉村仁)や『恋する昆虫図鑑…

  • 電子書籍も環境に悪い?! 本についてのわたしたちの欲望について考える

    わた:今、私たちはほぼ電子書籍で本を買ってますが。 あめ:日本の本屋さんないし、図書館もないからね。 わた:紙と電子でどっちが使いやすいかっていうと、甲乙つけがたい。 あめ:電子書籍のメリットは①本を探さなくて済む、②本が散らからない、③家族で同時に同じ本を読める。③は主に子供たちの漫画だけど。 わた:でも子供たちは紙の本の方がいいみたい。これ意外だけど。 あめ:あと④メモや単語を検索できる、とか⑤専用の電子書籍リーダーなら暗い部屋でも読書ができる、とかありますが。 わた:紙の本はパラパラできるのがやっぱりいい。このパラパラって本の重要な特性のひとつだなって電子書籍を使って気付いた。 あめ:指…

  • 山とキツネとご先祖様。ある喪失の物語:内山節『日本人はなぜキツネにだまされなくなったか』

    わた:少し前に『山怪』という本を読んだんだけど、キツネやタヌキに騙されて命を落とした人もいたのね。 あめ:まさに『カチカチ山』。だまされるか、その裏をかくか。 わた:著者によると頻繁にキツネ(及びその他の山の生き物)にだまされていた日本人ですが、1965年頃を境に騙されなくなっていく。 あめ:それはどんな背景があるのか?という考察の物語です。 わた:物語という形容がふさわしい、なんとも奥行きのある考察でした。 あめ:結構早くにもっともらしい結論が掲示されるのよね。 わた:高度成長期での社会構造と人の意識の変化だね。人は山から下り、合理的になり、キツネにだまされなくなった。 あめ:でもそこから著…

  • 新しい人でないと世界は閉じれない:水野和夫『閉じていく帝国と逆説の21世紀経済』

    わた:著者は「EU帝国」にある程度の希望を感じているんだね。 あめ:EUは国同士の繋がり(陸の国)を基盤とし、経済活動の基盤も実物投資空間を基盤としているので、「電子・金融空間」とは異なり、実物投資空間で働く人々に利益が還元されるため拡大を目指すとは言えグローバリゼーションとは異なるという見解。 わた:EUは経済的な繋がりが注目されるけど、最終的には政治的な統合を目指しているという視点からイギリスのEU離脱を見ると、とても納得がいくね。 あめ:イギリスのEU離脱派のスローガン「コントロールを取り戻す(take back control)」はある部分では真実なんだろうね。 わた:ブリュッセルのE…

  • 今月のkindleオーナーライブラリーはこれ!【2020年3月】

    わた:新しい月に入ったので、さっそく新しい本を借りましたよ~。 あめ:先月に引き続き平山洋さんの『日本思想史講義』です。 わた:いや~、読むのがとても楽しみだ! あめ:惣村の巻から読み始めたので、今、戻ってます・・。 わた:初巻まで戻ったら、惣村の次の巻に行く予定。 平安時代の仏教 日本思想史講義 作者:平山 洋 発売日: 2014/01/03 メディア: Kindle版 参加しています。 にほんブログ村

  • はい、誤訳してます・・・:越前敏弥『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 決定版』

    わた:せっかくなのでとなるべく英語の本を原書で読むようにしてますが、 あめ:正しく読めているか、かなり自信がありません。 わた:難しい単語は辞書引けばいいけど、このoneやtheyは前述の文の中で何を指しているのかとか、辞書では分からない部分で引っかかります。 あめ:翻訳学校で教鞭も取られている越前先生はその点をよくご存知で、いわゆる文法に分類できない「隙間」の部分が誤訳の原因になっていると書かれています。 わた:and やorが何を並列しているのか、冠詞の a やtheの有無によって意味が違ってくることなど。 あめ:あと否定文。日本語とは理屈が異なるので下手すると反対の意味に読んでいる場合が…

