もう一人の弟
大和の興福寺に出家した義輝の弟である覚慶がいたが、三好、松永に捕えられて幽閉されていることを藤考は、兄の三淵藤英から聞いた。三淵藤英は藤考とは実際の血のつながりはないが、兄弟として子供の時から過ごしてきた。藤考とは違って、感情の起伏の激しい、武勇に優れるが血気にはやるところもある人物だった。ともに覚慶を助け出して、将軍職につけ、再び室町幕府の再興を目指そう。三好、松永は四国から、義輝のいとこにあたる足利義栄を呼び寄せ、将軍にしようとしているようだが、義輝の弟である覚慶こそが将軍にふさわしい。藤考は、義理の兄の話に心を動かされた。義輝のもう一人の出家していた弟は殺された。今は幽閉されているとはいえ、覚慶もどうなるかわからない。将軍になる気があるか、ないかは本人次第だが、まず命だけは助けねば。藤考はもう一人の弟を救...もう一人の弟
2010/03/07 23:42