最高気温32.9
台風一過の風が強い日だった。 仕事もひと段落して、俺はゆっくりと夜更かしをして家で学校の課題をこなしたり、楽器の手入れをしたりしていた。と思ったら疲れが溜まっていたのだろう。眠ってしまっていた。 これから書く話はそこで見た夢だと最初に宣言しておく。 「は……?」 気がついたら多分よく知っている街の知らない装いを目前に晒して、俺は立ち尽くしていた。 「何してんだよ!」 「ひい!ごめんなさい!」 語気の強い男の声に反射的に謝ってしまう。 「謝ってる暇あったら走って」 腕を、掴まれる。思いの外、俺と同じくらい細い腕が伸びてきた。 その腕に俺は見覚えがあった。思わず見上げたその顔にも。 「は?俺の顔に…
2021/08/10 21:53