辻原登「冬の旅」
とある日に刑務所から出所した男の行方は? 5年の刑期を終え滋賀刑務所から出所した緒方(主人公)の所持金は17万とわずかだった。大阪の街に戻ってくると辺りを彷徨い、酒を飲んで女を買った。そして博打に手を出してしまうと、わずか3日で金は底をついた。やむなくドヤ街へ行き日雇いの仕事を求め――、腹が減れば公園の炊き出しにあずかった。寝る場所を求めてシェルターへ行き、定員オーバーならば公園で丸まって寝てしまう。どうしようもない男。冒頭では緒方のそんな「今」が語られる。しかし緒方は好きでこうなった訳ではないのである。現在→過去(回想)→現在(その後)という作りの今作。描かれるのは転がり始めて、その勢いを止…
2017/03/31 20:00