影

海の音が聞こえた。渚に座って、一人海を見ていた。あたりはすでに何もない真っ暗闇で、遠く港の街灯が、オレンジ色にぼんやりと霞んで見えていた。渚に打ち寄せる波の音というか、この日の暮れた埠頭の上では、コンクリートの隙間に入り込んだ波が行き場を失って空気を含んだような、とぷとぷという...