西のマゾが死んだ
西のマゾが死んだ。 それは段々と、夏の暑さを肌が忘れていく、そんな季節だった。あれだけ暑くて嫌だったのに、いざ涼しくなると、あぁ、もう今年は海に行けないんだな、と、哀愁が込み上げてくる。 行きつけのハプニングバー。相変わらず店内は薄暗く、換気が悪い。かつてこの店で『二刀流』の伝説を残した大谷さんも既に居なくなっており、あの時の熱狂ぶりはもうない。 「知ってますか?錦糸町のハプバー。あそこ摘発受けたんですって。」 隣の禿げ上がったおっさんが僕にそう語った。大量の煙を吐きながら。彼はヘビースモーカーだった。臭いが服に付くからこっちを向いて話すのはやめて欲しい。彼の頭頂部の二つの小さな毛の生え方は今…
2025/02/21 17:31