ある夜とそこにある隙間

ある夜とそこにある隙間

砂利敷きの私道に車を乗り入れると、傾ききった陽の中で砂埃が膨れ上がった。この時間、アパートの駐車場にはまだ彼女の車の他車はない。彼女はエンジンを切るとハンドルに両手を置いて、一回大きく息を吐いた。車内を満たし始めた薄闇が僅かに震る。彼女はもう一度短く息を吐くと、助手席に置いたスーパーの袋とバッグを取り車を出た。 部屋の前でご近所の主婦とすれ違う。軽く会釈だけして、部屋の鍵を明ける。部屋の中か…