  • 奏と階段と幸福な時間:恩田陸『祝祭と予感』

    わた:kindleで70%セール対象になっていたから買ってしまった。 あめ:40分くらいで読めてしまった・・・。 わた:蜜蜂王子のバックボーンが明かされたりして。 あめ:恩田さんのキャラクターらしく、優秀なお家のご子息でした。 わた:えーと、個人的には奏ちゃんが運命のヴィオラに出会うまでの「鈴蘭と階段」がよかったです。 あめ:一人で凝った料理を準備しながらヴィオラ選びをしてね。この複数のことを自分のペースで同時に行うって、私にとって幸福の一光景だな。 わた:どんなことがあっても料理を丁寧に作る人は、無条件に尊敬します。 あめ:作曲家の菱沼さんが主人公の「袈裟と鞦韆」も恩田さんらしい優しい視点で…

  • そこに「煙幕」はありませんか:白井聡『戦後政治を終わらせる 永続敗戦の、その先へ』

    わた:先だって読んだ『資本主義の終焉と歴史の危機』と重なる部分があり、経済と政治は別々に語ることはできないと感じたよ。 あめ:なぜ学校で現代史を教えないのか。自分が学生の時は単純に授業時間が足りないからと思っていたけど。 わた:戦前の指導者層がそのまま戦後もその地位を保っているのだから、敗戦の歴史を教えられるわけない。 あめ:わかってしまえば単純なこと。こうした単純な煙幕というのは他にもたくさんあって気が付かずに眺めているのかもしれない。 わた:白井さんの言う永続敗戦とは「日本人はあの戦争に敗れたことを知っているにもかかわらず、本当は負けたと認めていないのではないか」、そのために「ズルズルダラ…

  • 国家はもはや資本の下僕に:水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』

    わた:会社員時代、上司を含め多くの企業人がグローバリゼーションを口にしていたけど、どれだけの人がその本当の姿を知っていたんだろう。 あめ:ウィン・ウィンの関係、とかしきりに言われたけどね。 わた:グローバリゼーションとはヒト・モノ・カネが国境を超えてプロセスと喧伝されているけど。 あめ:真の姿は「中心」と「周辺」を組み替え続けること。 わた:中心とは利益を吸収するところでかつては帝国や先進国、今は金融街。 あめ:周辺とは新興・後進国で製品の購入先。この周辺がもはやどこにも見当たらなくなっている。 わた:周辺が外に見いだせない場合は資本主義はどうするか。 あめ:なんと国の内部に暴力的に周辺を作り…

  • 新刊JPに書評を掲載頂きました:『21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考』ユヴァル・ノア・ハラリ著

    本が好き!での書評を新刊JPに掲載頂きました。 www.sinkan.jp これからも本を読む喜びを共有できるような書評を書いていきたいです。 精進致します。 参加しています。 にほんブログ村

  • この世に非ざるものに挑み続けた表現力で音楽を:恩田陸『蜜蜂と遠雷』

    わた:やっと読んだ~。 あめ:日本を出る時にkindleに落としてきたけど、読んだら止まらなくなるような気がして生活が落ち着くまで手が付けられず。 わた:恩田さんの青春物がそんなに好みでもなくてね。 あめ:でも読んだら、異形が出てくる、出てくる(笑)。 わた:コンテスタントはみな、異形。ピアノと対峙するとき、みな、異形に変容する。 あめ:蜜蜂王子・風間塵は『常世物語』に出てきても違和感ないよ。 わた:栄伝亜夜もね。彼女の演奏の描写はどれも素晴らしかった。何度も読み返したいような描写。なぜなら彼女は「ギフト」だから。 しかし、心では優劣がつけられたところを見たいのだ。選びぬかれたもの、勝ち残った…

  • 教室から出て現代史を学ぼう:茂木誠『世界史で学べ! 地政学』

    わた:著者は大手予備校の世界史の先生。 あめ:ちょっとしたきっかけでYouTubeを拝見してともて面白かったので本を手に取ってみました。 わた:地政学とは「地理的な環境が国家に与える政治的(主に国際政治)、軍事的、経済的な影響を、巨視的な視点で研究するもの」(Wikipediaより) あめ:「イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国などで国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的として発達した(Wikipedia)」ってちゃんと書いてある。 わた:地理的な環境が国家に与える政治的影響ってとても面白そうだけど、結局は軍事的な影響になるんだよね。 あめ:土地は動かないから、災害も起きにくく、物流面でも…

