だから僕は振り向かない
首筋に触れる風が冬の訪れを伝える。 ポケットから抜いた右手もまた同じように冬に触れる。塗装が剥げたファスナーを素早く首元まで閉めて、右手を元の位置に戻した。そしてまた何もせずに黄色いブロックの内側で立ち尽くす。 休日の運行間隔を把握してない僕は毎回こうして無駄な時間を費やしてしまう。待ち合わせに遅れないように早く出るべきと動いた朝は結局ここで立ち止まり、僕より遅く家を出たであろう人たちが街へ運ばれていく姿を眺めることになる。その都度、電光表示に目を向けるが決して到着時刻が早まっていることはなく、むしろ無断で遅れることが目立つのだが、時間通りを忠実に守ろうとするその几帳面さにため息が出る。 どこ…
2023/12/25 00:48