429条1項の対第三者責任については、難しい議論もありますが、答案に必要な限度で見ていきましょう。 趣旨 要件 任務懈怠 悪意重過失 損害 直接損害事例 間接損害事例 株主と「第三者」 相当因果関係 責任主体 名目上の取締役 登記簿上の取締役 選任決議欠缺 退任登記未了 事実上の取締役 趣旨 同項の要件の解釈は、同項の趣旨をどのように解するかによって異なってきます。この趣旨については、激しい争いがありましたが、判例が下記論証の立場を確立させました(判例の立場にはなお有力な批判がありますが、答案上は判例の立場をとるのが安全でしょう)。*1 【論証 429条1項の趣旨】 429条1項は、役員等の不…
会社法最頻出分野の一つである、任務懈怠責任(423条1項)についてみていきましょう。任務懈怠責任を書く場合には、まず要件を明示して、それぞれの要件検討の中で論点を展開していきます。その意味で、本稿の目次のような形で頭を整理しておくとよいでしょう。 任務懈怠責任の要件は、①役員等の任務懈怠、②会社の損害の発生、③①と②との間に相当因果関係があること、④帰責事由があること*1です。 任務懈怠責任は役員等に課せられますが、ここでは、取締役の場合を念頭に論を進めます(他の役員等について同様の議論が基本的に妥当します)。 任務懈怠 善管注意義務 CSR経営 経営判断原則 監視義務 内部統制システム 従業…
ここでは、取締役会に絡む論点として、取締役会決議を欠く取締役の行為の効力、瑕疵ある取締役会決議の効力について検討します。 取締役会決議を欠く取締役の行為の効力 「重要な財産の処分」 決議欠缺取引の効力 瑕疵ある取締役会決議の効力 総論 「特別の利害関係を有する取締役」 意義 代表取締役の解職決議の場合 取締役の解任を株主総会の議案とする決議の場合 「特別の利害関係を有する取締役」が審理に出席することの可否 取締役会決議を欠く取締役の行為の効力 「重要な財産の処分」 「重要な財産の処分」(1号)にあたり、取締役会決議が必要となる場合を例に、論証を作成しました。「多額の借財」(2号)の場合も同様で…
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刑訴法の中でも最重要かつ最頻出分野の一つである、伝聞証拠の証拠能力についてみていきましょう。 伝聞証拠と伝聞法則 要証事実との関係 非伝聞 領収書 精神状態供述 犯行計画メモ 要証事実が「事前謀議の存在」であるとき 要証事実が「作成者の犯行の意図・計画」であるとき 要証事実が「メモの存在と内容」であるとき メモが謀議の形成手段とされたとき メモの記載と現実に起こった犯行の態様とが高度に一致する場合 伝聞例外 321条1項3号 321条1項1号 321条1項2号 特信性要件の要否(同号前段) 相反性 検証調書 実況見分調書 現場指示と現場供述 鑑定調書 再伝聞 同意 弾劾証拠 他者矛盾供述 署名…
ここでは、証拠能力の基本及び関連性(伝聞証拠を除く)にかかわる論点を検討します。 証拠法序説 厳格な証明と自由な証明 実体法的事実 訴訟法的事実 情状事実 間接事実・補助事実 関連性 類似事実の立証 科学的証拠 写し 証拠法序説 まず、証拠能力と証明力を明確に区別して理解しましょう。証拠能力とは訴訟において(一定の)事実の認定のための証拠として使用することのできる法的資格のことをいい、証明力とは、証拠の持つ、一定の事実を推認させる実質的な力のことをいいます。*1 証明力については、その評価・判断が裁判官の自由心証に委ねられます(318条)が、証拠能力については、種々の規制が存在します。 まず、…
今回は、取締役の行為差止請求権についてと取締役の報酬についての諸論点を検討します。 取締役の行為差止請求権 要件 判決(決定)違反の効力 報酬 報酬額の決定 報酬規制の適用対象 定款または株主総会の定めがない場合の報酬請求権 報酬の事後的変更 取締役の行為差止請求権 要件 360条の取締役の行為差止請求の要件は、株式保有要件、損害要件(「著しい損害が生じるおそれ」、監査役設置会社等では「回復することができない損害」)、法令等違反行為の存在です。 ここで、「法令」が何を含むのか、具体的には、会社法以外の法令も含むのか、また、善管注意義務違反も含むのか、が問題となります。210条における「法令」と…
