近藤史恵 猿若町捕物帳 『巴之丞鹿の子』
本シリーズの探偵役であり実質的な主人公は南町同心で三十前後の青年ですが、彼に付き従う小者の八十吉という中年男の視点で物語は描かれています。この2人だけだと性格も生活もひたすら地味で面白みも色気もないのですが、吉原の花魁や人気者の歌舞伎役者を絡ませることで作品に華やかさを添えています。江戸を舞台にした時代小説が数ある中で、本作は「猿若町捕物帳」と題するだけあってお芝居や役者に焦点を当てたシリーズにしているのが面白いですね。
2019/03/15 00:00