風の斬撃 5話
共和学院の主要な校舎群は第二次世界大戦後ほどなく建てられた古いものなのだという。その割には堅牢な建物で、風格があるといえばある。だから学院の校舎をくよんやこうき、天風家の面々もそれなりに気に入っていた。それがこの夜、出火し炎上しつつあるというのだから。タクシーから降りた一行は、消防車や消防士の邪魔をしないようにしながら鳥羽夫婦を探して院長公舎へと向かった。この火災も自分たちに対する攻撃の一環なのだろうか、と始は考えに耽る。今年の春の余の誘拐未遂事件にはじまって、いままでどれだけの攻撃を受けたか分からない。今回もそのひとつなのかもしれない。もしそうなのだとしたら、と考える始の頭をとんと誰かの手が叩いた。ふと視線を後ろへ向ければ息を軽く吐いている水月がいて。「顔が怖いぞ」「水月さん」「こんな目に遭えば仕方ないとは思...風の斬撃5話
2016/06/12 21:14