取締役にかかわる論点の中で、ここでは、競業取引規制と利益相反取引規制について検討します。 取締役は、会社に対し、善管注意義務(330条、民法644条)・忠実義務として、会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図ってはならないという義務を負います。競業取引規制や利益相反取引規制は、こうした一般的な義務に加え、特に取締役と会社との利益が衝突しやすい場面について、会社の利益保護を目的として定められた規制です。 競業取引規制 規制の範囲 承認 利益相反取引 直接取引 間接取引 承認 競業取引規制 競業取引の場面では、取締役が会社の取引を奪うなどして会社に損害を与えるおそれがあります。しかし、一方で…
選解任における論点として、「正当な理由」の意味について検討します。次に、取締役の分野ですが、この分野は論点が非常に多いので、まず表見代表取締役について検討し、それ以外の論点については次回以降扱います。 「正当な理由」 表見代表取締役 第三者の意義 第三者の主観 使用人 「名称を付した」 908条1項との関係 「正当な理由」 正当な理由の意義を論じるにあたっては、339条1項において株主総会による役員の解任を可能としながら、2項において、解任された者に損害賠償請求権を認めている趣旨を考える必要があります。 【論証:339条2項 「正当な理由」】 339条2項が、解任に「正当な理由」がある場合を除…
株主総会は司法試験・予備試験でもほとんど毎年出ているといってもいいほど頻出の分野です。株主総会決議の効力の争い方として出題されることが多いので、まず取消事由、無効事由、不存在事由の総論の論証を展開してから、総会決議の瑕疵について検討するという書き方がセオリーです。そのため、株主総会の権限、株主提案権、議決権行使、議事・決議の項で検討する事項も、取消事由などが認められるか、という枠組みで書くことが多いです。 株主総会の権限 代表取締役の選定 業務執行 株主提案権 議決権行使 定款による代理人資格の制限 委任者の意思に反した議決権行使 委任状勧誘 議事・決議 議事整理権限 説明義務 株主総会決議の…
裁判所が実体審判を行うための手続的要件のことを訴訟条件といいます。ここでは、その中でも、訴訟条件(告訴を例に)の追完、不適法訴因への訴因変更の可否、また、訴因と心証とで訴訟条件を異にする場合の措置として訴訟条件の判断基準、形式裁判を導く縮小認定の可否について検討します。 訴訟条件の追完 不適法訴因への訴因変更の可否 訴訟条件の判断基準 形式裁判を導く縮小認定の可否 訴訟条件の追完 たとえば、親告罪について告訴を得ずに公訴提起がなされたが、事後的に告訴が得られた場合にかかる公訴提起を適法なものとして認めてよいか、という問題です。 【論証:訴訟条件の追完】 親告罪につき、告訴を得ずになされた公訴の…
訴因変更にかかわる諸論点について検討します。訴因変更の要否、縮小認定、訴因変更の可否、訴因変更命令について検討していきます。 訴因変更の要否 縮小認定 訴因変更の可否 訴因変更命令 訴因変更の要否 裁判所の心証が訴因と食い違っている場合、裁判所はそのまま心証通りの事実を認定してよいのか、あるいは訴因変更手続を経なければ当該事実を認定することはできないのか、というのが訴因変更の要否といわれる論点です。 この論点については、平成13年に極めて重要な決定が出ており、受験生はほとんどがこの判例をもとに書いてくると思われるので、論証も判例に(基本的に)則って作成しました。 【論証:訴因変更の要否】 審判…
まず、検察官の公訴権の行使について、一罪の一部起訴と公訴権の濫用を検討します。次に、公訴提起の手続・効果にかかわる問題として、訴因の特定、起訴状一本主義について検討します。 一罪の一部起訴 訴因外の事実 公訴権の濫用 嫌疑なき起訴 不起訴相当の起訴 違法捜査に基づく起訴 訴因の特定 概括的記載 「共謀の上」 検察官の釈明 起訴状一本主義 一罪の一部起訴 【論証:一罪の一部起訴】 公訴は罪の全部に及び、分割は許されないこと(公訴不可分の原則)、一部起訴を認めると、裁判所の審判の範囲もそれに限定されてしまうため、実体的真実発見の要請に反する結果になることから一罪の一部起訴は許されないとする見解もあ…
