『闘争領域の拡大』/ミシェル・ウエルベック
ウエルベックの小説第一作。この自由資本主義社会において、人間の闘争の領域は、経済領域のみにとどまらず、性的領域においてまで拡大している。経済の自由化を止めることができないのと同様、セックスの自由化もやはり止めることはできず、そこには必然的に格差が生じてくる。すべての男と女は、勝者と敗者、持てる者と持たざる者とに分けられるのだ。だから我々は、モテる人を羨んだり、モテない人を蔑んだりし、その上下関係のなかで、階級闘争を行っていくことになる。いまや誰もが皆その価値観を内面化しているために、性的領域における闘争の外部に自分を置くなどということはまず不可能で、我々はただただ孤独なレースを続けていく他ない…というのが、本作の主人公の考えであり、おそらくはウエルベックの主張だと言えるだろう。
2018/06/17 15:26