命を繋いで
蔵王も奥泉ヶ岳も白さを増す季節裏の川には命を繋いで一生を終えた鮭たちの姿が累々と言えるほどに横たわるすでに水蘚に覆われつくした鮭卵を守るかのように堀りあげた岩に引っかかってゆれている鮭うつろな目と歯をむき出した表情は最後の生き様のすさまじさを想像させるただただ命を伝えるためだけに生きてきたのだろう思いが顔にも傷だらけの身体にも見えるような慰めるごとく流れ寄る落ち葉は死化粧か献花かこの川で生まれこの川を下って太平洋で育ちこの母なる川へ戻ってきた不思議な本能生きることの目的使命を果たすためだけの数年「死」という人間界では恐れ忌まれる出来事が彼らの中では輝いているように見えるもっと永く生きていたかっただろうか多分そうではあるまい彼らは満足して死んだのだろう生れてきたこと生きてきたことは今日この時に立派に完結したのだか...命を繋いで
2014/11/18 18:04