  • 二重の「家」を暮らす妻:山本周五郎作品集 二 『その木戸を通って』ほか

    わた:時代物の怪奇短編アンソロジーでは必ずといっていいほど収録される『その木戸を通って』。 あめ:城代の娘との結婚を控えた正四郎の家にある日、見知らぬ娘が尋ねてくる。 わた:その娘は自分の名前すら憶えていなくてなぜ自分が平松正四郎という名前を知っていたのかも分からない・・。 あめ:行き場のない哀れさもあってか正四郎の家人たちにも不思議と気に入られて、そのまま家に住み続け、やがては正四郎の妻になるのだけど。 わた:ある夜、ふさは以前の記憶を思い出しかけて・・・。 あめ:この小説の不気味さの特異なところって、記憶の断片が家の間取りでよみがえるってところだと思うのよ。 わた:『お寝間から、こちらに出…

  • 使ってる? Kindleオーナーライブラリー

    わた:AmazonのKindle電子書籍リーダー、またはFireをお持ちのみなさーん。 あめ:Kindleオーナーライブラリー、使ってますかー? わた:ふぅ。 あめ:で、Kindleオーナーライブラリーって何? Prime readingと何が違うの? わた:おそらくPrime readingよりは対象の本の数が多いようなのですが、①Kindle電子書籍リーダーまたはFire端末を持っている、②Amazonプライムに加入している 人が毎月一冊、対象の中から本が無料で利用できる、というものです。 あめ:・・・この条件で、Prime readingとどこが違うのよ?? わた:だから対象本が多いんで…

  • 流れてくるニュースを自分でもう一度考える:【Amazon Prime Reading】大野和基『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』

    わた:こんな本ばかり続いているけど、本当は小説読む人なんです。 あめ:だけどやっぱり最近は世界が少し不穏なので、今、世界で一体何が起こっているのかを探るような本を手にとってしまいます。 わた:これは偶然Amazon Prime Readingで見つけて手に取ってみました。 あめ:インタビューをまとめたものですが、インタビューの対象は、文化人類学者、歴史家、人材論・組織論の権威、経済学者、元アメリカ国防長官、アメリカの女性学者などです。 わた:短いインタビューですが、どれもそれぞれの方の研究内容やエッセンスがよくまとめられていて、さらに知りたい知識への入り口になるような本です。 AIの未来に対す…

  • 未来は明るくない?:ユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考』

    わた:かなり衝撃的な本・・・。 あめ:AIの発展によって大量の「役立たず階級」が生まれるって。 わた:でも今でもその傾向はあるよね。市場は人手不足っていうけど、仕事につけてない人がたくさんいるわけでしょう。需要と供給が合っていない。 あめ:ロスト・ジェネレーション世代と言われている就職氷河期世代の人々でキャリアを詰めなかった人は今でも就労で苦しんでる。 わた:キャリアを積む機会もなかったのに次の仕事を得る時にキャリアを求められる。 あめ:AIの時代では人が行う仕事がかなり専門性が高いものになり、仕事に就けるのはごく一部の人々になるだろう、職を得るスタートラインにすら並べない人が大量に発生する、…

  • あの人もこの人も劇的ビフォーアフター?!:【新刊情報】内澤旬子『着せる女』

    わた:ふ、ふ。ふふふふふ・・・。 あめ:・・・不気味なんですけど。 わた:内澤旬子さんの『着せる女』が試し読みできるのよ。 www.webdoku.jp わた:宮田さんの「ヒョットコ感」って、・・・言い得て妙! あめ:内澤さん、相変わらず面白い本、書いてる! わた:エディ・バウアーは私も好きだよ。 あめ:私も「着せて」くれないかな。最近、中年になったから服選びが分からない・・・。 わた:宮田珠己さんだけじゃなく、高野秀行さんも「着せられる」らしい。 あめ:これは読まなきゃ! わた:だけど本の雑誌社の本って、あまり電子書籍にならないんだよね・・。 あめ:電子書籍化されたら読みます! わた:クレジ…

