前進、もしくは後退に値するもの・1
「亜美は弱いな」そう翔によく言われた今までの恋人たちには「どこか冷めているよね」とか「ひとりでも生きていけそうだよね」そう言われてきたけれどそれは本来の私ではなかったのかもしれない翔の前ではまるで子どものように涙したり、大声で笑ったり嫌なことには嫌だとはっきり言うことが出来たともかく、翔は私が泣くたびに大きくてごつごつとした右手で私を抱き寄せもう片方の左手で髪の毛を撫でられる度に私たちは深く愛し合っているという実感で満たされていた3週間振りに逢った日の終盤に車を河川敷の駐車場に停めて真冬の澄んだ空の下星を眺めていると「星が綺麗だね」そう言うのと同じくらいの口調で「俺たち、別れないか?」そう言われた時には一瞬意味が解らなかった少し間が空き、彼がもう一度ゆっくりと「ごめん、好きな子が出来たんだ」そう告げられた時に私...前進、もしくは後退に値するもの・1
2018/04/24 14:54