令和元年司法試験の再現答案を掲載します。点数と順位も上げるので参考にしていただければと思います。再現答案は、受験直後に作成したので再現度は比較的高いと思います。 成績 再現答案 公法系 憲法 行政法 民事系 民法 商法 民訴 刑事系 刑法 刑訴 労働法 成績 短答 150点 123位 公法系 125.49点 231~258位(憲法B 行政法A) 民事系 220.37点 25位(民法A 商法A 民訴A) 刑事系 136.36点 113~131位(刑法A 刑訴A) 労働法 59.48点 126~142位 論文合計 541.71点 49位 総合 1097.99点 42位 後々、出題趣旨や採点実感を読…
労働法はもっと良かったと思っていましたが、あまり評価が伸びませんでした。勉強時間が足りなかったかもしれません。 59.48 126~142位 第1問 第1 設問1 1 Xは、Y社に対し、本件解雇は無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、②解雇期間中の未払い賃金請求(民法536条2項)、③不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることが考えられる。 2⑴ まず、本件解雇は、解雇予告手当(労働基準法(以下、労基法)20条1項本文、Y社就業規則(以下、規則)33条)の支払なく行われた即日解雇である。かかる解雇予告手当なき即日解雇のためには、「労働者の責めに帰すべ…
別件逮捕はヤマを張っていましたが、結論の分かれる二つの構成で書け、というのは予想外でした。別件基準説はあまり詳しく知らなかったので論述もそれなり、という感じです。 評価A 刑事系 136.36 113~131位 第1 設問1 1 小問1 ⑴ 法が逮捕、勾留について被疑事実を単位としている(刑事訴訟法(以下、法名省略)200条、60条等)こと、裁判官が「正当な理由」(憲法34条)の有無を審査して初めて身柄拘束が認められるという令状主義の趣旨に照らし、逮捕、勾留は事件単位に行われるべきである。 そうだとすると、Rらは①の逮捕、勾留及びそれに引き続く甲の身柄拘束期間中、逮捕の原因となった被疑事実たる…
途中答案です。設問3で、緊急避難説と誤想防衛説がある、というところまでしか正確な知識がなく、焦りました。難点についてはほとんど書けていません。 評価A 刑事系 136.36 113~131位 第1 設問1 1 電話口で、Aに対し、金融庁職員であると偽って、Aの住所及びA名義の預金口座の開設先を聞き出した行為は、住所や預金口座の開設先が財産上の利益といえないため、詐欺罪(刑法(以下、法名省略)246条2項)に該当せず、不可罰である。 2 Aに対し、金融庁職員であるように装って本件キャッシュカード等を手渡させた行為につき、詐欺罪(246条1項)が成立しないか。 ⑴ 「欺」く行為とは、処分行為に向け…
評価A 民事系 220.37 25位 第1 設問1 1 課題1 ⑴ Yは、本件定めが専属管轄の合意(民事訴訟法(以下、法名省略)11条1項)であり、B地方裁判所以外の裁判所を本件契約に関する紛争の管轄裁判所から排除することを内容とするものであると解釈している。 契約において管轄の合意がなされた場合、専属管轄の合意であるか、当該裁判所も管轄裁判所として付け加える付属管轄の合意であるかが問題となるが、あえて管轄の合意が定められた以上、当該定めは専属管轄の合意であると解釈すべきであるのが原則である。 本件契約においても、あえて管轄の合意である本件定めが置かれたのであるから、専属管轄の合意であると解釈…