  • Audibleを1ヶ月無料体験してみた。その結果は。

    わた:Amazonのオーディオ・ブックサービスのAudibleを1ヶ月利用したので、その感想です。 あめ:Audibleとは月額1500円で利用できる朗読ブックサービスなんだけど、効き放題というわけではなく、最初のうちは一ヶ月に一冊のオーディオブックが利用できる、のかな。 わた:Prime会員特典のPrim Readingや本の読み放題サービスUnlimitedとは使い方が少し違います。 あめ:コインを集めて会員期間が長くなると溜まったコインで複数冊オーディオブックが借りれる、らしい。 わた:ちょっと、ややこしい。Amazonのサイトはこちら。 Audible (オーディブル) - 本を聴くA…

  • 読み終えた時に「なぜ」という思いが拭えない:飯嶋和一『出星前夜』

    わた:途中でちょっと冗長だなって思ってしまい、他の本に手を出したりして読み切るのが遅くなってしまった。 あめ:冗長という印象が変わりだしたのは、蜂起の終焉に近づいてからだね。印象が変わったその瞬間をすごく覚えている。 わた:ここまで愚直に描写を積み重ねてきたのは、このためなんだ。読者にこの光景を見るための環境を読者の中に作るためだったんだってようやくわかった。 あめ:だからこの本を読むときはどうか最後まで読み切って欲しい。 わた:色々な立場の人々について詳細な記述が続くのでちょっと我慢が必要なんだけど。それも記述に徹しているからそのバラバラな立ち位置をたくさん取り込んで混乱するんだよね。 あめ…

  • 災害が多い今だからこそ冒頭の名調子が胸に迫る:鴨長明/訳・蜂飼耳『方丈記』

    わた:災害が多い今の時代、災害を描いた作品としてこの作品が読まれているそうです。 あめ:学校の授業では世間との付き合い方とかそんな説明だったと思う。 わた:災害の世紀ならではの読まれ方だね。 あめ:前半では確かに大火、竜巻、飢饉、遷都、地震についての記述が続く。 わた:遷都も災害の一種なんだな。この遷都は平清盛による福原遷都だ。 あめ:原典は漢字カタカナ交じり文なんだって。 わた:カタカナ文って軍部が出す文書の印象が強いからカタカナ交じりで読んだらまた違った印象だろうな。 あめ:堀田善衛の『方丈記私記』が本当は読みたかったんだけど電子書籍化されてない。 わた:堀田善衛はカタカナ交じり文で読んだ…

  • 子どもたちだけがをそれを見ていた:P.L.TRAVERS『MARY POPPINS』

    わた:かの有名な『メアリー・ポピンズ』を始めて、原書で読んでみました。Prime会員であればAmazon.jpのPrime Readingでなんと四作目まで読める! あめ:ようやく第一作目が読み終わった・・・。 わた:いや、これは面白かったね! あめ:同じ英国児童文学でも『秘密の花園』は読み切るの辛かったけど、『メアリー・ポピンズ』は英語が苦手な我々でも、まあ読めました。 わた:イギリスの古風な会話がたくさん出てきて、読んでて楽しかったよ絵。メアリー・ポピンズが会話の中で、皮肉っぽく「Thank you」って何度も言うのが面白くて。頭の中で英国アクセントで読みましたよ。 あめ:メアリー・ポピン…

  • Prime Minister's Questions(=PMQ)とは何ぞや?:信夫梨花『イギリスの首相に学ぶ!反論の伝え方』

    わた:ブレグジット騒ぎの時にイギリスの議会の模様がテレビでよく流れたけど、昔から続く格式ばった決まりがあって面白かったよね。 あめ:議会が開催される初日は与党と野党の党首が並んで談笑しながら議会に向かうとかね。 わた :ジョンソン首相とコービン党首が並んで話しながら議会に向かうのを見て「お」と思ったけど決まりだった(笑)。 あめ:「オーダー」で有名になったバーコウ議長の後任、リンジー・ホイル氏も引き摺られて議長席に座りましたよ。 www.bbc.com わた:バーコウさんのネクタイは毎回楽しかった。 あめ:党首が話す机の上に置かれている、いかにも古色蒼然とした数々の物も気になったなぁ。 わた:…

