詩集
「風姿花伝」~世阿弥の能論より満月が冷たく冴える春の夜の桜の散る花びらの舞う中で篝火に照らし出された柔らかい灯明の誰もいない能舞台張り詰めた様な静寂の奥に白妙(しろたへ)の如く年を古りても汚れない少年の舞のような美が立っているそれは移ろう秋の夕日のさびしさにも香る人は生まれつき精神に人間らしく生きるための鮮やかな矜持の花を持っている春夏秋冬の移ろいの中で時折々の花が咲くように老いにも病の中にも映える花があるしかし、この花は枯れやすく散る時は桜の様には美しく散らない闇の中に跳梁する魑魅魍魎を見れば生きながらに鬼に堕ちた人間の心がある丑の刻の冷えた夜に御神木に恨みを託す光を失い盲いた沼の如き煩悩が月明かりを汚す闇に現れた鬼は底なしの常夜(とこよ)に踏み入れた己の狂気新緑に散る桜が翌年にまた花を咲かせる様に桜は桜らし...詩集
2020/01/23 22:00