声 (中編)

声 (中編)

私の心にはまるで性質の違う “二人の自分” がそれぞれ確固とした地歩を占めている。一方は粗野で放埒な無法者、そしてもう一方は厳格で愚直な審判者といった風で、常に己の領地を広げようとせめぎ合っている。彼らの力関係は本来拮抗しているべきなのだが、私の場合は “審判者” が優位に立っている精神的に不健全な状態にある。それがために優勢な “審判者” は、私の行動に対しても鹿爪らしい説諭をくどくどとたれて指図する。私が...