ほんとの話じゃ無い話 完
それで納得した。私の家は高台を選んで入居したマンションの9階で、近隣の避難所の混雑を避けた知人一家や電気の消えた家の静けさに耐えかねた階下の家族が避難しにきたのだ。 私は隅田川が氾濫しているかもと思って街を見たくなった。ベランダに出ると、母親と避難してきた階下の部屋の女の子がいつもリヴィングに置いていた望遠鏡を顔に押し付けて片手で手を振っていた。 何が見えるの? 人がいるよ。 この望遠鏡じゃ見えるはずがないと思ったが、人がいるのは間違い無いのである。ラジオでは河川の氾濫の影響で四人が行方不明と報道されている。私がベランダから臨める街の景色に死体や、痛みや、不安が、隠れている。 風邪引くかもしれ…
2019/03/07 14:46