小説「愛の終わりは最高のデートで幕を下ろそう」1
わたしの中の海の記憶。あの日あなたと見た海をわたしは忘れない。あなたとの愛の終焉の時。わたしは海を見たいとあなたに言った。付き合い始めた頃にふたりで見た思い出の海を。愛の終わりは最高のデートで幕を下ろしたいから。第1章愛の終焉わたしの中に海があるわたしの中に忘れられない海がある。心深くに刻んだ海がある。銀色に輝いて煌めく波。遠くなるに従い重なり碧く霞み、真っ青な空とひとつに溶け合う水平線まで続いて、そのゆらゆら揺らめく遥か水平線の辺りに白い船がいる。毎朝訪れる岬の崖から、今わたしが見ているブルターニュの深い翠色の波が寄せる海ではない。それは遠く離れた祖国の海。わたしの奥深く大切に仕舞い込まれている遠い日の記憶。今は亡きフランス人の夫との間に奇跡的に授かった息子もとっくに独立して自分一人になり、ガランとしてしまっ...小説「愛の終わりは最高のデートで幕を下ろそう」1
2018/03/31 14:25