夏の濃度

夏の濃度

正直、夏は苦手だ。なぜなら、夏は濃すぎるからだ。 生きていくだけで精根を削り取られるような思いにさせる、あの空気。むせ返るほど匂いと気配に満ちた空気。温度の高い空気は密度が小さく軽くなるはずなのに、僕の科学的知識は夏の息の前に倒れ伏すしかない。これはつまり、夏に圧倒されているということだろうか? 半死半生のヒトの傍らで、生き物の気配は濃い。目に見えるものも、目に見えないものも。なにも霊魂のことを言っているのではなくて、もっとリアリスティックに、菌とか細菌とか、そう言った類のものだ。どうしようもなく濃い、重い空気の中には、ここぞとばかりに躍起になった何某かが蠢いているように思ってしまう。霊感がな…