【ふたり野営部】渋い男になりたくて、夏。【巾着田】

【ふたり野営部】渋い男になりたくて、夏。【巾着田】

西武線の飯能行き列車に乗ると、三十歳だった頃を思い出す。 アコースティックユニットを解散し、ミュージシャンとしてとくに上手くやれているわけでもなく、恋人がいるわけでもなく、ただ成り行きのままにフリーターをしていた俺は常々どこかに不安のようなものを抱えながら毎日をやり過ごしていた。 月並みでつまらないのだけれど『三十歳は節目』という考え方に影響されていたのも、丁度そのときだ。 実際三十歳ジ…