道鏡事件の真相と和気清麻呂の処遇
道鏡事件は、悪僧道鏡が称徳天皇をたぶらかして、皇位の簒奪を狙った事件だとされて来た。道鏡一派が宇佐八幡宮の神託を偽造したのだが、和気清麻呂が八幡神の正しいお告げをもたらして撃退したという続日本紀の物語だ。道鏡と称徳天皇の男女関係がセンセーショナルに扱われることも多い。 しかし、続日本紀の記述は不可解なところがあり、記事をそのまま鵜呑みにするわけには行かない。そもそも八幡神のお告げの真偽などと言う話の全体が神話めいて真実ではあり得ないのだ。 続日本紀は編年体で、位階の昇進とか、飢饉があったとかの短い記事が淡々と続く。時折天皇の声明である宣命が現れ、この部分は少し長い。漢文ではなく助詞を入れ込んだ宣命体と言われる書き方で、天皇の言葉を書記が記録したものだ。 道鏡事件の推移を記事からたどることは難しい。769年9月25日にいきなり宣命があり、これに長い解説文が付き、6日後にもう..
2018/07/28 20:52