空白を走る

空白を走る

電車に乗っている。 いつ乗ったのか確かではないけれど、もうずいぶん長い間乗っているような気がする。 どこかで見たことがあるような、だけど全然知らない電車は、どこかで見たことがあるような、だけど全然知らない街の中に、きれいな曲線を描いていく。 僕は窓際の席に進向方向を向いて座り、窓ガラスに重く頭を預けている。時折何かにつまずいたような振動がこめかみを刺激する以外は、妙に静かで、どこか白々しくさえ感じる。 隣には誰かが座っているけれど、顔を盗み見るほどではない。 僕はひとりだった。 電車は時折ふと思い出したように速度を緩め、プラットホームへと滑り込んでいく。どこもだいたい同じようなものだった。最後…