ブルドッグソース事件にはっていたので設問2の出来は結構よかったと思います。 評価A 民事系 220.37 25位 第1 設問1 1 臨時株主総会を自ら招集する場合 ⑴ まず、乙社は、甲社の株主総会招集権者である取締役B(定款14条1項。同条2項に定める場合には他の取締役)に対し、会社法(以下、法名省略)297条1項に基づき、臨時株主総会の招集を請求する。 乙社は平成29年5月の時点で後者の総株主の議決権の4%を保有しているから、平成30年1月時点で「総株主の議決権の100分の3…以上の議決権を6箇月…前から引き続き有する株主」である。 したがって、乙社は目的である事項及び招集の理由を示して、か…
評価A 民事系 220.37 25位 第1 設問1 1 前段について ⑴ 本件事故が発生した、平成30年6月7日時点での甲建物の所有者は請負人Bと注文者Aのいずれか。請負人が完成させた仕事の目的物の所有権の帰属が問題となる。 ア ここで、請負は注文者のための契約であるから、請負人が完成させた仕事の目的物の所有権は常に原始的に注文者に帰属するとする見解がある。しかし、かく解しては、請負人は報酬を目的物の引渡しと引換えでなければ受け取れない(民法(以下、法名省略)633条)ところ、請負人の報酬請求権保護に著しく欠ける。 そこで、原則として材料の提供者に原始的に所有権が帰属すると解すべきである。判例…
憲法が悪かった割に公法系の順位はそこそこなので、行政法はまあまあ良かったのかもしれません。 評価A 公法系 125.49 231~258位 第1 設問1 1 B県は、本件事業認定は、取消訴訟の対象たる「処分」(行政事件訴訟法(以下、行訴法)3条2項)であるから、取消訴訟の排他的管轄に服するため、本件事業認定の違法性は本件取消訴訟で争うことはできない、また、後行処分の取消訴訟の中での先行処分の違法性主張を認めることは行政の早期安定の要請から妥当でないと主張し、本件訴訟の中で本件事業認定の違法性を争う、いわゆる違法性の承継は認められないと主張する。 2⑴ たしかに、取消訴訟の排他的管轄及び行政の早…
憲法はBだったので、あまり参考にならないかもしれませんが…。 評価B 公法系 125.49 231~258位 第1 立法措置①について 1 法案2条1号は、「虚偽表現」を「虚偽の事実を、真実であるものとして適示する表現」と定義し、法案6条は虚偽であることを知りながら、虚偽表現を「流布」することを禁止している。かかる表現の規制は、「虚偽表現」や「流布」といった文言の意味が不明確であることから、表現に対する萎縮効果が生じてしまうため、憲法(以下法名省略)21条1項に反しないかが問題となる。また、法案25条は法案6条違反に対して罰則を定めているところ、法案6条は構成要件といえ、これが不明確である場合…
ここでは、新株予約権に関連する問題として、敵対的買収に対する防衛策の許否(新株発行において問題となることもあり得ますが、論証は同様です)及び、やや応用的論点となりますが(といっても百選掲載判例であり、十分出題可能性はあります)、非公開会社における新株予約権の行使条件決定の委任の可否について検討します。 敵対的買収に対する防衛策 株主総会の承認を得て発動した防衛策(差別的行使条件付新株予約権無償割当て) 取締役会による防衛策(新株予約権の第三者割当て) 非公開会社における新株予約権の行使条件決定の委任 敵対的買収に対する防衛策 敵対的買収に対する防衛策としては、ブルドッグソース事件とニッポン放送…
会社法は第2編第2章第8節(199条以下)において「募集株式の発行等」について規律しています。「募集株式の発行等」には、新株発行及び自己株式の処分が含まれます。 ここでは、論文でよく問われる新株発行及びそれを争う方法について検討します。 新株発行 他人名義による株式の引受け 出資の履行の仮装と新株発行 有利発行 デット・エクイティ・スワップ 新株発行差止請求 「株主が不利益を受けるおそれ」(210条柱書) 「法令又は定款に違反する場合」(210条1項1号) 「著しく不公正な方法により行われる場合」(210条1項2号) 仮処分 新株発行無効の訴え 無効原因 不公正発行 総会決議欠缺 公示欠缺 仮…