  • 欧州にすむ私たちが読んで感じたこと:信夫梨花『イギリスに住んで確信!日本はイギリスより50年進んでいる』ほか

    わた:1/23まで開催しているAmazon・kindle『社会・政治関連本フェア』(40%OFF以上)で表題作とその続編『イギリスから見れば日本は桃源郷』併せて購入。 あめ:またまたAmazonセール・・・。 わた:イギリスでの生活が長い著者がイギリスと日本の社会を比べてみる、という本。 あめ:ちょっと挑発的なタイトルだけど、日本の優れているところを読んで優越感に浸るのではなく、それぞれの文化や社会の違いに着目すると有意義。日本が社会の中で発展を重視してきたのがどんなところで、イギリスが発展よりも維持を重要としている点はどんなところなのか。 わた:著者が進んでいると上げているのは主に生活面での…

  • 遠くローマまで旅した少年たちが見たものは:若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ』

    わた:冒頭のプロローグがすごくいいんだよね。 あめ:ミケランジェロを研究していた著者がある夜、こんな内なる声を聞く。「東洋の女であるおまえにとって、西洋の男であるミケランジェロが何だというのか?」 わた:これはね、一緒にするなんておこがましいけど、異国に住んでいるとなんとなくわかる感覚なんだよね。異文化を理解する限界っていうかね。 あめ:4人の少年がローマに向け日本を離れた時は日本でのキリシタン布教の絶頂期で、時の権力者は織田信長。 わた:しかし4人が日本を離れている間に、信長も彼らをローマに送った九州のキリシタン大名・大友宗麟・大村純忠等も亡くなり、秀吉による禁教が始まりつつあった。 あめ:…

  • 2019年 私たちのベスト本

    わた:まだ2019年少し残ってるけど。 あめ:冬休みで子供たちもいて、もう読了本は増えないと思うので、今年のベスト本を選んでみたいと思います。 わた:えーと、読んだ本は、漫画も含めて、約60冊ほどでした! あめ:当たり前だけど、会社員していた時よりは、全然読めてる。 わた:その中でのベスト本は、 あめ:村田紗耶香さんの『コンビニ人間』です! wataamebook.hatenablog.com わた:柴崎友香さんの『春の庭』と迷ったけど、衝撃度でいったらやっぱりこっちかな。 あめ:2019年はどんな年だった? わた:仕事を辞めて海外に来て、2年目。自分の時間の使い方を試行錯誤した1年でした。 …

  • ボリス・ジョンソンさん、頼みます!イギリスの労働者達を悲しませないで:ブレイディみかこ『労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱』

    わた:Amazonのポイント50%還元セールで購入。 あめ:少し前の本で2017年出版。労働党の躍進の年。 わた:しかしながら2019年12月12日のイギリス総選挙ではボリス・ジョンソン率いる保守党が圧勝した。 あめ:労働党は大きく座席を減らしてしまったね。 わた:これで本当にEU離脱だ! あめ:この本は著者の配偶者を含め、2016年の国民投票でEU離脱に投票した友人たちへのインタビューがあり、今まで知らなかった声に触れることができた。 わた:移民を排斥する国粋主義者が離脱に投票しているのかと思ったら、そんな単純なものではなかったね。 あめ:著者も書いている通り、国民投票前にはEU離脱なんて非…

  • 天才の頭の中は?:会田誠『カリコリせんとや生まれけむ』

    わた:前から読みたいと思っていた会田誠さんの本がAmazon Kindleポイント還元本の対象になっていましたー。 あめ:今年は美術・芸術を巡って日本ではきな臭いことが起こったからねえ。 わた:会田さんの下記のインタビューも面白くて。 「ピカソがああ描くなら、俺はどう描くか?」かつて“少女”を描いた会田誠さんが見る“日本”とは https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5de4f6e3e4b00149f7327555 あめ:せっかくだから読んでみようと思いぽちっと購入。 わた:どうだった? あめ:うん。(沈黙) わた:なによ~(笑)。 あめ:芸術…

