『A地点から』(小説・一話完結・オリジナル)

『A地点から』(小説・一話完結・オリジナル)

『A地点から』 西王地真 千日前通りを進むと〈笑いの館〉の看板が見える。少なくとも、館が大改装されて以降では初めての訪問だ。 今や無機質なIDスキャナしかない入口へ進む。「マイド!」という人工音声と共にドアが開いた。棺桶を思わせる真っ黒な空間だ。勇気を出して中に入る。すると「A地点に参ります」という音声が聞こえ、すぐに奥の扉が開く。 また同じような黒い箱型の空間だ。ただし今度は中央に椅子があり、奥と左右の壁が煌々と光っている。俺はゆっくりと椅子に腰掛け、右の肘掛けの穴に杖を挿す。左の肘掛けに被せてあるヘッドホンを耳に当てると、音声ガイドが始まった。「ようこそ〈笑いの館〉へ。しかしそもそも一体『…