バイク 雪女完
▼湯に浸かりっぱなしで、疲れさえ感じ始めていた直子の耳に、初めてと言っていい子どもたちのざわめきが耳に飛び込んできた。手を触れることもなく終わった、園部透を揶揄するものでも、直子にあてこすったものでもない。何と彼女の耳に、響いてきたのは、「雪が解けたら、山に入って、雀蜂を退治するぞ」という叫びだった。子供たちは一人の声に刺激されて、別な言葉を口々に叫び始めたのだ。その中には、家でつかっている防毒マスクを持ち出して,雀蜂に害虫退治の毒を振りかけてやる、と声を張り上げた。こうなると、直子はだまっているわけにいかなくなった。湯から出ると水だらけの着衣を絞って着た。そのうち子供たちは、自分たちの声をバネにして、山の方角へ歩き出した。直子は着た衣が、パリパリと凍りついていくのに逆らうように、実家をめざして走り出した。それ...バイク雪女完
2019/06/02 12:54