ここでは、株式の譲渡及び自己株式の取得にかかわる論点について検討します。 株式の譲渡 株式の譲渡自由の原則 定款による譲渡制限 契約による譲渡制限 自己株式の取得 手続規制違反の自己株式取得の効力 財源規制違反の分配の効力 株式の譲渡 株式は、原則として自由に譲渡することができます(株式の譲渡自由の原則、127条)が、定款、契約、法律による譲渡制限があります。論文において重要なのは、譲渡自由の原則及び前二者による譲渡制限です。 株式の譲渡自由の原則 【論証:株式の譲渡自由の原則】 株式会社において株主は、持分会社における社員(606条1項)と異なり、原則として出資の返還を求める権利を有しない。…
⑴捜査法の基本枠組み ⑵捜査の端緒 ⑶逮捕・勾留 ⑷証拠収集 ⑸被疑者の防御 ⑹起訴後の捜査 ⑴捜査法の基本枠組み shihouyobi.hatenablog.com shihouyobi.hatenablog.com ⑵捜査の端緒 shihouyobi.hatenablog.com ⑶逮捕・勾留 shihouyobi.hatenablog.com shihouyobi.hatenablog.com ⑷証拠収集 shihouyobi.hatenablog.com shihouyobi.hatenablog.com shihouyobi.hatenablog.com ⑸被疑者の防御 shihou…
株式の譲渡(その他の場合にも以下の規定の適用があるかは後述します。)は、株主名簿の名義書換をしなければ株式会社に(非株券発行会社では、会社以外の第三者にも)対抗できません(130条1項2項)。 株主名簿の効力として、 ①資格授与的効力(株主として株主名簿に記載された者は、権利行使のたびに自らの実質的権利を証明することなく、株主としての権利行使をすることができる) ②免責的効力(会社は、株主名簿に株主として記載された者に権利行使をさせれば、その者が実際は無権利者であったとしても、会社に悪意・重過失がない限り免責される(手形法40条3項類推適用)(非株券発行会社においては生じないとする見解が有力で…
設立において論文で出題可能性が高いのは、出資の履行の仮装についての論点と設立中の発起人の行為の効果が成立後の会社に帰属するか否かという論点でしょう。 設立に関する責任(任務懈怠責任(53条1項)、出資の履行の仮装の場合の責任(52条の2第1項、102条の2第1項)、不足額填補責任(52条1項)、対第三者責任(53条2項)、疑似発起人責任(103条4項))も書くことがあり、重要ですが、これは条文を引いて責任を負うことを明示すれば足りることが多く、設立に特有の論点を展開する必要がある場合はあまりありません。 出資の履行の仮装 設立中の発起人の行為 設立中の会社 会社の設立自体に必要な行為 設立のた…
会社法総則は学習がおろそかになりやすい分野だと思いますが、出題の可能性はないとはいえないので、ポイントだけ抑えておくとよいと思います。 ここでは、重要と考えられる法人格否認の法理、名板貸責任、表見支配人、事業譲渡における譲受会社の責任(商号続用責任)について検討します。 法人格否認の法理 名板貸責任 表見支配人 商号続用責任 法人格否認の法理 法人格否認の法理とは、法人格が法律の適用を回避するために濫用されり、あるいは法人格が全くの形骸に過ぎない場合に、具体的な事例において、会社がその構成員またはほかの会社と独立した法人格を有することを否定する法理です。*1 【論証:法人格否認の法理】 法人格…
起訴された後には、起訴以前のような捜査が許されなくなることがあり得ます。 起訴後の捜査 被告人の取調べ 起訴後の捜査 【論証:起訴後の捜査】 捜査は第一次的には起訴・不起訴の決定を目的とするが、捜査の目的には公判の準備も含まれるから、起訴後においてもこの目的達成のため必要に応じて捜査を行うことは許され得る。もっとも、起訴後には、①公判中心主義の要請と②被告人の当事者としての地位にかんがみ、起訴前とは異なる配慮が必要となる。すなわち、①から、事案の真相解明は原則として裁判所の下でなされるべきである。また、②から、被告人には手続の主体的当事者としての地位が尊重されるべきである。 第一回公判期日前に…
