金木犀の香り
* * * 私はクラスメイトの山岸さんと夏祭りに来ていた。何度も着ている朝顔がらの浴衣は、いつもと同じように私の白い肌に良く似合っていた。 神社の境内で毎年行われるこの夏祭りは地元の人が一斉に集まる唯一の機会だと言える。わりと大きなこの神社の境内には、多くの出店が立ち並んでおり、夜の暗闇をぼんやりと、しかしはっきりと祭り色に染めていた。 山岸さんはりんご飴を片手に、黒地に金魚柄と言うなんとも古風な浴衣の袖を揺らしながら、このお面が可愛いとか、これを食べ終わったら次はカルメ焼きを食べようなどとはしゃいでいる。そんな彼女は古風な浴衣とは逆に、とても整った幼顔をしている。そのコントラストはやはり、男…
2020/01/13 14:21