4月
「いまごろはまだ山では雪が降る」と職場のひとが言ったその瞬間わたしは雪が降ってくる灰色の空を見上げていた窓から光の入るオフィスでパソコンの前に座ったままで「わたしも最近どこかで」と言いかけてそれが夢の中だったことを思い出した「こんな季節にこんなに寒い。ここでは雪も降る」そのときわたしは冷たさを洗いたてのシーツのように清潔に感じていたんだそのこともいまこの瞬間のように身体のうちに覚えていると気づいた異なるテンポの侵入を許してしまったためか時の感覚がゆるみ午後は珍しく眠たくなってしまった熱いコーヒーで眠気をかき混ぜて薄めた仕事の連関の網の目を淡い意識に解かせてひさしぶりに空まだ明るいうちにオフィスを出たもう見えなくなっている陽に操られて動いていく影の意識をよけながら駅に向かう早い時間では電車は帰宅ラッシュでほ...4月
2025/06/20 20:52