空っぽになって満たされた日

空っぽになって満たされた日

そういうものあれは冬の寒い午後だった一人生活に疲れてしまってあの地を目指して歩いたわ心の中にはかつて愛する人と交わした言葉の一つ一つが残っていた人生の中で一番華やかだった頃の残像と共に輝いていた時間(頃)のなんと残酷なことか年老いてもあの輝きはまだ頭の奥に強く残っているわヨレヨレの足取りだった私の力強い命の灯火は何処へ行ってしまったのだろうかともう今となっては何もこの心には響いてはこなくなってしまったと私は二人で暮らしたあの部屋の温もりを求めて歩いていた心の中ではあの人が私に残してくれた暖かい言葉が渦巻いていて若き頃の私達の笑い声と歓喜の涙流した残像がぐるぐると廻っていたわ輝いていた時間のなんと残酷なことか凍てつく様な空気の中ようやく辿り着いたそしてそのかつて暮らした部屋の重たい扉を一気に開いた古びた鉄の鍵湿っ...空っぽになって満たされた日