音楽療法士がグリーフを経験するとき

音楽療法士がグリーフを経験するとき

“When a Music Therapist Grieves(音楽療法士がグリーフを経験するとき)”という記事が、米国音楽療法学会誌 Music Therapy Perspectives の最新号に掲載されました。今回の号は、音楽療法におけるEthics(倫理)に焦点を当てたものです(音楽療法にも「倫理綱領(Code of Ethic)」というものがあります)。 私はセラピスト自身のグリーフ(悲嘆)をテーマに、それに伴う倫理的な問題について書きました。 セラピストがグリーフを経験している時、グリーフと向き合う患者さんやご家族をサポートすることができるか? セラピスト自身がグリーフで悩んでいる時、効果的なセラピーを提供することが可能か? 音楽療法士も人間ですから、家族の死やグリーフなどを経験します。それがどのようにセラピーに影響を与えるかを考えることは大切ですが、あまりリサーチされていないテーマですし、オープンに語られることも少ないと思います。この記事が何かのきっかけになればと思い、書きました。 兄の死後、私がグリーフを乗り越えていく(get through)きっかけとなった出来事のひとつに、ある患者さんとの出会いがありました。拙著「ラスト・ソング」で紹介した時子さんという女性です。彼女は沖縄戦を経験し、戦後アメリカに移住した人でした。人生の最期に過去の記憶に悩まされていた彼女の葛藤や回復を目の当たりにしたことが、自分のグリーフを理解し、向き合う(work through)ことにつながりました。 そのことについても今回の記事で書いたので、彼女のストーリーを英語圏の人にも紹介できたことが嬉しかったです。記事は英語ですが、Abstract(要旨)はこちらになります。