さよなら、の手紙
さようなら、をきめた途端、困惑とともにそこらじゅうに退屈で上品な幸福が溢れた。私の様な、怖くてひとの目を視られない、それでいてあたたかな誰かに強く結び付いていたがるのに甘えるのを心底恐れる、そういう種類の人間はこういう幸福にすわりが悪い想いを抱く。ひた隠しにそのすわりの悪さを不道徳とみなしては抑圧し、子供だましのつもりか笑顔を、笑顔を・・・・・・。想い出になるとどんな人も急に可憐に思えて恋しくなる。「もうすぐいなくなるから」と言う人、「今までありがとう」と言う人。なぜ人は一人になった時でなきゃ、愛の意味に気づけないのだろう。しかし裏を返せば、一人になりさえすれば、その時には必ず愛の意味に気づける、って事か。私が近付けば「愛してるなんて言ってないけど?」としらばっくれる。私が遠のけば「もっと話してくれ、話そう」と...さよなら、の手紙
2015/02/26 21:32