あどけない足音

あどけない足音

窓を閉めて風を閉め出すと夜は静かな箱になる玄関からリビングまでの廊下四つの扉に囲まれた細長い空間を部屋着で裸足で歩く私の足音が浮き上がり耳の道に入ってきたあどけないあしおとだったとがらないアピールしないクエスチョンマークの足形の見えそうなひっそりした音影が自分から離れてしまう話を聞いたことがある足音も自分から離れてしまうことがあるのだ離れないと聞こえないいつも離れているのにいつもは聞こえないあんたがたどこさあたしはひとりでもあんたがたは複数だよリズミカルにもなるよ引きずるようにもできるもったいつけたり連弾したりいろんな色合いつけていろんな連れ合いあるはずなのだけどわたしのはペタリペタリ重くもなく軽くもなく無垢のように色がなかった外から見える家々は過去と未来を孕んでその壁の向こうの棕櫚の葉の形鮮明に染め抜く...あどけない足音