憧憬
真っ白い廃墟のような所でした。 緑の深い森に囲まれていて、子供のわたしは入り口へ続く白い石の階段に座って、手をついたなりで掌に触れる石の感触を確かめるように、階段の表面を撫でていました。 空の色を見ると、高く青黒い所から森の際にかけて色あせていくようなグラデーションになっていて、きれぎれの雲のそばでは星が小さく硬い光を瞬かせていました。 ぼちぼち行ってみようかなと思ったので、階段と同じような真っ白い石でできた建物に入りました。 中はやっぱり真っ白で、真っ白い壁、廊下、天井、それだけでした。 窓や扉のような開口部はあちこちにあるのですが、窓や扉が実際にはまっている訳ではなく、四角い穴がぽっかりと…
2022/11/10 23:48