切れた。

切れた。

ある朝目覚めたら。 ‥毒虫には幸いなっていなかったけど、胸元にいつもの重みを感じなかった。 コーヒーを淹れる手を止めて、首の裏に回ってしまっているであろう十字架を手で探す。 無い。 青ざめた。 走馬灯のように巡った昨夜の記憶。 電車、約10分の徒歩、雑踏、縁日の屋台、花火、暗がり、、。 絶望した。 あんな日にもし落としたならもう絶対に戻ってはこない。 取り敢えず家の中を探してみようと淹れたコーヒーをそのままにいつもの動線を辿る。 幸いにも自分は不精なので移動するパターンは大体決まっている。 台所、トイレ、風呂場、、、。 無い。 残すは自分の部屋だけ。そこになければもう希望はない。 祈りにも似た…