  • 銅版画に導かれるそれぞれの夜:森見登美彦『夜行』

    わた:初めて森見さんの作品を読んだ。 あめ:失踪ミステリーかと思ったら、パラレルワールド? わた:旅行記でもあり、怪談でもあり、SFでもあり。 あめ:続きが気になって、もう一気に読んだね。 わた:村上春樹の短編に絵の中の男とタクシーの中で乗り合わせるって話があったよね。それを思い出した。場面が夜で、絵が関連していて・・。 あめ:女の子が失踪した話だけなら読まなかったけど、この銅版画のエピソードを読んで俄然読んでみたくなった。 わた:鞍馬の火祭の夜に失踪した「長谷川さん」。十年後にその時の仲間が集まるんだけど。 あめ:その十年の間に誰もが旅先で『夜行』という銅版画の連作を目にしている。 わた:ど…

  • またAmazonがKindleセールしてる~!:【最大50%】Kindle本冬のポイント還元(12/13~12/26)

    わた:またKindleセールだ~! あめ:最大50%のポイントが付くセール。二冊目以降からそのポイントが使える。 わた:Amazon、しょっちゅうKindleセールしてるなぁ。 あめ:チェックするのも大変(汗)。 わた:うまい具合にソートができないのよね(汗)。 あめ:玉石混交の表示をひたすら見る。うまい方法はないのかな? わた:ほしい物リストからチェックする、というのもあるけど、思わぬ掘り出し物には気づけないし。 あめ:とりあえず森見登美彦さんの『夜行』は買おうかな。 わた:佐藤賢一さんの『英仏百年戦争』もある! 『バッタを倒しにアフリカへ』もあるし、ブレイディ みかこさんの光文社新書もある…

  • シベリアを領有することで高まるロシアの悲劇性:中野京子『名画で読み解くロマノフ家12の物語』

    わた:滞在先でニコライ二世とその家族の展示会をみる機会があったのよね。 あめ:科学博物館での展示で博物館らしい切り口で血友病についての展示だったね。 わた::それが、またすごくよくてね。 あめ:胸に迫った。辞書を引き引き英語で読んだから、余計にね。 わた:ニコライ二世については、池田理代子先生の『オルフェイスの窓』での知識しかなかったけど、本当に激動の人生だね。日露戦争に革命に、たった一人の皇太子が血友病・・・。 あめ:この皇太子に発現した血友病が大英帝国のヴィクトリア女王が保菌者というのが歴史の残酷さっていうかね。 わた:女子は保菌者になり、男子には半分の確率で発現しちゃう。王家は王家同士で…

  • これは一種のミュータント小説だ:村田紗耶香『コンビニ人間』

    わた:すごいね、これは。 あめ:やっぱり芥川賞はすごい。読まないとね。 わた:芥川賞受賞後に色々なインタビューでは、どれも「普通への同調圧力」という切り口で紹介してたけど。 あめ:そんな生易しいもんじゃないね。 わた:この小説の本質である「異質」さには一般的なメディアでは説明しきれない。 あめ:よく拝見するブログでは「クレイジー紗耶香」って(笑) わた:あ!その通り!クレイジーって言えないでしょ、メディアでは。 あめ:ざっくりわた☆あめ風のあらすじ紹介をすると、小さい頃から異質な言動で周囲をぎょっとさせる古倉さん(女性)。 わた:死んだ小鳥を見て「焼き鳥にしよう」って言ったり、同級生の喧嘩を止…

  • 怜悧な怪談:角田光代『かなたの子』

    わた:『泉鏡花賞』受賞作品を読もうシリーズ。 あめ:あんなに朗らかそうなのに、こんな異界を抱えてる・・・角田さんの底知れなさにいつもながら脱帽。 わた:昔の因習的なトーンで書かれた作品の方が、現代が舞台のものより「救いがある」感じがしたんだけど。 あめ:即身仏を扱った「おみちゆき」、夏目漱石の『夢十夜』めいた「前世」。 わた:因習という抗えない力が色々な感情を諦めさせるからかな。 あめ:現代を舞台にした作品の方が、読むのが辛い。「同窓会」は子育て中のわたしは辛くて読めなかった・・・。 わた:子供の秘密は気づかれないのも悲劇だね・・・。 あめ:「巡る」の頭に靄がかかった語りも、とても「聞きなれて…

