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その男(6)
一日に一度コーヒーを飲むことが、杉田の楽しみであった。行きつけの喫茶店で、濃いコーヒーをゆっくり時間を掛けて飲み、常連客ととりとめの無い世間話をする。それが唯一、至福の時と言えた。いつも顔を会わせる何人かの客は、世の中の風に煽られ、不景気
2007/12/30 08:23
その男(5)
しかし、事態は急転した。見落とした原因はどこにあるかなどと、今さらのように言ってきたのである。杉田は、自らそういう落とし穴に入るつもりはなかったので、責任の所在よりシステム論で通した。制作過程のことならともかく、印刷入稿の最終責任はあくま
2007/12/29 10:36
その男(4)
杉田がフリーのライターを始めたのは、二年前であった。 広告業界で二十数年間デザイン畑を生きてきた杉田は二年前、それまで一度も経験したことがない、人生が百八十度ひっくり返るくらいの、トラブルに巻き込まれてしまった。それは、自分が描いた夢の「
2007/12/28 08:52
その男(3)
その男は一瞬微笑んだように見えた。 杉田は、空を見上げたまま、マイルドセブンに火を着けた。ほんの一瞬、汚れのない自分に戻れたことと、久し振りに“人間”と話しができたことを、密かに祝いたい気分になっていたのだ。 二メートルほど離れた所に、そ
2007/12/27 10:07
その男(2)
その男は、残っていたカップ酒を、ひと口飲んで言った。「にいちゃんの目には、ビル街も目に入っとんやろ。それじゃなんも見えへんのや」「確かに街もビルも目に入っとるな。雲だけ見るんやな」 男はそれには応えず、わずかに残っていた酒のビンを天井に向
2007/12/26 11:57
2007年12月 (1件〜100件)
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