この分野において論文で出題可能性が高いのは接見交通権だと考えられます。ここでは、秘密交通権、面会接見、接見指定について検討します。 秘密交通権 面会接見 接見指定 要件該当性 「捜査の必要があるとき」 「公訴の提起前に限り」 指定内容 秘密交通権 39条1項は、被疑者に弁護人等と立会人なく接見することを認めています(秘密交通権)。したがって、検察官等が接見に立ち会った場合には原則として違法となります(例外的に後述の面会接見においては立会いが許されます。)。問題となるのは、検察官等が立会いこそしなかったものの、取調べで被疑者に対して接見内容を聴取することが許されるか否かです。 【論証:秘密交通権…
ここでは、前回までに扱えなかった、領置及び取調べについて検討します。 領置 取調べ 身体拘束中でない被疑者の取調べ 身体拘束中の被疑者の取調べ 領置 捜査機関は、「被疑者その他の者が遺留した物」、所有者等が「任意に提出した物」を無令状で領置することができます(221条)。領置は無令状で行うことができますが、一旦領置した場合、捜査機関は返還を拒める、すなわち占有の保持には強制力を伴うため、強制処分であると理解されます。 「任意に提出した物」の領置については問題となることが少ないですが、問題となるのは「遺留した物」該当性です。 【論証:領置 「遺留した物」】 領置に令状が不要であるのは、占有の取得…
前回の記事では、令状に基づく捜査について検討しました。刑訴法は、令状がない場合であっても、「逮捕する場合」には、捜索・差押えを行うことができると定めています(220条)。 そこで、今回は、この逮捕に伴う無令状捜索・差押えについて検討していこうと思います。 逮捕に伴う無令状捜索・差押えの適法性が問題となる場合、展開することが考えられるのは「逮捕する場合」・「逮捕の現場」という文言の解釈(時間的・空間的範囲)、物的範囲、第三者の身体の捜索、連行の可否等の論点です。これらの論点の前提として、逮捕に伴う無令状捜索・差押えが許容される理論的根拠が極めて重要になります。 理論的根拠 時間的範囲(「逮捕する…
犯罪捜査のために証拠を収集する手段として、刑訴法は「差押え」「捜索」「検証」(218条~220条)「領置」(221条)「鑑定」(223条以下)「取調べ」(198条、223条)等を定めています。 ここでは、令状によって行われる捜索・差押え(検証)についてみていきます。 令状によって行われる捜索・差押えの適法要件は「正当な理由」(憲法35条1項)によって発せられた有効な令状の効力が及んでいること、手続が遵守されていることです。 「有効な」令状といえるためには、「正当な理由」が認められる必要があります。「正当な理由」とは、対象物が関連性(特定の犯罪との一定の結びつき)を有する蓋然性及び差押えの必要性…
ここでは、逮捕・勾留にかかわる問題として、逮捕前置主義(違法逮捕後の勾留請求も含む)、事件単位の原則、一罪一逮捕一勾留の原則(再逮捕・再勾留も含む)、別件逮捕・勾留について検討します。 逮捕前置主義 違法逮捕後の勾留請求 事件単位の原則 一罪一逮捕一勾留の原則 重複逮捕禁止の原則 再逮捕・再勾留禁止の原則 別件逮捕・勾留 逮捕前置主義 刑訴法は、「被疑者の」勾留請求時にすでに逮捕がなされていることを前提としています(207条1項、この条文は読み方が難しいですが、「前三条の規定」である204条~206条が逮捕後の勾留請求を規定しており、被疑者についてそれ以外勾留の規定がないことから、被疑者勾留は…
被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止しつつ捜査を遂行するための手段として、法は逮捕及び勾留を定めています。今回は逮捕・勾留の要件を中心に検討します。 逮捕 通常逮捕 現行犯逮捕 現行犯逮捕 準現行犯逮捕 緊急逮捕 勾留 逮捕 逮捕は、被疑者を比較的短時間拘束する強制処分です。狭義には被疑者の身体拘束から警察署等に引致するまでを指しますが、被疑者を引致した後さらに一定期間拘束を継続すること(留置)も含めて逮捕ということも多いです。 刑訴法は逮捕の種類として原則形態である通常逮捕、例外として現行犯逮捕(準現行犯逮捕)、緊急逮捕を定めています。 通常逮捕 通常逮捕の要件は①逮捕の理由と②逮捕の必要性です。 …
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