  • 読むだけにとどまらない体験:柴崎友香『春の庭』

    わた:これすごい。 あめ:そして、このすごさを伝えるのが難しい。 わた:読書にとどまらないすごい体験した。 あめ:読んでいると、自分の色々な記憶がよみがえってきて。 わた:自分の中に風を通したような気持ちになる。 あめ:自分の中が耕されて、沈んでいたものと混ぜあって豊かになった感じ。 わた:種まきする前の畑のように。 あめ:読んだ人まで詩的にするね~(笑) わた:インスタグラムを眺めながら、色々なことを感じるのに似ている。 あめ:誰にも言うような出来事でも風景でもないんだけど、あ、いいなっていう。 わた:キラキラした風景じゃなし、構図も今一なんだけど。 あめ:とらえたその一瞬がいいっていうかね…

  • 万城目さんの新境地(勝手にすみません!):万城目学『とっぴんぱらりの風太郎』

    わた:読み終わっちゃいました。 あめ:と久しぶりに思った本だね。 わた:もうこれ万城目さんの新境地だよ! あめ:わかったって(笑) わた:時は大阪の陣、藤堂高虎お抱えの忍び集団から追い出されたニート忍者・風太郎(ぷうたろう)。 あめ:いやいやながらも実は楽しんで瓢箪栽培にいそしんでいたら・・・ わた:瓢箪に住む仙人に巻き込まれ、最後に命をかけてある指名を果たすために奮闘する。 あめ:わたし、「ふうたろう」って読んでました。 わた:ニートだから「ぷうたろう」。気が付きませんでした(笑)。 あめ:文章がすごくいいな。時折、万城目さんらしいユーモアが混じるんだけど。 わた:戦が近づいてくるとピリッと…

  • あなたの心地よい性別とは:能町みね子『オカマだけどOLやってます。完全版』

    わた:子供とAmazonのFireを共有しているから、長男(12歳)に「何、この本?」って言われた。 あめ:能町さんってこういう人だったんだぁ・・・。『逃北 つかれた時は北へ逃げます』を読んで、こういう女子っているよな、と思ったけど・・・。 わた:男性から女性になったけど、オンナ・オンナしてない。 あめ:え、せっかく女性になったのに!?って。 わた:余計なお世話(笑) あめ:「男性から女性になった→すごくオンナっぽい女性になったはず」という想像が無意識に性差別的なのかも。 わた:能町さんはオンナというより「女子」。 あめ:女子だね。 わた:男子が『逃北』するとして、やっぱりあんな風には語れない…

  • 私的な思いが何よりの鎮魂に:星野博美『みんな彗星を見ていた』

    わた:天正遣欧使節団についての本かと思ったら・・・ あめ:サブタイトルは「私的キリシタン探訪記」 わた:もともと星野さんは大航海時代とキリシタンに興味があったようで、訪れたキリスト教系の本屋で中浦ジュリアンが列福されることを知り・・・。 あめ:そこから広がってリュートを習い、加えてリュートのオーダーメイドもしちゃう。星野さんらしい。 わた:自らの先祖を探った『コンニャク屋漂流記』の裏テーマで「どこかにキリシタンとの接点がないか」というのもあったって。 あめ:『思い込みが妄想であったことを証明するために人生の多くの時間を費やしているような気さえする』(笑) わた:家康が禁教令を出すまでの経緯を整…

  • はじめまして

    会社員をひとまず引退し、時間ができました。そこで今までインプット(読書)オンリーだったものを、アウトプット(ブックレビュー)してみようとはじめてみました。 ブックレビュー、難しいです・・・。 ブログでやってみたいこと ・泉鏡花賞の受賞作品を網羅してみたいです。好きな文学賞なのでじっくりと読んでみたい。・中学受験(国語)で取り上げられている現代小説のレビューをしてみたいです。早熟なお子さんたちがどんな作品を読んでいるか、早熟でない子を持つ親として気になります。作品も良品揃いで楽しみです。 そのほか、印象に残った本について記事にしていきたいです。 わた☆あめはこんな人 学童時男子の子育て中で、絶賛…

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