道標は犬
山で仕事をしていた日々、時折現場や集合場所にたどり着くのに手こずることがあった。 道が険しいという意味ではない。問題は目印として伝えられる物にある。 コンビニエンスストアや信号、目立つ看板などであれば問題ない。しかしそれが横倒しの電柱だとかひっくり返されたU字溝、打ち捨てられたバスタブだったりすると話が違ってくる。雪が降ったり積もったりすると、見落としてしまうからだ。 しかし何といっても山の中。実際何もないのだから、文句を言っても始まらない。 その中でも特に印象に残っている物がある。 犬だ。 「明日の新しい現場だけど」 翌日の作業員の配置が決まると、夜に担当者から連絡がある。 「ジャンボエビ釣…
2020/01/27 22:27