【創作話】情動の残滓 ~エモーション・ブローカー~ ⑤
第五章:情動の夜明け 俺たちが解放した感情データは、瞬く間に世界中に拡散した。それは、一時的なシステムの麻痺以上のものを引き起こした。人々は、自分自身の内から湧き上がる、生々しい感情の奔流に直面したのだ。 長年、人工的な感情に依存してきた富裕層は、突然の感情の洪水にパニックを起こした。一方、感情を売ることでしか生きられなかった貧困層の人々は、失ったはずの感情が蘇る感覚に涙した。社会は、大きな混乱と変革の時を迎えていた。 感情売買システムは、その根幹を揺るがされ、機能不全に陥った。感情管理局は解体され、責任者たちは次々と拘束された。橘もまた、逃亡中に逮捕されたと聞いた。 俺とユイは、ロストエリア…
2025/06/15 19:00