足利直義・楠木正儀~暁の序2

足利直義・楠木正儀~暁の序2

直義の南朝帰順を巡り、南朝の将、楠木一族の若き棟梁・楠木正儀を高取城に迎えたのは、山全体が本格的な冬場を迎える直前のことだった。 至る所で冬支度の素振りを見せる山中は、慌ただしい様相を見せながらもどこか殺伐ともの寂しい。ひときわ小高い場所に構えた城内の館から見渡す吉野の山々、 城下の険しい山道に、早くも冬の気配を感じる直義の視界へ、やがて楠木の者とおぼしき人影が姿を現した。