『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』/スティーヴン・ウィット
従来の音楽ビジネスが崩壊していく季節の様子を、①mp3の産みの親であるドイツ人技術者、②音楽業界のトップエグゼクティブ、③ユニバーサル・ミュージックのプレス工場からCDを盗み出しては違法海賊サイトに音源をアップしまくった若者、という三者の物語を通して描いたノンフィクション。出版当時かなり評判になっていたのも納得の、リーダビリティとおもしろさを持ち合わせた一冊だった。 「音楽をタダにした」大元の原因とも言えそうな音源圧縮技術だけれど、mp3は開発当初、業界団体の政治的な理由によって、企業での採用を逃してしまっていた。だが、それが逆に功を奏して、フリーで使える優秀な技術としてインターネットを通じて世のなかに浸透していき、結果的に世界標準となってしまった、ということらしい。本書ではこのあたりの経緯が詳細に描かれていて、なかなかわくわくさせられる。ちょっと教訓話のようでもある。
2022/11/30 20:52