夏休み前の琴。

夏休み前の琴。

夏休み前の琴 夏休み明けの始業式。金色の派手な弦を張った琴が登校してきた。 クラス中が騒然となった。夏休み前までは学校指定の白い弦を張っていたはずの琴が。目立つことを嫌い、人目を避けるように隅の方で大人しくしていたあの琴が。 ざわついたのは生徒たちだけでなく、先生たちも同じだった。教室の外で担任の先生が私を手招きで呼ぶのが見えた。 先生は私に状況の説明を求めてきた。どうやら私と琴が中学3年の時に同じクラスだった事を誰かから聞いたらしい。 「いったい琴はどうしたんだ?」 「あんな事をする子じゃなかっただろう」 「夏休みに何かあったのか?」 私だって知らないよ。琴のことなんか。 高校に入ってから全…