「名もない秋の日曜日」

「名もない秋の日曜日」

大きな台風が二つ通り過ぎて行ったあとで、街に乾いた風が吹き始めた。残された夏の気配は緩やかな流砂のようにゆっくりと地中深くへ沈み、時は静かな川の流れのように移ろいだ。 その年の秋は、僕らにとっても実に陽だまりのような季節だった。現実世界での十分間が、僕らの...