黄昏の日々(十二)待望の修学旅行
ぼやぼやしている間に、昌太も人並みに六年生になつていた。 そうなると、待望の修学旅行に行ける。 彼は、日頃の食べたい物が食べられるチヤンスだと思つていた。 行先は、大連から奉天(現・瀋陽)を通過して、新京(現・長春)まで、帰りに奉天と撫順に立ち寄つて帰る、五日間のコースである。 昌太は、先ず茹玉子、駅弁当、落花生等を、列車が主な駅に停車の度に買つて食べた。 余程、食い物に欠乏していたのだろう。級友の殆んどが、家族や親戚の人に、おみやげを買つて楽しんでいると云うのに、彼だけはおみやげ無しで、手軽な身なりである。 汽車の窓から眺める景色は、右も左も地平線の連続で、高粱や包米(トウモロコシ)畑が見え…
2019/07/19 10:00