第一の話 露天風呂(前編)

第一の話 露天風呂(前編)

この話は私の叔父から聞いた話である。私の叔父は若い頃、写真が趣味でリュックを背負ってはあちらこちらを旅して撮影していた。そんな時、叔父は円空仏に興味を持ちいつものようにリュックとカメラを片手に出かけた。そこはM市から電車に乗って終点まで行ってそこからバスに乗り換え有名な観光地まで行くルートで、その先に円空仏が沢山点在していたそうだ。ところが叔父は一人旅の気まぐれからなのか何故か途中でバスを降りてしまった。その内、日が傾きに今夜の宿を決めないといけなくなってきた。夏の一番の観光シーズンで世の中は夏休みときている。おまけに不精な叔父は宿の予約なんてしていない。毎度の事ながら旅先で途方に暮れることになった。明るい内はあれだけいたハイカーたちの姿もまばらになりその内、段々と薄暗くなってくる。いつもぎりぎりで慌て出すんだ...第一の話露天風呂(前編)