『忘れたがり』
名前を呼ばれたような気がして、心地よい微睡みから引き戻される。 その響きはあまりにも甘美で、目を開けるのが惜しい。だが数秒の後、ありえないと冷めた気持ちになった。 義兄が名を呼ぶことはない。己に限らず、誰の名も呼ばない。そういう文化で育ったのだ。 『名を明かすというのは、魂を曝すのと同義だ』 いつぞや言っていた。だから呼ばないし、呼ばれない。 都合のいい夢想をしていたバツの悪さから、バチリと…
2024/11/27 00:00
2024年11月 (1件〜100件)
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