1994年10月 渋谷悲しんでいても、毎日はやってくる。残酷だけれども生きているものには生活があり、やがて忘れていく・・・しかしそれは救いでもある。奈保子と久…
「貰ってもいい?これ」「うん。潤のかーちゃんが、欲しいものがあれば好きなの持ってっていいって言ってたから。写真以外はいいと思う。服もいいよ」そう言いながら、ポ…
潤の部屋は畳の上にカーペットが敷かれ、その上にセミダブルのベッドが置かれていた。障子はところどころアクセルが破いたらしい跡が見えた。ひんやりと冷たい空気を吸い…
目の前の障子が開いて、潤の母親が顔を出した。「奈保子さん・・・来てくださったのね」久し振りに会う潤の母親は、昔に比べて2回りも小さくなったようだ。眼の下のくま…
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★潤の家は、千葉のU市からほど近い所にあった。礼服が無いので、黒いブラウスにスカー…
はらはらと涙を零しながら、ポンちゃんが囁く。「お前のところにも、挨拶をしに行ったんだな、あいつ」「挨拶・・・?」俯いていたポンちゃんが、キッと顔を上げる。「潤…
学食は混みあっており、空いた席も無かった。もう3時を過ぎていたけれど、どうやらここはランチをするというより、友達と騒ぐ場のようだ。「座る場所、ないね」久実ちん…
小説 These Dreams 第58話 第6章 1994年
【第6章】 1994年6月 御茶ノ水久実ちんが行こうとせっつくので、奈保子は気乗りしなかったが、M大学に乗り込むことになった。M大学のキャンパスは周りをぐるり…
長いこと仕舞っていた冬の制服を箪笥から引っ張り出すと、しばらくの間は染み込んだナフタレンの匂いがする。そろそろマフラーが欲しくなる頃だ。ソニプラだったら、いい…
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