バサラ将軍 安部龍太郎
南北朝の争いによって朝廷の権威が失墜した南北朝時代は、人々が己の力だけを頼りに生き始めようとした時代である。その象徴的な言葉がバサラ(婆娑羅)だ。バサラとは梵語で金剛石のこと。この時代に、バサラは神を恐れぬ勝手放題、贅沢三昧な振る舞いを指す言葉になっていた。その典型的な人物が足利尊氏の配下の高師直や佐々木道誉である。本書には、南北朝の不安定な時代を背景に描かれた、視点の異なる珠玉の短編、「兄の横顔」「師直の恋」「狼藉なり」「知謀の淵」「バサラ将軍」「アーリアが来た」が収録されている。
2021/07/27 14:29