『珊瑚集』
永井荷風訳。 岩波文庫。 「アルチユウル・ランボオ」の、 そゞろあるき 蒼き夏の夜や 麦の香に酔ひ野草をふみて 小みちを行かば 心はゆめみ、我足さはやかに わがあらはなる額、 吹く風に浴みすべし。 われ語らず、われ思はず、 われたゞ限りなき愛 魂の底に湧出るを覚ゆべし。 宿なき人の如く いや遠くわれは歩まん。 恋人と行く如く心うれしく 「自然」と共にわれは歩まん。 は大好きな詩だが、 最初に読んだのは堀口大學訳だった。 大學訳の歯切れよさも、 もちろん魅力的だが、 荷風訳は流麗で美しく典雅で、 ..
2021/05/11 15:53